キミが一歩踏み出すのに必要なのは「強い気持ち」なんかじゃない。「情報」だ――。

絵本やビジネス書を書いたり、国内最大級の有料会員制コミュニティ「西野亮廣エンタメ研究所」を運営したりと、話題に事欠かないキングコング・西野亮廣氏。冒頭のメッセージは、11月16日に発売された同氏の新著『新世界』に記されたものだ。

同著では、「なかなか一歩を踏み出しきれずにいる人」に向けた、“今知るべきお金と信用”を理解するためのノウハウが記されている。今回は、同著で西野氏が伝えたかった、もしくは伝えきれなかったメッセージの数々を聞いてきた。

西野亮廣氏。当日は「7000冊の本にサインを入れる」という気が遠くなるような作業の中、取材に応じていただきました

「挑戦する人たち」を後押したい

――『新世界』はどういった人たちに読んでもらいたいと思い、執筆されたのでしょう?

西野亮廣氏3冊目のビジネス書『新世界』。11月16日に発売し、20日時点で3刷13万5000部!

西野亮廣氏(以下、西野):自分みたいな、挑戦して、下手をすれば「村八分」に遭っているような人に届けばいいな、と思って書きましたね。

そういった方々の気持ちは、痛いほどよくわかるので(笑)。今回に限らず、僕の本はそういった人に向けて書いたものが多いです。

――では、あまり読者の年齢層は限定していないのですね

西野:そうですね。広い年齢層に受け入れられるようになっていると思います。例えば20歳前半の人を考えると、彼らって「上からも横からも潰されてしまう」じゃないですか。

若くて挑戦しようとしている人たちが、上の人たちから潰されてしまったら面白くない。そういった人たちが潰されてしまわないように、「ここさえ押さえていれば突破できるよ」という方法論を学べるような本にしました。

オンラインサロンに入るメリットって?

――著書でも触れられている西野さんのオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」に入ると、どのようなメリットがあるのでしょう?

西野:基本的には、僕が毎日サロンに記事をあげてるので、それを読んで欲しいですね。「読み物」として、月額1000円の会費を払う価値のあるものを書いています。

余裕があればサロンのイベントに参加すると、メンバー同士のつながりができるので、それも強みだと思います。そこで仲間を作れば、次に自分がアクションを起こす時に協力者がいる状態になります。それと、例えば初対面の人でも「同じ中学校」だったり、共通の知り合いがいる人って、話が盛り上がるじゃないですか。そういう意味では、僕のオンラインサロンに入っていれば、共通言語が多くなるので、初めましてでも距離を縮めやすいというのも特徴ですね。

今選ぶべき、「自分にポイントが入る会社」って?

――『新世界』では、「社員に利用されない会社は廃れる」という意見が書いてありましたが、西野さんが思う「良い会社」とは、どういう会社なのでしょう?

西野:社員に「ポイントが入る」会社はいいな、と思いますね。反対に、働いても「ポイントが入らない会社」はよくない。例えば、社長のワンマン経営で、お金で社員を釣って「アレしろコレしろ」と指示を出すだけの会社では、会社にはポイントが入るけど、社員にポイントが入らない。

指標の1つとして、「フォロワーが増えるかどうか」が挙げられます。例えば幻冬舎の箕輪(厚介)さんの話が代表的です。箕輪さんは今あれだけ活躍していますが、彼が個人でいろいろな活動をすることにOKを出したのは、会社ですよね。

もし幻冬舎が個人の動きを制限してしまっていたら、箕輪さんは今のような影響力を持てていないかもしれない。さらにいうと、「窮屈だからこんな会社辞めてしまおう」と思っていたかもしれません。

――つまり良い会社とは、「社員の才能を開花させられるような環境」といったイメージでしょうか

西野:そうですね。才能があるなら、その才能を使いたいと思うのは当たり前です。でもせっかく優秀な人が入社したとしても、組織の歯車にしかなれないようだと、そこで得られるものが少ない。そうなると、社員はすぐに辞めてしまうかもしれないし、会社にはそもそも優秀な人が入ってこなくなってしまう。

個人でやりたいことがあったら、積極的にチャンスを与えてくれる会社が良いですよね。

――では、もし西野さんが今、就活生だったとしたら、どの会社に入りたいと思いますか?

