労務行政研究所はこのほど、「賃上げ等に関するアンケート調査」の結果を明らかにした。同調査は2018年12月3日~2019年1月16日、労働側と経営側、労働経済分野の専門家の計8,851人(※)を対象に実施したもの。

  • 実際の賃上げ見通し(額・率)

    実際の賃上げ見通し(額・率)

19年の賃上げ見通しを、東証1部・2部上場クラスの主要企業を目安に世間相場の観点から答えてもらったところ、全回答者の平均で賃上げ額は6,820円、賃上げ率は2.15%だった。賃上げ率は6年連続で2%台に乗るとの予測になっている。

労使別では、労働側で賃上げ額は6,779円、賃上げ率は2.14%、経営側で賃上げ額は6,701円、賃上げ率は2.11%だった。労使の見通しの差は78円、0.03ポイントとなった。

  • 実際の賃上げ見通しに見る労使の差の推移(労働側-経営側)

    実際の賃上げ見通しに見る労使の差の推移(労働側-経営側)

賃上げ率の分布は、労使とも「2.0~2.1%」が最も多い(労働側39.5%、経営側43.7%)。同調査では前提として定昇率を「1.8%程度」と提示している。同研究所では「定期昇給制度がない企業もあるため一様には言えないが、定昇にいくらかのベアが上積みされるとの見方が多い」と分析している。

続いて、賃上げ額・率の世間一般的な見通しに加え、自社における賃金制度上の定期昇給(定昇。賃金カーブ維持分を含む)および業績などに応じたベースアップ(ベア。賃金改善分を含む)の実施について尋ねた。

19年の定昇については、労働側で85.2%が「実施すべき」、経営側で83.3%が「実施する予定」と回答した。経営側の「実施しない予定」は2.4%にとどまっている。定昇については、労使とも大半が実施の意向を示していることがわかった。

  • 2019年における定昇・ベアの実施について)

    2019年における定昇・ベアの実施について)

ベアに関しては、経営側では「実施する予定」38.1%、「実施しない予定」37.3%となった。一方、労働側では「実施すべき」が75.8%と4分の3以上を占めた。ベアに対する労使の見解には、大きな違いがあることがわかった。

経営側に、自社における18年のベアの実績を尋ねたところ、「実施した」は57.9%、「実施しなかった」は35.7%だった。昨年、18年は経営側のベアを「実施する予定」としたのは33.6%であったが、実際にはこれを大きく上回る企業がベアを実施したことがわかった。

  • ベア実施意向の推移

    ベア実施意向の推移

今回の集計対象における18年実績と19年予定を比較すると、両年とも「実施」が32.5%で最も多く、両年とも「実施しない」が27.0%だった。

  • 自社におけるベアの2018年実績と2019年の予定(経営側)

    自社におけるベアの2018年実績と2019年の予定(経営側)

次に、時間外労働の上限規制について、経営側には調査回答時点における対応状況を、労働側には自社における働き方改革への効果見通しについて聞いた。

経営側に、調査回答時点における対応状況を尋ねたところ、「現行制度ですでに対応できている」が56.8%、「対応策はまだ決まっていない」は18.4%だった。労働側に自社における働き方改革に対する効果見通しを聞くと、7割超が「どちらかといえば効果がある」「大いに効果がある」と答えた。

※労働側は、東証1部および2部上場企業の労働組合委員長など。経営側は全国証券市場の上場企業と、上場企業に匹敵する非上場企業の人事・労務担当部長。労働経済分野の専門家は、主要報道機関の論説委員・解説委員、大学教授、労働経済関係の専門家、コンサルタントなど。