「披露宴に着ていくスーツ、どうしようかな……」と悩んだ経験はありませんか。普段使いのビジネススーツを結婚披露宴にそのまま着ていくことは微妙ですし、とはいえ、黒い略礼服に白いネクタイというオーソドックスな着こなしも、年配の方でしか見かけません。当然ながら、本格的なタキシードにいきなり挑戦することも難しいでしょう。
THE SUIT COMPANY、SUIT SELECT、P.S.FA、オリヒカ、ONLYなど、20~40代に馴染みのあるツープライススーツ量販ブランドに常設されるフォーマルコーナー。ここでは本格的なタキシードのみならず、「ビジネススーツ以上、タキシード未満」といったドレススーツを扱っています。
各社とも呼び名はそれぞれ違いますが、パーティーシーンに合うスーツ全般を、わたしはドレススーツと呼んでいます。
のべ4,000人を超えるビジネスマンにファッションアドバイスしてきた服のコンサルタントが、「結婚披露宴にふさわしいスーツ着こなし」についてお伝えします。
スーツを生かした披露宴コーディネート
普段使いのビジネススーツを披露宴にそのまま着ていく男性はいないでしょうが、コーディネートを変え、参加する方は多いかもしれません。ネクタイをいつもより華やかにしポケットチーフやラペルピンを挿すことで、ハレの日を祝う雰囲気になることでしょう。ただし、着こなしを応用できるスーツ自体がそもそも限られます。
黒いビジネススーツを略礼服代わりに着ていくこともNGです。そもそも略礼服とビジネススーツは、糸の染色が違うからです。略礼服の方がより黒く見えるのはそのためです。
つまり、普段使いのビジネススーツを披露宴仕様に変えること自体が実は難しいということ。スーツ・タキシードの世界では型が重要だからです。
この型を知らずしてコーディネートしたとき、残念な印象に陥るのです。だからこそ、ドレススーツを軸にコーディネートすることをお勧めしています。
ハレの日に合うドレススーツの秘密
タキシードのディテールを一般的なスーツに落とし込んでいるドレススーツ。包み(くるみ)ボタンと呼ばれる布でくるんだボタンや、ショールカラーと呼ばれる丸い襟型など、ハレの日の象徴であるディテールが一般的なスーツに内蔵されています。だからこそ、披露宴の雰囲気に合うのです。
しかも、タキシードに比べ堅すぎません。ドレススーツの色は必ずしも黒ではなく、藍染めしたジーンズのように見えるスーツもあります。一見すると普通のスーツに見えますが、よく見るとタキシードのディテールなのです。当然、着こなしのハードルも下がります。
加えて重要なことは、ドレススーツに合わせる小物です。一体、どんなアイテムが合うのでしょうか?
靴と靴下のマナー
靴・ネクタイ・シャツ、すべてが変わります。もちろん、いつもの黒い革靴を合わせることも可能ですが、タキシード同様、ドレススーツにはエナメルシューズがいちばん合います。
艶があるエナメルシューズはドレスアイテムの象徴だからです。このとき、下着扱いされる靴下が悪目立ちしないよう注意! 黒い革靴に黒い無地の靴下を合わせましょう。
シャツと蝶ネクタイ
次に、胸元です。見慣れないからこそ抵抗があるでしょうが、蝶ネクタイがよく合います。テレビ番組で芸能人がドレススーツに蝶ネクタイを締めているイメージです。このとき、シャツはウイングカラーと呼ばれる蝶ネクタイ専用に変えます。
また、フォーマルだからこそ白シャツが基本ですが、昨今、ギンガムチェック柄やブルーなど色・柄がついたウイングカラーシャツもSUIT SELECTで見かけます。フォーマルを象徴するディテールがあるからこそ、色・柄で崩しても違和感がありません。むしろ、おしゃれという評価を受けます。
蝶ネクタイ自体も、黒いシルクではなく、コットン生地やウール生地など、カジュアルなデザインが増えています。他にも、スカーフのような印象に見えるアスコットタイや指輪のようなリングで生地をまとめるリングネクタイなど、選択肢は豊富です。
とはいえ、これらのアイテムは頻繁に着るわけではないからこそ、ドレススーツや付帯する小物をわざわざ買い足すことに抵抗ある方もいらっしゃることでしょう。
披露宴に参加できるビジネススーツを新調する
披露宴・オフィス、場を問わず着られるスーツを新調するならば、ベストが付いたスリーピーススーツを選びます。実際、ドレススーツを扱うフォーマルコーナーでは、ベストのバリエーションが豊富です。また、共生地のベストのみならず、柄や質感を変えたアクセントになるベストが数多く売られています。いつものビジネススーツも、ベストが加わることでエレガントに見えます。
だからこそ、一般的なネクタイのみならず、蝶ネクタイ・アスコットタイ・リングタイなどネクタイの種類も問いません。重要なことはネクタイの種類によって、シャツの襟型を変えること。このルールだけ守りましょう。
披露宴で一目置かれる男の小物
00年代以降、ハウスウエディングからレストランウエディングまで披露宴の幅も広がりました。もはや、黒い略礼服に白いネクタイを合わせておけばとりあえずOK、という時代でもありません。カジュアルな会場では略礼服は印象が重いからです。
ドレススーツやスリーピースのビジネススーツを軸として、クロークに預けるバッグとは別にミニクラッチバッグを持ち歩くことをお勧めしています。披露宴でポケットが付いていないドレスを着る女性の多くはクロークに預けるバッグとは別にミニクラッチバッグを持ち歩いています。
最近では男性用のミニクラッチバッグもよく見かけます。唯一気をつけるべきは白いアイテムは避けること。主役である新郎の色だからです。
披露宴のスタイルは様々です。ネクタイからバッグまでいろいろ選択肢はあることをご理解いただけたのではないでしょうか?
フォーマルウエアを象徴するデザイン・小物を一般的なスーツスタイルに落とし込むこと。これが結婚披露宴のいちばん簡単なスーツスタイルです。ツープライススーツ量販ブランドで3~4万円台で手に入ります。知識を持ってお店にいけばリーズナブルに用意できることでしょう。
著者プロフィール: 森井良行(もりい・よしゆき)
エレガントカジュアル 代表取締役
20代後半から40代の男性のファッションを「エレガントカジュアル」でワンランクアップさせる「服のコンサルタント」。 街のセレクトショップを歩き、顧客に試着を繰り返してもらいながら、その人に最も似合う服を探していく独自の「買い物同行」は9割以上の高い満足度を誇る。著書『毎朝、迷わない! ユニクロ&ツープライススーツの上手な使い方』 (WAVE出版)