西野:フリーランスになるでしょうね。でも、もしどこかに入る、という話だと……DMM.comさんとかですかね。社員にチャンスが与えられる会社ですし、やはり今はそういう面白そうなところに、才能が集まってきている。「あそこに行ったら、自分が主役になって面白いことをできそう」と思われる会社は、これからもっと成長していくでしょうね。

西野亮廣から相方「カジサック」へ

――「一歩踏み出す」と言えば、相方の梶原さんも、芸能界から「YouTube」の世界へと踏み出しました。その挑戦を横で見てて、どう思いますか?

西野:まぁ、「遅いよ」ってのが一番ですね(笑)。とはいえ、その挑戦はめちゃくちゃいいなと思っています。正直彼は、「2019年末までに登録者数が100万を越えなければ、芸人を引退します」と言っていますが、これにはもはや誰も興味ないと思うんですよ。

キングコング・梶原さんは10月1日、「新米YouTuber・カジサック」として本格的に活動を開始しました。(チャンネル登録者数は11月27日時点で約49万人)

西野:僕も、すでに芸人を辞めていますし。でも、芸人を辞めても僕の活動が特に変わっていないことは、世間にバレてしまっています。だから、あれ(梶原さんの宣言)にはなんのフックもないと思うんです。

ただ、そんなことはどうでもよくて。何よりも、自分がやりたいことを自分の意思でやっているので、それが色っぽいですよね。失敗したら自分の責任ですし、もし失敗しても学ぶことがある。そういうことを、彼はこれまでしてなかったから、今回の挑戦は応援しています。

どれだけ「ドヤれるか」が人材確保のカギ

――『新世界』では、西野さんがすでに執筆された『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ』という2冊のビジネス書に続き、「現代の信用とお金」について書かれています。今回は特に「オンラインサロン」についての話が多かったように思いますが、それはなぜでしょうか?

西野:オンラインサロンの仕組みは、現代の働き方を考えるうえで重要な要素だと思ったためです。よく、知り合いの経営者から「給料を多く払っているのに、社員が辞めていく」という悩みを相談されるのですが、これは、オンラインサロンを運営している僕としては、当たり前の話なんですよね。

今、多くの人たちは「お金」よりも「充実感」、さらにいうと「どれだけドヤれるか」ということを重要視しているんです。「これだけ大きなプロジェクトに関わった」とか、「こんなにスゴイものを作った」とか、そういったドヤれる経験に価値を見出しているんです。

特に現代では、「アイツの活動は面白いな」と思ってもらえたら、お金は後からつくれるようになりました。インスタグラムのフォロワーが100万人いたら、そこに仕事が生まれるように。フォロワーを増やすためには、完璧なルックスだったり、完璧な作品だったり、何かしらの発信できることが必要になります。

だからこそ、オンラインサロンの運営者にも、経営者にも、「いかにしてドヤらせてやれるか」という視点が必要だと思います。そこで、経営者にオンラインサロンの知識を入れておいてほしいと思い、その話を書きました。

――では『新世界』は経営者に読んでほしい本でもあるということですね

西野:はい。ただ、それはあくまで目線の1つです。就活生にとっては、「ダメな組織」「いずれダメになる組織」の傾向を知るキッカケにもなると思います。その知識があれば、会社選びを間違えない。

折角行きたい会社に行っても、そこが2、3年後に潰れたら、それまでの努力が無駄になってしまいます。そうならないためにも、今の若い人たちは「お金と人の流れが変わってきている」ことを理解する必要がある。それらを理解するうえで、わかりやすいのがオンラインサロンなんです。

「発信の価値」が徐々に上がってきている

――「お金と人の流れが変わってきている」という話でいうと、西野さんが開催する「サーカス!」というイベントでは、“客だけでなく、制作スタッフもお金を払っている”のだとか。このような流れの変化は、なぜ生まれるのでしょうか?

