一人暮らしなどで初めて賃貸契約を結ぶときは、聞きなれない言葉がたくさんあり、混乱してしまうことがあるかもしれません。しかし、同じ金額を支払うのであれば、何のために支払う費用なのか、納得したうえで支払いたいと考える方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、管理費についてご紹介します。

管理費は何に使われる?

管理費とは、賃貸物件の設備や共有部分の管理のために使われる費用のことです。賃貸契約を結んで部屋を借りたとしても、入居者が利用するのは自分の部屋だけではありません。自分の部屋に行くまでには、駐車場や駐輪場、建物のエントランス、オートロック、エレベーターなどがあったりする物件があります。そのような施設全体の共有部分を管理するために必要な費用が、入居者が毎月支払う管理費になり、毎日の快適な住環境を維持するために、必要な費用ということです。

では、具体的に管理費はどのような使われ方をしているのでしょうか。その一般的な例を一部、見てみましょう。

エントランスや廊下などに設置されている電気器具代

「夜帰ってきたら、エントランスも廊下も真っ暗で部屋までたどり着けない」ということはないでしょう。なぜなら、入居者が困らないよう、エントランスから部屋まで、しっかりと電気が灯っているからです。実は、そのような部分に使われている電灯を購入する費用や電気代も管理費に含まれていることが多いです。

共有部の清掃費

マンションなどの廊下やエントランスは、風によって落ち葉やゴミが飛ばされてきたり、あるいは入居者の不注意で何かを落としてしまったりして、汚れてしまうことがあります。そのようなときには、誰かが掃除する必要があります。ご存知の方も多いと思いますが、大家さん自身や委託を受けた清掃会社などが定期的に掃除をして、快適な住環境を維持してくれているのです。

エレベーターの維持費

物件によってはエレベーターが設置されていますが、これを動かすための電気代も管理費に含まれるでしょう。また、エレベーターは安全に利用するために定期的な点検が必要ですが、その点検費も管理費から支払われています。

マンション内のゴミ捨て場の管理費

マンション内にゴミ捨て場が併設されている物件もありますが、その清掃費や維持費も管理費に含まれています。清掃費の他には、ゴミ捨て場のフェンスやネット、鍵など必要な備品が壊れてしまった場合なども、管理費から修繕費が支払われることになります。

浄化槽の維持費

浄化槽とは、生活を送る中で排出される汚れた水を捨てる際に、きれいにする装置のことです。下水道が整備されている地域ではあまり聞いたことがないかもしれません。この浄化槽が設置されている物件であれば、清掃費と点検費が必要になります。

敷地内の花壇などの手入れ費

物件の敷地内に花壇などが設置されている場合には、それらの手入れをするための費用が必要になります。大家さんが手入れをしている場合もあるでしょうし、大掛かりな花壇・庭の場合は職人さんや業者の手入れが必要にもなり、発生する人件費や材料費などに充てられます。

オートロック・監視カメラの維持費

オートロック付きの物件に住んでいる場合は、その管理費、点検費、維持費、電気代にも管理費が使われます。同様に、監視カメラが設置されている物件なら、それらの維持や監視作業に必要な費用も管理費から支払われます。

ケーブルテレビやインターネット回線の使用料

入居時に「ケーブルテレビやインターネット回線が利用できます」というような説明があれば、それらの費用は管理費から支払われる場合があります。物件によって異なる可能性がありますので、不安に思われる方は管理会社や大家さんに確認をしてみるとよいでしょう。

管理費と共益費の違い

契約の際、書面に「管理費」ではなく「共益費」と書かれていたという方もいらっしゃるかもしれません。管理費とどう違うものなのか気になりますよね。先に結論を書くと、それらに明確な区別はないようです。というのは、家主や不動産会社によって、定義がまちまちであるのが現状だからです。したがって、大きくは「建物の管理維持のために使われる費用である」と考えておけば、入居者にとって問題ないでしょう。それでも区別を知りたいという場合は、多少専門的なものになりますが、以下のように区別することができます。

管理費

賃貸物件の管理のために必要な費用。物件のオーナーが不動産会社に管理を依頼している場合は、その手数料は管理費から支払われます。また、給湯器のリース代、インターフォンや電灯の修理費など、それぞれの部屋の設備を維持するために必要な費用、というニュアンスが強くなります。

共益費

一方で共益費は、物件全体の設備、外観の修繕のための費用として考えられていることが多いようです。外壁の塗装が剥げてしまったときの塗装費や、台風で屋根が破損したときの修繕費などがそれに当たります。さらに、オートロックなど共有して使用している設備の管理維持に必要な費用も、共益費とされる傾向があります。

「管理費と共益費の違い」のまとめ

厳密に違いを区別しようとすればできないこともありませんが、基本的には「その物件で快適な生活を送るために必要な費用を、入居者みんなで負担している」という認識で大きな問題はないでしょう。また、管理費と共益費を別々に、両方とも支払わなければならないということはまずありません。物件によって呼び方に違いはありますが、その使われ方はほぼ変わらないことが多いでしょう。

管理費のない物件

物件によっては、管理費も共益費も徴収されない場合もあります。こういった場合の多くは、それらの費用があらかじめ家賃に含まれているようです。家賃も管理費(あるいは共益費)も毎月徴収するのですから、大家さんや管理会社にとっても、まとまっているほうが便利かもしれません。しかし、厳密に見ると、家賃と管理費が分けられているのにはいくつかの意味があります。

敷金・礼金について

例えば、「家賃5万円、管理費0円」という物件と、「家賃4.5万円、管理費5,000円」という物件があるとします。これらは、部屋を借りた人にとっては毎月支払う金額は同じく5万円です。やはり管理費と家賃が別でも一緒になっていても、特に違いはないように感じるかもしれません。しかし、敷金や礼金は家賃を基準にして金額が決められていることが多いといわれます。「家賃〇か月分」とう書き方ですね。つまり、管理費が別にされていると家賃は安くなり、敷金や礼金が安くなるのです。入居者さんへのメリットとして、管理費を別にして初期費用を抑えてくれている、という見方もできるでしょう。

検索で見つけやすい

これは大家さんや管理会社の都合なのですが、家賃と管理費が分かれていると、検索サイトで家賃の低価格の条件にヒットしやすくなる、というメリットがあります。部屋を探している人は、検索の条件として家賃の目安を設定すると思います。その際、管理費が別になっている物件であれば、一緒になっている物件に比べ、管理費の金額分だけ家賃が安くなっているため、検索にヒットする可能性が高くなるのです。このような理由もあって、管理費を家賃と別にしている物件もあるようです。

オーナーにとって、費用管理がしやすい

家賃と管理費を別に徴収する理由としては、単純に物件のオーナーにとって、そのほうが費用の管理をしやすいということもあるようです。家賃と一緒になっていれば、管理費に割り当てる金額を自分で分けなければなりませんが、初めから別々に徴収しておくと、そのまま貯蓄しておくことができるというわけです。

管理費は、快適な住環境維持のために必要な費用

このように、管理費は自分たちの住環境をよくするため、よい状態を維持するために必要な費用になります。何に使われているかを知ると、今まで何気なく通っていた明るいエントランス、きれいに保たれている廊下、きちんと作動しているエレベーターなどに、「管理費がちゃんと使われているな」と、嬉しい気持ちになるかもしれませんね。



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