国内テレビ界における実写スーパーヒーローの元祖『月光仮面』(1958年)が、今年(2018年)放送60周年を迎えるのを記念して、いくつかの新プロジェクトが始動。2018年11月30日~12月2日に開催されたポップカルチャーの祭典『TOKYO COMIC CON(東京コミコン)2018』のステージ上で発表会が行われた。
『月光仮面』とはなにか
『連続テレビ映画 月光仮面』(原作:川内康範)は、1958(昭和33)年2月24日から1959(昭和34)年7月5日まで、TBS系で放送された。当時のテレビドラマはスタジオ収録の生ドラマやVTRによるドラマが主流だったが、『月光仮面』は劇場映画と同じくフィルム撮影によるテレビドラマ、すなわち「テレビ映画」と呼ばれる作品の先がけとなった。広告代理店の「宣弘社」が製作を手がけた連続ドラマの第1号でもあり、国産テレビヒーローの元祖とも呼べる作品である。
月よりの使者、正義の味方と名乗る月光仮面は、ターバン、覆面、マント、タイツと全身を白でコーディネートし、サングラスをかけて素顔を完全に隠した"謎の人"。数々の犯罪組織に立ち向かう私立探偵・祝十郎(演:大瀬康一)が彼の正体ではないか?とささやかれることもあるが、劇中では明確に正体を明らかにはしていない。月光仮面は悪党のために人々が危機に陥ったとき、どこからともなく現れて、愛用の二丁拳銃を駆使して悪党たちを蹴散らしていく。「鞍馬天狗」に代表される時代劇のヒーローが馬に乗ってさっそうと駆けつけるように、オートバイに乗ってやってくる月光仮面は当時の子どもたちに強いインパクトを与え、たちまち高視聴率を稼ぐ人気番組となった。
本作では第1部「どくろ仮面篇」、第2部「パラダイ王国の秘宝篇」、第3部「マンモス・コング篇」、第4部「幽霊党の逆襲篇」、第5部「その復讐に手を出すな篇」と、全5部の連続ストーリーが製作された。第3部「マンモス・コング」では、国産テレビ史上初となる巨大怪獣マンモス・コングが登場。劇場用の怪獣映画と違って極めて低予算ながら、巨大なマンモス・コングと人間とが同一画面に収まるカットをさまざまな技術によって表現していた。その創意工夫に満ちた特撮シーンは、60年を経た現在の視点で観ても十分迫力が感じられ、むしろ現在の特撮作品にない大胆な撮影方法に強いインパクトを受ける。
国民的スーパーヒーローとなった『月光仮面』は、本放送後もたびたび再放送で子どもたちを楽しませていたが、やがてテレビ界に「カラー化」の波が押し寄せて来た1960年代後半には、白黒フィルム作品の『月光仮面』はすでに「昔のもの」という印象が強くなってしまった。しかし、放送終了(1959年)からおよそ10年後となる1970年に、かつて『月光仮面』を観て育ち、高校生~大学生に成長したファンたちが中心となって自主上映会が行われたり、ラジオの深夜放送で主題歌「月光仮面は誰でしょう」(作詞:川内康範、作曲:小川寛興)がひんぱんにリクエストされたりという、一種の「懐古ブーム」が巻き起こった。
これを受ける形で、1972年にはナック・萬年社によるアニメ版『正義を愛する者 月光仮面』が日本テレビ系にて放映されている。このアニメ版では主題歌「月光仮面は誰でしょう」と副主題歌「月光仮面の歌」が、三沢郷によるポップス調のメロディーへと大胆にアレンジされたほか、アニメならではといえる超人的アクションなど多くの魅力を備える作品となった。
また、70年代終盤ごろよりふたたび「懐かしのヒーロー」ブームが到来。鉄腕アトム、鉄人28号などのアニメヒーローと共に『月光仮面』にも注目が集まり、タケダ(武田薬品)の清涼飲料「プラッシー」のCMに月光仮面が登場。さらにはプルミエ・インターナショナルとヘラルド・エンタープライズが製作、川内康範氏が監修、脚本、音楽を手がけた劇場版『月光仮面』(監督:澤田幸弘)が1981年3月に公開された。カーデザイナー・由良拓也がデザインした特製のバイク「ムーンライト号」に乗り、頭にはターバンでなくヘルメットを被った新生月光仮面のシンプルな出で立ちが大きな話題を集めた。
1999年10月には、『月光仮面』をモチーフにしたギャグアニメ作品『ごぞんじ!月光仮面くん』(製作:トムス・エンタテインメント)がテレビ東京系で放送された。第1話では、宣弘社版『月光仮面』のオープニング映像を使用し、両者が直接のつながりを持つことを示唆している。
このように、国産実写スーパーヒーローの先駆者である『月光仮面』は、時代の移り変わりと共に形をさまざまに変えつつ、何度もこの世に蘇ってきた。そして放送開始から60年というメモリアルな年・2018年、『月光仮面』の送り手である宣弘社が今までにないプロジェクトを立ち上げた。
舞台『月光仮面(仮題)』2019年夏、登場!
