2018年6月2日16時、計画から約50年の歳月を要した「東京外かく環状道路(以下、外環)」千葉区間がついに開通を迎える。

  • 「東京外かく環状道路」開通を祝い、6月1日には前夜祭を開催。プロジェクションマッピングなどの演出も

東京外かく環状道路とは?

外環は、都心から半径約15kmのエリアを結ぶ延長約85kmの幹線道路の総称であり、首都圏の交通混雑の緩和や都市間の円滑な交通ネットワークを実現するうえで、非常に重要な役割を担っている。

  • 1969年に都市計画がスタートし、事業用地の取得から開通までは実に半世紀を要したとのこと

今回開通するのは、埼玉県・三郷南IC~千葉県・高谷JCTに至る、延長約15.5kmの区間。この地域は南北方向へアクセスする道路が少なく、慢性的な渋滞が発生していた。また、渋滞を避けようとする車が生活道路などに入り込んで事故を増加させるなど、交通環境の悪化も問題視されていたという。

  • 松戸市から東京ディズニーリゾートまでの所要時間は、なんと30分ほどの短縮が算出されているとも

外環は、これらの問題を解消する三郷市・葛飾区・松戸市・市川市の中心的な道路としての役割が期待されている。同区間の開通により、高谷JCT~大泉JCTの所要時間は都心ルートで約18分短縮(約60分→約42分)され、高谷JCT~川口JCTは約26分短縮(約54分→約28分)、高谷JCT~三郷JCTも約26分短縮(約43分→約17分)が見込まれている。

  • 外環道開通により、松戸市・市川市の新しい歴史が始まる

開通前のトンネル内で祝杯!

国土交通省とNEXCO東日本によって進められてきたこの壮大なプロジェクトがひとつの区切りを迎えたことを祝し、6月1日には開通記念前夜祭「東京カンパイ自動車道」が北千葉JCT(仮称)付近の半地下トンネル内にて開催された。

  • 市川商工会議所・会頭の片岡直公氏、松戸商工会議所・会頭の中山政明氏、首都国道事務所・所長の甲斐一洋氏らも登壇

会場には、一般公募約400名+関係者約200名、総勢約600名が集合。普段はめったに立ち入ることができないであろう非常口から地下に潜り、開通前の道路上にセットされた約200mのロングテーブルにて一斉に乾杯が行われた。

この日は、外環の建造に携わった設計者や現場監督、職人、ガードマンなど“つくりてたち”の想いを伝える写真展「俺の外環」も同時開催された。建築とは違い、名前が残らない「土木」の世界。同展は、そんな無記名のインフラ構造物に詰まった情熱や魂を、現場関係者の写真を通して表現するべく実現されたという。

  • 会場に並べられた巨大なパネルには、決して表には出ない土木の現場や、そこに関係する人たちの熱きストーリーが描かれていた

  • ご本人登場に思わず興奮。写真に添えられた「安全に作業が進むなら、恐れられるくらいが丁度いい。それが親分の心意気。」という檄文が胸を打つ

  • メガドライブ用ゲームソフト『大魔界村』のパッケージを手掛けたことでも知られるイラストレーター・開田裕治氏が、イラスト協力として参加しているという点も味わい深い

外環は、JR常磐線、北総鉄道、京成本線、JR総武本線、都営新宿線、東京メトロ東西線と交差しているため、各交差部で安全確実かつ合理的な工法を採用するなど、最先端の技術が随所に散りばめられている。同イベントの参加者たちも、普段何気なく運転している道路の裏側に興味津々な様子であった。

  • 標識にも、メンテナンス時に車線規制が必要とならないよう新システムを採用したという

  • 高谷JCT周辺の模型にキッズも釘付け

  • 開通前の道路に寝そべり、全身でアスファルトをフィールする来場者も多数

  • 道路派が大多数を占める中、一部には壁ラヴァーも

これまでも、道路の開通時には様々なイベントが行われてきたことだろう。しかし、今回の取り組みでは「トンネル体験」や「乾杯」といったアクションを通して、なかなか触れ合うことのない道路の“つくりてたち”と地域住民、道路利用者が対話する機会が設けられるという、新たなムーブメントが生まれていた。

大泉JCTから東名高速へと繋がるという外環の「東京区間」開通も待ち遠しいところだが、まずは千葉区間の開通に向けて尽力してきた累計300万人もの関係者に改めて敬意を表し、フレッシュな道路の走り心地を存分に楽しもう。