西野:意味がわからないですよね(笑)。なぜ、制作スタッフがギャラをもらうのではなく、お金を払うのか。ただこれは、現代における「発信することの価値」を考えると、わかることなんです。

以前、「サーカス!」とは別に、僕のオンラインサロンで、音楽のイベントをしました。そのイベントは、お客さんよりもステージの出演者の方が高いお金を払うシステムで行いました。そうすると、イベント後の満足度はどちらが上か。結果は、応援する「客」よりも、応援してもらってスター気分を味わえる「出演者」だったんです。

これは先ほどの「どれだけドヤれるか」という話にもつながりますよね。本でも書いたように、将来は「制作スタッフや出演者が有料で、お客さんが無料」というイベントも開催できると思っています。

弾けた「オンラインサロン」バブル

――確かに、時代の潮流を感じるためにオンラインサロンの仕組みを学ぶことは重要だと思います。これからもオンラインサロンのブームは続くでしょうか?

西野:業界でいうと、オンラインサロンはもう下火のイメージですね。小規模のサロンは増えているようですが、全体を見るとサロンの会員って、徐々に減ってきてるんです。オンラインサロンのバブルはもう、弾けた感じはしますね

だから、もし僕が今大学生だったとしたら、サロンオーナーにはなりません。今からYouTuberを目指す人が、ヒカキンさんを超えられないように、もうオンラインサロンの勝敗はついたと思っています。

――では『新世界』で伝えたかったのは、「オンラインサロンのつくりかた」ではない、ということですね

西野:そうですね。オンラインサロンをこれからつくる、というのは難しいです。ただ、すでにあるサロンに入るのは賛成です。そこで「ここなら勝てるかも」というポジションを見つけて、新たな挑戦をするのはいいと思います。

例えば、芸人の渡辺直美ちゃんっているじゃないですか。彼女は今とても人気ですが、ずっとテレビで戦っていたら、今のようにはなってなかったと思うんです。テレビの枠は、もうすでにほとんど埋まってしまってますから。

彼女は、Instagramのような「自分が戦えるポジション」を見つけられたから、今の人気があるのだろうと思っています。

重要なのは「ストーリーを見やすくすること」

――西野さんは、「ディズニーを倒す」と自身の夢を発信し続けています。しかし、「一歩が踏み出せずにいる人」の中には、なかなか自身の夢や目標を発信できずにいる人も多いことかと思います。SNSの時代で“信用を勝ち取る”ためには、批判覚悟で、夢や目標を発信していった方がいいのでしょうか?

西野:やり方は人それぞれだとは思いますが、大事なのは「自分のストーリーを見やすくすること」。目標を掲げるというのは、その1つの手段にすぎません。

僕のオンラインサロンを例に考えるとわかりやすいかもしれません。サロンって、どのくらい入会者が減るかっていう数字が日割りで出るんですよ。どんな時に増えて、減っているか、というのもわかります。

わかりやすいのが、自分が勝っている時って、伸びないんです。でも、勝とうが負けようが、挑戦して「これどうなるの?」と思われるようなタイミングって、一番伸びるんです。

これって、マンガと一緒ですよね。主人公が強い敵と戦って「勝つか負けるか」というストーリーがあるから「続きを読みたい」と思う。主人公がずっと勝ち続けていたら、面白くないじゃないですか。

つまるところ、人はストーリーに反応しているんです。「これからの物語どうなっていくの?」と思わせられれば、応援してくれる人たちは増えます。

だから、もし何かアクションを起こしたい、と思った場合には「どうすれば自分のストーリーが見やすくなって、キャッチーになるのか」を考えて欲しいですね。その1つが、目標を掲げるということ。たとえ目標を達成できなくても、そこから這い上がるストーリーをどう作っていくかが重要です。

――では最後に、読者にメッセージをお願いします

西野:この本を読んで、どう思うかはお任せします。ただ読んだ後には、感情が高ぶって、何かしらのアクションを起こしたくなると思います。そうなったら、ソロバンをはじくのは一旦止めて、感情に従って行動してほしいですね。

――ありがとうございました

【西野亮廣氏の新刊情報】

『新世界』(KADOKAWA)

著者:西野亮廣
定価:1,500円(本体1,389円+税)
発行部数:3刷13万5000部(11月20日時点)

バカと付き合うな(徳間書店)

著者:西野亮廣、堀江貴文
定価:1,404円(本体1,300円+税)
発売日:10月26日
発行部数:5刷19万部(11月26日時点)

(田中省伍)