JR西日本の10月定例社長会見にて、約300km/hで通過する新幹線の風圧をトンネル内で体感するという内容が報じられた「体感研修」を見直し、今後、線路外の作業用通路などでの実施に改めると発表された。

  • 山陽新幹線を走るN700系

「危険だ」として批判があった体感研修に関して、「振動や音、風圧などを現地で直接感じることによって、安全意識の向上や自らの職務の重要性を再認識することを目的として実施してきた」と説明。その一方で、「走行する車両を目視することもできる方法に改めたほうが、より効果が上がる」として、線路より低い保守用通路から体感する現在の方式を取りやめるとした。

10月定例社長会見ではその他、今年2月に発表した5カ年の「鉄道安全考動計画2022」にもとづき、自然災害や事故・犯罪などさまざまな非常事態に備えた実践的な訓練を継続して実施していることも発表されている。

福知山線列車事故を教訓に、併発事故の阻止と乗客の救護を取り入れた「列車事故総合復旧訓練」を2005年度から継続して実施しているほか、将来の発生が想定される南海トラフ地震などを踏まえ、各地で地震を想定した避難誘導訓練も実施。和歌山南部のエリアでは2008年度以降、紀勢線における津波対処訓練も実施しているという。

これらに加え、2019年6月に大阪で開かれるG20サミット首脳会議、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに備え、テロへの対処を目的とした訓練も開始。今年6月に東海道新幹線車内で発生した殺傷事件を受け、不審者から乗客と乗務員を守るための訓練も行っているとした。

訓練においては、他の鉄道会社や警察・消防、医療機関など外部との連携を図り、より実践的な内容を想定。社員一人ひとりが異常時・緊急時に冷静に安全を優先して考動することの重要性を理解し、ルールで対応できない状況では安全最優先の柔軟な対応力を発揮できるように、実践的な訓練を繰り返し行うとの姿勢を明確に打ち出した。