本来毎月徴収される健康保険や厚生年金の保険料は、おおよそ自身の月収に合わせた徴収額となっています。原則、この保険料は年に一度見直しが入り、そのときの月収に見合った保険料が徴収されることになります。

しかし、産前産後休業または育児休業を終了して復職した後、短時間勤務などに働き方を変えたため、月収が下がるケースがあります。このような場合は、保険料の見直しのタイミングが設けられています。これは「産前産後休業・育児休業等終了時月変」と言います。簡単に言うと、収入が下がったことに合わせて、給与から引かれる保険料も安くできる制度です。

この制度は被保険者自身が任意で申請するものですが、納める保険料が安くなるため、健康保険組合などから傷病手当金などの給付を受け取る際の金額の計算基準となる「標準報酬月額」が低下してしまうというデメリットもあります。

ただし、厚生年金の保険料については特例があり、育児に関わる時短勤務などで納める保険料が安くなった場合でも、将来受け取る年金額の計算は以前の高い保険料を払っていたときの金額を基準として計算されます(3歳に満たない子を養育する被保険者の標準報酬月額の特例)。復職後に給与が下がるようなケースでは、一度会社に相談をしてみるとよいでしょう。

産前産後休業から育児休業が終わり、復職してからも育児は続きますが、出産・育児が不利に働かないよう配慮されている社会保険の仕組みも多くあります。手続き漏れなどがないよう、事前に確認しておきましょう。

※写真と本文は関係ありません

■ 筆者プロフィール: 落合直美

社会保険労務士法人 大槻経営労務管理事務所アウトソーシング事業部所属。
大学卒業後、証券会社に就職し、営業部に配属される。上司や同僚など、働く人の様々な悩みやトラブルを目の当たりにし、労働環境を整えることの大切さを痛感。その後、労働問題を扱う法律事務所に転職し、社会保険労務士を志す。
試験合格後、社会保険労務士法人 大槻経営労務管理事務所に入所。数名から300名規模のクライアントの給与計算と社会保険手続きに従事した後、現職にてさらに多種多様な社会保険手続きの経験を積んでいる。プラスアルファの付加価値を提供できる「会社と労働者の熱血サポーター」となるべく、日々奮闘中。