最近、消費税値上げやオリンピック開催時期と住まいの取得に関する話題が多くなりました。金額が大きいだけに住まいの取得を考えている方にとって、とても気になる話題だと思います。それらの社会変化をどのようにとらえたらよいのかを考えてみましょう。

  • 住宅購入とオリンピックの関係をどう考える?

オリンピック前後で何が変わるのか?

最初に言っておきましょう! 将来のことはたとえそれが数年先のことでも断定的なことは誰も言えないということです。経済のエキスパートと言える方が先々を正確に見通せるのであれば、リーマンショックなどは起こらないでしょう。簡単に見通せるのであれば、多くの方が警告を発し、少なからず対策がとれたでしょう。対策をとっても避けられる保証はなかったでしょうが、少なくとも警戒感は広まるはずです。

オリンピックの要因だけでなく、ここ数年に不動産価格や住宅ローンに影響を与える要因はどのようなものがあるでしょうか。それをどのようにとらえればよいのでしょうか。いくつかの変化を取り上げて考えてみましょう。

オリンピック前は、着工件数が多く資材や人手が不足する?

オリンピックに向けて、様々な建設・土木工事が行われるのは事実です。しかし主として都心部のインフラ整備などですが、それが全国的に見て、また住宅建設分野に対して大きな影響があるのでしょうか。確かに建築分野はすそ野分野が広く、それぞれが複雑に関連していますので、影響がないとは言い切れません。しかし影響が大きいとも言い切れません。なんとなく、そういう雰囲気にもっていきたい業界の意向の方が大きいように私はみています。

消費税の増税

消費税増税は確かに影響が大きいです。4,000万円の物件のうち、2,000万円が建物分とすると2%相当分は40万円です。但し、その分住まいの給付金は増えますので、負担はもう少し減るでしょう。しかし、すでに購入したい物件があるのであれば別ですが、その分を惜しんで無理して購入すべきかどうかはよく考える必要があります。

住宅ローンの金利上昇?

住まいを取得する側から考えると金利は低ければ低いほどありがたいものです。しかし、世界的に見て経済が安定するための住宅ローンの最適金利は6%程度のようです。経済が安定しない負の側面は、周りまわって住宅ローンの借り入れリスクを大きくしないとも限りません。経済が安定し、給与も安定し、安心して働き続けられ、安心して返済していけることが大切なのです。

今までにない低金利がこのまま続くとは考えられません。また、経済全体にも決して好ましくないでしょう。何何らかの理由による所得の減少と住宅ローンの金利上昇が、住まいの取得者に最も影響が大きいものとなるでしょう。長期の固定金利であれば、少なくとも金利上昇のリスクはなくなります。むしろ経済が上向けば収入アップも期待できます。

投資物件の一斉売却

都心の高層マンションなどは発売と同時にその中の何室もが賃貸情報として掲載されることが珍しくありません。タワーマンションの上層階が税制上有利であったことも投資目的の購入と関連しているでしょう。不動産売却益に対する譲渡税は5年所有を境に税率が変わりますので、5年を過ぎると一斉に売却される可能性があります。そうすれば不動産価格が下がる可能性もあります。

しかし、タワーマンションは構造体が相当のスペースを取り、よほど面積の広い住戸でない限り、きわめて居住性の低い間取りが少なからずあります。仕事中心の独身者やディンクスなどの特別な需要を除いて、バブリーな不良物件化する可能性もあると思っています。都心でも空き家が多くなり、不動産も淘汰の時代です。

その対象が投資物件にならない保証はありません。不良物件の価格は下がるのは当たり前の話ですので、社会全体から見れば、投資物件の放出が大きな影響があるかどうかは疑問です。

生産緑地の規制解除

1991年に改正され翌年施行された生産緑地法による税制面の優遇と引き換えに課せられる30年の営農義務が2022年に解除されます。まとまった土地が大量に宅地として提供される可能性があります。但しどの程度の影響になるのか、多くの住宅が建てやすくなるのか、建築ラッシュになり価格が高騰するのかも分かりません。いずれにしろ、今後ある程度不良物件は次第に淘汰される方向にはあるでしょう。優良物件を見極める力が大切です。

避けなければならない唯一のこと

「そこそこ安定した企業に勤めていて、堅実に家計を運営し、貯金も多いと言えないまでもそれなりにある」というごく一般的なサラリーマン家庭が、住まいの取得に際して気を付けなくてはならないことは、ただ一つ、何らかの理由による収入の減少と金利の上昇です。

人生や住まいの取得には様々なリスクが存在します。病気・ケガ・稼ぎ手の死亡・失業などなど様々です。多額の投資となる住まいの取得に際しては、それらの起きるかもしれないリスクをより一層しっかりと検証し、対策を立てておくことは重要です。

しかし、それらは住まいの取得がなくても考えなければならない事柄であり、それらの対策を住まいの取得に照らし合わせて、再確認するだけのことです。むしろ住宅ローンを借り入れれば、団体信用生命保険に加入することになりますので、それまで加入していた生命保険を見直すことも可能です。

では、何に最も注意しなければならないのでしょう。それは景気が良い時、価格が高い時にそれが続くと考えて、自分たちの収入に照らし合わせて目いっぱいの住宅ローンを組むことです。景気が低迷すれば収入も少なくなります。破たんの多くは、何らかの理由で収入が少なくなり、ローンの返済に困るケースなのです。

キャパシティ一杯に借り入れしていれば、少しの収入減少が致命的になります。まして、失職してしまえば、相当のダメージです。

大切なことは、自分たちのタイミング

オリンピック前後の不動産市場の無視は禁物ですが、そうした事象に翻弄されるよりも重要なことは、自分たちのベストのタイミングが何時なのかということなのです。それと頭金を拠出し、住宅ローンを借り入れる際に、自分たちはどの程度のリスクまでカバー可能かを判断しておくことです。

長期固定金利がお勧めですが、どうしても変動金利にしたいのであれば、どの程度まで金利が上昇しても大丈夫かを判断しておきましょう。債務者が病気になって収入が無くなったら、何か月まで持ちこたえられるか、代わりの収入源はどうするかなども重要です。所定の高度障害や死亡のケースは団体信用生命保険の保険金支払いの対象となりますが、そのいずれでもない長期療養のケースは治療費もかかり深刻な状態に陥りやすくなります。

結局オリンピック前が良いか、後が良いかは二次的なことであり、自分たちのタイミングがなによりも優先されます。今から徹底節約すれば、消費税上昇後に住まいを取得しても増税分を跳ね返すだけの貯金も可能ではないかと思います。ただし、時期を遅らせるとその分家賃は消費されていきますので、全力で節約して、全力でよい物件を見つける努力をすれば、おのずと住宅取得のタイミングも見えてくると思います。

不確実な社会の経済状態よりも、経済変化への対応力も含めて自分たちのタイミングを見つけることが大切です。

■著者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

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