秋ドラマも後半戦に入った。視聴率という指標で見ると、テレビ朝日系『相棒』『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』が好調だが、視聴者の“満足度”という点ではどうだろうか。この視点から、秋ドラマの盛り上がりを探っていく。

●「テレビ視聴しつ」満足度調査概要
・対象局:NHK Eテレを除く地上波6局(NHK総合、日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ)
・サンプル数:関東1都6県、男性480+女性480=計960
・サンプル年齢構成:「10~19歳」「20~34歳」「35~49歳」「50~79歳」各年代男女120サンプル
・調査方法:朝帯からゴールデン・プライム帯のレギュラー番組について月に1度、満足度と感想を収集するウェブ調査
・採点方法:最高点「5」、最低点「1」の5段階評価
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    『大恋愛』戸田恵梨香(左)とムロツヨシ

大石静氏の直球ラブストーリー

テレビの視聴状況を独自に調査している「テレビ視聴しつ」(eight社)によると、秋ドラマの10月月間満足度調査(10月スタートの朝ドラ~23時台のドラマ)でトップだったのは、戸田恵梨香主演の『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系、毎週金曜22:00~)で4.18(5段階評価)。高満足度となった理由は“テンポの良さ”にある。

自由記述による視聴者の感想をみると「主役2人のキャスティングがいい」(23歳女性)、「ムロツヨシさん…あんなに色気のある俳優さんだったんだと驚き」(48歳女性)など、戸田とムロツヨシという意外なキャスティングに対する高評価はもちろんだが、「すぐに引き込まれてしまった。これは最後まで見たい」(44歳女性)、「一話で急接近しこれから二人の関係が見逃せない」(32歳女性)、「展開が早く、この先どうなるのか興味をもった」(50歳女性)、「急展開とも感じられたが、次々と起こる展開が興味深い」(25歳女性)、「テンポがいい。今後の展開のためかもしれないけれど、それがいい」(21歳女性)など、ドラマの“テンポ”について触れたポジティブなコメントが多かった。主人公が侵された“若年性アルツハイマー”の発端と、婚約者がいながら運命的に出会った男性に魅かれ、お互いの思いを確かめ合うまでを第1話の中で描くという、ハイテンポな展開が高い満足度へ導いたようだ。

このドラマの脚本は、NHK朝ドラ『ふたりっ子』(96年)や、NHK大河ドラマ『功名が辻』(06年)、最近では『家売るオンナ』(16年、日本テレビ系)などを手掛け、ヒット作を多く持つ大石静氏。大石氏は、映画化もされ不倫ドラマ再燃のきっかけを作った『セカンドバージン』(11年、NHK)以降、憧れの叔父を同期の女医と奪い合う泥沼三角関係の『蜜の味~A Taste Of Honey~』(11年、フジテレビ系)、義理の息子との禁断愛を描いた『ガラスの家』(13年、NHK)、夢を追うダンサーと女性高校教師の年の差愛『セカンド・ラブ』(15年、テレ朝系)、夫を殺した男性と許されざる恋に落ちる『コントレール~罪と恋~』(16年、NHK)と、不倫や年齢差だけでなく、叔父、義理の息子、殺人犯などあらゆる “禁断”を用いた激しく濃厚なラブストーリーを描いてきた。今作は“若年性アルツハイマー”という重たいテーマを扱ってはいるが、恋愛の部分は直球なラブストーリーに仕上げており、これまでとは違うシンプルな作りも視聴者の好感度を高めたのだろう。

『下町ロケット』“熱”に男性支持

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『下町ロケット』(左から)竹内涼真、阿部寛、安田顕

満足度第2位は『大恋愛』と同じくTBS系の阿部寛主演『下町ロケット』(毎週日曜21:00~)で4.13。12年の『半沢直樹』から続く池井戸潤原作×TBS日曜劇場チームはやはり裏切らない。高い満足度の理由は作品からあふれる“熱”だ。

「情熱的だった」(29歳男性)、「熱ある演技が好き」(59歳女性)、「熱血してる」(60歳女性)、「情熱に感動」(43歳女性)、「胸が熱くなる」(29歳男性)など、感想では面白いほど“熱”というワードが出てきており、特に男性視聴者からの声が多い。視聴者の割合を見ると、『大恋愛』が女性視聴者69%であるように、ほとんどのドラマが女性で占められているのに対し、『下町ロケット』は男性視聴者51%と女性視聴者を上回っている。ドラマからあふれる “熱”が男性視聴者を多く呼び込んでいるようだ。