1954年の公開から今年(2018年)で64回目の誕生日を迎えた『ゴジラ』を祝う、オールナイト上映&トークイベント『ゴジラ誕生祭2018』が、11月2日夜から3日朝にかけて開催された。

  • 『ゴジラVSスペースゴジラ』で共演した斎藤洋介(左)と橋爪淳(右)

2010年に「銀座シネパトス」(現在は閉館)にて始まった『ゴジラ誕生祭』は、4回目となる2014年より池袋HUMAXシネマズでのオールナイトイベントへと発展し、ゴジラ誕生日の前夜、11月2日より0:00までの「カウントダウン」を行うのが恒例となった。

通算8回目となる今回の『ゴジラ誕生祭』は、11月3日に日比谷ステップ広場・日比谷ゴジラスクエア他で催された「ゴジラ生誕記念 ゴジラ・フェス2018」の前夜祭という側面を持ち、さらに11月9日にアニメ版ゴジラ映画(通称:アニゴジ)の第3作『GODZILLA 星を喰う者』が公開されるというタイミングでもあり、「誕生祭」会場となった池袋HUMAXシネマズには全国各地から集まったゴジラファンが偉大なる怪獣王の生誕を祝い、ゴジラシリーズにゆかりのあるキャスト・スタッフをゲストに迎えて大盛り上がりを見せた。

トークイベント第1部は、ゴジラシリーズ第26作『ゴジラ×メカゴジラ』(2002年)で五十嵐総理を演じた俳優・中尾彬と手塚昌明監督が作品の裏話やゴジラ映画への強い思いなどを語ったが、第2部では、中尾もGフォースの麻生司令官役で出演している『ゴジラVSスペースゴジラ』(1994年)より、G(ゴジラ)対策協議会・進化生物学博士の大久保晋を演じた俳優・斎藤洋介をゲストに迎えてのトークが開催された。斎藤と共に、映画についての思い出を語り合うパートナーとして、本作の主人公であるGフォース隊員・新城功二を演じた俳優・橋爪淳が登場。まったく事前告知のなかったサプライズゲストに大興奮の観客からは、盛大なる拍手が鳴り響いた。

斎藤は、24年前に出演した『ゴジラVSスペースゴジラ』の思い出として「当時、中学生だった息子たちが、父が俳優だと気づいてくれた作品」だと語り、子どもから大人まで幅広い年齢が楽しめるファミリーピクチャーの最高峰として君臨していた90年代・平成ゴジラVSシリーズの知名度を改めて確認できるようなコメントを残した。

少年時代、昭和の東宝怪獣映画を観ていたか?という質問に斎藤は「私が子どものころは、唯一の娯楽が映画でした。ゴジラ、モスラなど、よく観ていましたよ。劇場に行って観る映画というのは、すごく鮮明に頭の中に残っているものなんです。今でも印象に残っている特撮映画は『マタンゴ』です。あれは気持ち悪かったですよね。あの映画を観たおかげで、しばらくキノコが食べられなくなったな(笑)」と、食料のない無人島に漂着した青年たちが、島に生えているキノコを食べて怪物化するという特撮恐怖映画『マタンゴ』(1963年)が強烈な印象を残したことを明かした。

話を『ゴジラVSスペースゴジラ』に移す前に、斎藤が出演した特撮作品についての話題となった。まずは特撮メカアクション作品『ガンヘッド』(1989年)の"ボクサー"役について。斎藤は「この映画が始まる前、出演者一同で銃火器の扱いの訓練を受けたことがあったんです。実質的には3~4日くらい、東宝撮影所に通っていました。実物と同じ重さの小道具を身に着けたりしてね。いざ撮影が始まってみると、銃を撃たない間に死んでしまった(笑)」と、撮影前に受けた訓練の大変さと、意外な報われなさを嘆いた。

また近年の特撮テレビ作品『ウルトラマンギンガS』(2014年/円谷プロ)では、地底の民ビクトリアンを治める女王キサラに仕えている側近・カムシンを演じていたことがあるが、この役について斎藤は「最終回でのことをよく覚えています。地底の民が初めて地上に出てくるシーンなので、太陽がまぶしいんじゃないかと思って、手で顔を覆う芝居をしてみたんです。そうしたら監督から『その芝居はいりません』と言われました。でも、やらなくて後悔するよりは、やって叱られたほうがいいですからね」と、演技のひとつひとつに自分なりの考えを入れ込み、表現方法を常に探るという自身の姿勢を語った。

「『ゴジラVSスペースゴジラ』を、久しぶりにスクリーンで観たくなってやってきました!」と笑顔で挨拶したサプライズゲスト・橋爪淳を迎えて、いよいよトークの話題は『ゴジラVSスペースゴジラ』に移っていく。本作の前半では、ゴジラとリトルゴジラの安住の地であり、宇宙怪獣スペースゴジラの飛来ポイントにもなった南海の無人島「バース島」が主な舞台となったが、このバース島は沖縄県の沖永良部島にてロケーション撮影が行なわれた。

