「CS」と「CRM」は、商品・サービスの売り上げを伸ばしていくために欠かせない概念です。それぞれの言葉の意味を紹介していきましょう。
「期待」と「実績」の差から生まれるCS
CSとは【Customer Satisfaction】の略で、日本語では「顧客満足度」などと訳されています。ものを買ったり、サービスを利用したりすると、人は満足を覚え、あるいは不満を感じます。何気なく入ったお店でとびきり美味しいランチが堪能できたときは嬉しく、通販で買った服が安っぽいとがっかりするでしょう。
まったく同じサービスであっても、人によって満足度は変化します。コーヒーを提供しているカフェでも、その味を気に入って何度も通う人もいれば、いつも混んでいてゆっくりお喋りができないから他の店を選ぶ人もいます。美味しいコーヒーが飲みたい、あるいは友人との時間を楽しみたいといったさまざまな「期待」に対して、「実績」がどうだったか。この差によって満足度は変化するのです。
顧客満足度の歴史
こうした顧客の心理に着目して、高い満足度を提供できるような商品・サービスを提供していこうという考えが、1980年代のアメリカで生まれました。顧客の顔が直接見えるサービス業が隆盛したことがその背景にあります。具体的には、消費者に対してアンケートをとり、そのデータを元にCSを算出します。その点数を指標として、実サービスやカスタマーサポートの改善具合を見ていくのです。
口コミで大ヒット、もしくはリピーターが続々と生まれるような商品・サービスは、高いCSを備えているといえます。低いCS、つまり腹が立つほど不満に思われるようなものは(それが代替可能ならば)二度と買ってもらえないでしょう。
現在では、サービス業だけでなく、製造業や農業、金融業、公共サービスにまで、幅広くCSの概念が導入されています。
【例文】
「CS向上のために、接客の研修を受けようと思う」
「今の時代は『従業員満足なくしてCSなし』だ」
全員を「お得意様」にするCRM
CRMとは【Customer Relationship Management】の略で、「顧客関係管理」とか、「顧客情報管理」などと呼ばれます。顧客に関する情報を記録し、活用していくマネジメント手法のことを指します。
老舗の料亭や百貨店には「お得意様」がいます。店側はその顧客の趣味嗜好や、事情などを把握して、時節に合わせた商品を提案し、提供します。こうしたやり方は、当然、店側にとっては負担が大きく、すべての来店者に同じ対応をすることは困難でした。
ところが、近年ではITの発展によって 顧客一人ひとりに細かい対応をすることが可能になってきたのです。例えば、広告宣伝する場合を考えてみましょう。独身男性に七五三の着物の割引メールをいくら送っても効果は薄いですし、70代夫婦に新築戸建てのチラシを送っても読んでもらえる可能性はあんまりありません。
しかし、「顧客の属性」「過去の購入履歴」「問い合わせ履歴」「Webアクセスの履歴」「店頭での行動」などを把握し、適切なメッセージを送ることによって、より効果的なマーケティングが可能となるのです。つまり、顧客に合わせた商品・サービスが提案できるということです。
CRMには、営業案件の進捗管理、コールセンターのナレッジ共有、広告キャンペーンの実行、行動分析などさまざまなITシステムが存在します。担当者の記憶や紙の記録を超えて顧客データを活用したいのであれば、こうしたシステムを使いこなしていく必要があるでしょう。
【例文】
「マーケティング担当になったから、CRMの年間計画を立てないと」
「いい加減CRMをExcelで管理するのはやめたい」