第30回フジテレビヤングシナリオ大賞の受賞者が22日、東京・台場のフジテレビ本社で発表され、大賞には東京都在住の中学2年生・鈴木すみれさん(14)の『ココア』が選ばれた。鈴木さんには賞金500万円が贈られる。

  • 第30回フジテレビヤングシナリオ大賞の記者会見に出席した大賞受賞者の鈴木すみれさん(右)と脚本家の坂元裕二

同賞は、脚本家の登竜門として位置づけられており、坂元裕二、野島伸司、尾崎将也、野木亜紀子らを輩出している。今回受賞した鈴木さんは14歳で、史上最年少での受賞となった。この日行われた記者会見に出席した鈴木さんは「最初は信じられませんでしたが、だんだん実感がわいてきました。このような賞をいただき、ありがとうございます」と喜んだ。

受賞作の『ココア』は、学校・家族から疎外された3人の女子高生が、もがき苦しみながらも愛を見つける物語で、異なる空間で生きながらそれぞれの人生の波長が綿密に重なり合う群像劇。学校で苛められて自殺未遂をした灯、父と母それぞれが浮気して両親の不仲に気付きながらも平穏な家族の一員を演じている香、辛かった過去をがあり教室ではいつも一人で孤立している志穂の3人の物語が、クリスマスの夜に交差していく。

審査委員長を務めたフジテレビ第一制作室の荒井俊雄プロデューサーは「『違う人生だけど、みんなどこか同じ』という世界観が魅力的。誰もが味わったことのあるほろ苦い記憶を思い起こさせるとともに、生きていく希望を与えてくれる作品です。どんどん引き込まれるセリフも魅力でした」と選考理由を語った。

小学生の頃から小説を書いていたという鈴木さん。「坂元裕二さんが書かれた『Mother』(2010年 日本テレビ系)を見て衝撃を受けたんです。私も書いてみたいなと思って、勉強し始めました」とドラマのシナリオを書くきっかけを語り、「学校生活で面白いなと思った出来事をメモする癖があって。その書きためたメモを参考に書いています。ストーリーは授業中に考えています。授業中のほうが集中できるんです(笑)」と明かした。受賞作については「ちょっと傷を負っている高校生の方々が見て、『あ、私のことかも』と思ってもらえればいいですね」と話した。

会見の途中、サプライズで第1回の大賞受賞者である坂元裕二が登場。鈴木さんの『ココア』について「率直におもしろいと思いました。才能豊かでうまいです。また、何より感銘を受けたのは『人間を見る力』。人間の温かみ、深み、広さなどを見る力が強い。この力は、今後どんな仕事に就いても役に立つと思います」と評価した。坂元のファンという鈴木さんは感激しつつ、「『問題のあるレストラン』(2015年 フジテレビ系)で高畑充希さんが演じたあいりが好きなんですが、キャラクターはどうやって考えているんですか?」と坂元に質問。坂元は「脚本を書く前に、その人がどういう人なのか、人生の起点から今までどう歩んできたのかをひたすら考えるんです。高畑さんの場合はすでに出演が決まっていたので、高畑さんにはどういう役をお渡ししたら面白いかな、ということを考えました。俳優さんを見ていると自然と答えが出てきますね」と回答した。

なお、佳作には市川貴幸さんの『まるでドーナツみたい』、沖原佳世さんの『笑顔のカタチ』、高瀬秀芳さんの『女優は毛穴まで嘘をつく』がそれぞれ選ばれた。