主役である橋爪、および斎藤も真夏の沖永良部島で撮影を経験しているのだが、これについて斎藤は「あまりにも暑くて、昼のお弁当が食べられなかった。ご飯に冷たい麦茶をかけて、むりやり流し込みました」と、過酷な撮影の日々を振り返った。海岸でゴジラに砲弾(テレパシー増幅装置)を打ちこむシーンで、相棒の佐藤清志役・米山善吉と一緒にバイクに乗って決死のアクションに臨んだ橋爪は、「僕はバイクの免許を持っておらず、運転ができないので、バイクシーンはぜんぶ米山さんにお任せしていました」と、自身がずっと米山の運転するバイクの後部に座っていたことについての裏話を明かした。

やがて、結城を演じる柄本明の話題に移り、斎藤は「柄本さんは島に着いた初日に、半袖半ズボンでブラリと宿舎から出ていって、戻ってきたら体じゅう真っ赤に焼けていた」と、画面のつながりをそれほど考えずに肌を焼いた柄本の自由さに感心するようすを見せた。斎藤にとってはとにかく沖永良部島ロケは猛暑に悩まされた記憶がほとんどだったようで、「炎天下の外だけでなく、テントの中までもものすごい暑さでしたからね。でも、最終日に花火をやって遊んだり、ヤギの肉をごちそうになったりもしましたし、プライベートで行けばすごく楽しいところなんでしょうね。仕事で行ったからあまりいい思い出がない」と苦笑していた。

バース島の崖を新城、佐藤の2人が登っている際、結城が佐藤の首にナイフを突き立て、猛毒を持ったクモを殺すシーンがあるが、これについて橋爪は「実は、米山さんはクモが本当に嫌いらしくて、あの場面を撮ったときに気持ち悪くなって吐いていましたね」と、米山の意外な一面をうかがわせる秘話を語った。トークの後、上映される『ゴジラVSスペースゴジラ』について、改めて感想を尋ねられた橋爪は「子どものころからずっとゴジラを観ていて好きでしたから、映画の中で戦っていても少し"心苦しい"ところがありましたね」と、前半ではT(テレパシー)プロジェクトでゴジラに向き合い、後半ではMOGERAパイロットの1人としてゴジラやスペースゴジラと激しい戦闘を行ったことに対して、ゴジラが好きなゆえに戦いにくい思いを抱いていたと心情を明らかにした。

フォトセッションで斎藤は、キャストの新商品である「スペースゴジラ飛行形態」(オーナメント)を手にしてファンの記念撮影に応じた。ゴジラと心を通わせようと努力する超能力者・三枝未希を利用して、ゴジラを意のままに操ろうとした大久保博士は、このスペースゴジラ襲来の影響で研究施設と共に滅び去った。"因縁の相手"と再会を果たした斎藤は「だんだんイヤな記憶がよみがえってきたよ」とつぶやいて客席の爆笑を誘った。

斎藤、橋爪のトーク中、いよいよ11月3日の0:00が近づいてきたこともあり、カウントダウンを行う準備が始まった。ここで、『ゴジラVSキングギドラ』(1991年)で23世紀の未来から来たアンドロイドM11を演じたロバート・スコット・フィールドが勢いよく入場し、そのままテンション高めに観客をノセつつ、0:00ジャストまでのカウントダウンを始めた。その瞬間には、橋爪の演じる新城功二の印象的なかけ声「ファイヤー」を全員で叫び、みんなでゴジラ64回目の誕生日を祝福した。

今回の『ゴジラ誕生祭2018』では、『ゴジラ×メカゴジラ』(2002年)『ゴジラVSスペースゴジラ』(1994年)『ゴジラVSデストロイア』(1995年)のフィルム上映が行なわれた。最終上映の『ゴジラVSデストロイア』に入る直前には、先ほどのロバート・スコット・フィールドがふたたびステージ前に現れ、本イベント恒例となった「アンドロイドと学ぶゴジラシリーズ英会話教室3」というコーナーが行われた。

本コーナーでは、アメリカ・カリフォルニア出身で現在は大阪在住のロバートが、平成ゴジラシリーズ、ミレニアムゴジラシリーズの中から印象的な英語を抜き出し、改めて正確な日本語訳と英語発音をレクチャーし、ゴジラファンに楽しみながら正しいヒヤリングと発音を覚えてもらおうという趣旨のもとに進められた。ゴジラファンならどこかで必ず聞き覚えがある作品中の英語セリフを題材にしている上に、ロバートの勢いのよいコッテコテの大阪弁と激しいボディランゲージもあって、堅苦しさはみじんもなく、終始笑いに包まれた楽しい英会話レッスンのひとときを過ごすことができた。ロバートがアンドロイドM11を演じた『ゴジラVSキングギドラ』での「Here I am」(悪い未来人に操られるアンドロイドを倒す直前にM11が言った『こっちだよ!』というセリフ。ちなみにこのセリフはロバートのアドリブだったという)を客席の全員で復唱しているときの、ロバートの心底嬉しそうな表情が素敵であった。

「ゴジラ」関連作品としては、映画『GODZILLA 星を喰う者』が11月9日より全国劇場にてロードショー公開される。また、レジェンダリー・ピクチャーズ製作の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』はアメリカで2019年5月31日より公開が予定されている。

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