東京コミコン11月30日のステージでまず初めに発表されたのは、『月光仮面』60周年を記念した青森名物「ねぶた」であった。青森県は『月光仮面』原作者の川内康範氏が晩年を過ごした縁深い場所。ねぶた師の立田龍宝氏が製作を行い、8月2日に開幕された青森ねぶた祭りで初披露された。東京コミコンのブースに置かれた横幅3.6m、奥行き2.5m、高さ2.4mという巨大さのねぶたの内部より照明が点灯されると迫力満点で、月光仮面と宿敵・サタンの爪の躍動感に満ちたポーズも決まっている。
ステージに立った立田氏は「月光仮面は、悪い奴を正義のヒーローがやっつける"勧善懲悪"の物語なので、ねぶたの題材としてはピッタリでした。ただ、白を基調としたヒーローで"色味"がないのをどうしようかと考えて、黒を吹き付けて陰影を出すなど工夫して、イメージどおりに仕上がったんじゃないかと思っています。キャラクター作品は非常に奥が深いので、これからもいろいろな題材にチャレンジしていきたい」と、日本の伝統工芸であるねぶたとスーパーヒーローとのコラボの出来栄えに手ごたえを感じていると同時に、今後もさまざまなねぶたの表現に挑んでいきたいと意欲を燃やした。
続いて発表されたのは、2019年夏に公演が予定されている舞台版『月光仮面』のニュースである。実力派演劇集団『GEKIIKE』の本公演10回目と『月光仮面』60周年を記念して、まったく新しい世界観で『月光仮面』が舞台化される。これまでの「GEKIIKE」公演はすべてオリジナル作品であったが、今回の『月光仮面』は初の原作付き作品となる。演出を手がける樋口夢祈はこれに至る経緯について「『月光仮面』60周年ということで、舞台化のプロジェクトを進めていた担当さんがいろいろな劇団を探した結果、我々の第9回公演『漆黒ノ戰花』を観てくださったんです。そこで『月光仮面』を舞台化するならここしかないとオファーをいただき、我々も後世に残るような作品を作りたいと思ってお引き受けしました」と、『月光仮面』舞台化の経緯を語った。
現段階では、まだ舞台『月光仮面』についての詳細な情報は明かされていないが、「GEKIIKE」の鷲尾修斗が月光仮面を、そして『戦国BASARA』『刀剣乱舞』などの舞台に出演した伊坂達也が、舞台オリジナルの新キャラクターである「新月仮面」を演じることが発表された。樋口によれば「大正時代、月光仮面と新月仮面という2人の青年を中心になって繰り広げられる物語」ということで、これまで作られてきた『月光仮面』とは大幅にイメージの異なる、まったく新しい『月光仮面』像が見られるのではないかと期待されている。
月光仮面を演じる鷲尾は「昔の月光仮面のイメージを受け継ぎながら、自分たちなりの新しい月光仮面を精一杯演じていきたい」と、古典的スーパーヒーローを現代によみがえらせる意気込みをさわやかに語った。
月光仮面の「白」に対し、「黒」のイメージを持つという新月仮面を演じる伊坂は、かつて『幻星神ジャスティライザー』(2004年)で主人公のライザーグレン/伊達翔太を演じて以来の(変身)ヒーロー役となる。伊坂は「新月仮面とは、月光仮面と違う形の"正義"を持っている魅力的なキャラクター。鷲尾くんの月光仮面が正統派とすれば、僕の演じる新月仮面はまさに“ダークヒーロー”です!」と、月光仮面のライバル的存在になるであろう新月仮面を魅力的な人物像にしようと意欲を燃やしていた。