――今回の映画は、平成仮面ライダーを内側と外側から観るような"メタ"演出だったり、現在と過去を行き来して平成仮面ライダーの歴史を変えようとするスーパータイムジャッカー・ティードが現れたりと、かなり複雑な物語が大きな特徴ですが、下山健人さんによる脚本はどのように固まっていったのでしょうか。

ホン(脚本)作りはけっこう苦戦しましたね。やはり平成が終わるということと、平成仮面ライダーが20作を迎えたということ、それらを踏まえて、いつも以上に何か大きな意味を持つ作品にしたいというのが、スタッフみんなの思いだったんです。ただ仮面ライダーがたくさん出てきて、悪の軍団にワーッと立ち向かって……というものとはちょっと違うテイストで「平成仮面ライダーよ、ありがとう」みたいな感じのものができないかということを念頭に、お話を作り上げていきました。

白倉(伸一郎/プロデューサー)さんが「平成ライダーって言い方が、そもそもメタだよね」と言われたのが始まりなのですが、仮面ライダーのいる世界がわれわれテレビを観ている側からすればフィクション、虚構の世界なんだという、特殊な世界構造のストーリーになりました。時間の移動に加えて「現実→虚構」への世界の移動があり、脚本を読んだだけでは少し複雑な話ではあったので、演出する側としては観ている方々が混乱せず観られるように、気を配って撮影していきました。

理解できずに話が進んでしまうと、映画の魅力が半減してしまいますからね。ソウゴたちがいまどのような状態の中にいるのか、世界観としてこのシーンはどういう状況なのかなど、なるべく丁寧に描かなければ、という思いで取り組んでいました。

――『仮面ライダー龍騎』(2002年)より助監督として現場に入られている山口監督だけに、歴代平成仮面ライダーそれぞれに強い思いがあるのではないでしょうか。そんな中で、特に愛着があったシリーズを挙げるならば、どれになりますか。

確かに、助監督として、監督として毎年やってきていますから、各作品でその都度印象深い出来事、楽しい思い出がたくさんあります。そんな中で、特にというならば『仮面ライダー電王』(2007年)はいろいろな意味で印象に残っています。あのころ僕はセカンド助監督で入って、最後のほうでチーフをやらせてもらったという時期。モモタロスをはじめとするイマジンが毎回面白おかしい芝居をして、あれが本当に楽しかった。それでいて、楽しいだけの作品ではなく、ストーリーがちゃんとしていて、しっかりと見せる内容だったでしょう。毎回、新しい脚本が来るのが楽しみでしたから。

――今回の映画でも『仮面ライダー電王』でテーマとされていた「人々の"記憶"が時間を作る」という要素が用いられ、仮面ライダーを愛する人々の思いに応えるかのように歴代平成ライダーたちが次々に登場を果たすシーンが感動的に描かれていましたね。アナザーデンライナーやアナザー電王、新イマジンのフータロスなど、『電王』がらみのキャラクターが出てくるのも印象的でした。そして何より、サプライズゲストとして野上良太郎役の佐藤健さんが出演されたのには、ほんとうに驚かされました。

偶然ではあるのですが、今回『電王』がフィーチャーされているというのは自分にとってうれしいことでした。モモタロスの関(俊彦)さんをはじめとするイマジン声優のみなさんとは、助監督時代のつきあいでしたから、今回僕が監督をやりますと話したら「おめでとう!」と言ってくださって、ほんとうにうれしかったです。

(佐藤)健くんとは『電王』をやっている当時に、僕が監督をする時には出演してくれるという約束をしていたんです。もう10年近くも前の約束でしたが、健くんはその約束をまだ覚えてくれていました。とてもうれしかったですし、お互いのその約束が果たせて本当に良かったです。

この映画をやることで、自分としても今まで一緒に歩んできた「平成仮面ライダー」に恩返しがしたい、ありがとうの気持ちを返したい、という思いでやらせていただきました。