JR西日本とJR貨物は29日、伯備線・山陰本線・山口線経由の迂回ルートで運転開始した貨物列車の報道公開を実施した。貨物列車は直流電気機関車EF64形を先頭に米子駅5番線ホームへ入線。機関車の入換作業を行った後、ディーゼル機関車DD51形の牽引で発車した。

  • 伯備線・山陰本線・山口線経由の貨物列車迂回運転がスタート。機関車の入換作業を行う米子駅で報道公開が行われた

伯備線・山陰本線・山口線経由の貨物列車迂回運転は、西日本豪雨(平成30年7月豪雨)の影響で山陽本線の一部区間が不通となり、貨物列車を運行できない状況になっていることから、その代替としてJR貨物がJR西日本へ要請。貨物列車迂回運転に必要なJR貨物「第二種鉄道事業許可」、JR西日本「鉄道線路使用条件設定認可」の申請は国土交通省中国運輸局により許認可され、8月28日の名古屋貨物ターミナル駅を20時37分に発車する下り貨物列車から迂回ルートでの運行が始まった。

この貨物列車は岡山貨物ターミナル駅を3時47分に発車した後、倉敷駅から伯備線に入り、7時33分頃に米子駅5番線ホームへ入線した。貨車6両(コキ104-1748・コキ104-945・コキ104-303・コキ104-2645・コキ104-1773・コキ104-471)と電気機関車EF64形1028号機・ディーゼル機関車DD51形857号機を連結した編成で、EF64形1028号機は「がんばろう岡山」「がんばろう広島」のヘッドマークを掲げ、車体側面にも同様のメッセージを記したラッピングが施されていた。米子駅到着後、EF64形1028号機を切り離す作業が行われ、DD51形857号機の牽引で8時45分頃、米子駅を発車した。

  • 貨物列車は7時33分頃、米子駅5番線ホームに入線。EF64形1028号機にヘッドマークが掲げられ、車体側面にラッピングも施された

なお、山陰本線・山口線経由の貨物列車迂回運転では計3両のDD51形を使用予定としており、名古屋貨物ターミナル駅を8月28~30日に発車する下り貨物列車に1両ずつ連結して輸送するとのことだった。今回の貨物列車は貨車6両だったが、乗務員らが迂回ルートでの運転に慣れてきた頃をめどに、貨車7両での運転を開始する予定との説明もあった。

報道公開ではJR貨物・JR西日本の担当者もインタビューに応じた。JR貨物運輸部副部長の原威史氏は、貨物列車迂回運転の実施にあたり、貨物列車が普段走らないルートを通ることから「ディーゼル機関車の確保や乗務員の教育訓練をはじめ、伯備線も被災したためにあらゆるルートを検証する必要があり、非常に苦労しました」と振り返る。JR西日本運輸部輸送計画課の福田稔氏も、「貨物列車が普段走っていない線区、しかも長距離の運行となるため、乗務員の養成、線路等の状況確認、ダイヤ調整など準備も多岐にわたりました。しかし関係者一丸となり、早期の物流ルート確保という目標をもって取り組んだ結果、今日の運転開始日を迎えられたのではないかと思います」と語った。

  • 米子駅到着後、EF64形1028号機を切り離す作業が行われた。米子駅からDD51形857号機の牽引で山陰本線・山口線の非電化区間を走行する

JR貨物はトラック・船舶による代行輸送も行っているが、貨物列車迂回運転はさらなる輸送力確保を目的としており、「トラック・船舶による代行輸送は12フィートコンテナに限り輸送できている状況でしたが、迂回運転によって20フィート以上の大型コンテナも輸送可能となります」とJR貨物運輸部副部長の入江宏紀氏。インタビューでは今後の増便について質問も出たが、原氏は「今回、機関車の手配に苦労しましたし、(増便する場合は)予備も必要になると思います。山陽本線の復旧見込みと照らし合わせても、便を増やすことへのハードルは高いと考えます」とコメントした。

貨物列車迂回運転は今回の下りに続き、8月31日の福岡貨物ターミナル駅1時55分発の列車から上りも運転開始。幡生操車場を4時34分に発車し、新山口駅から迂回ルートを経由して岡山貨物ターミナル駅22時12分着、名古屋貨物ターミナル駅に翌日7時40分到着を予定している。その後は1日1往復を運転。1編成(貨車6~7両)あたりの5トンコンテナ積載可能個数は30~35個、貨車7両による輸送量は350トン/日とされている。貨物列車迂回運転の終了時期については、「おおむね山陽本線の開通時期までとなりますが、今後の動向もみながら詳細を調整する必要があるだろうと思います」(原氏)とのことだった。

  • 迂回運転初日の貨物列車は貨車6両・機関車2両の編成だった