現在放送中の、テレビ東京ドラマ『宮本から君へ』(毎週金曜24:52〜)。文房具会社の営業として働く新人・宮本浩が、恋や仕事にぶつかっていく姿を描く。時代は現代に移されているが、1990年代に連載された新井英樹による原作漫画そのままに、主演の池松壮亮が演じる、宮本の熱すぎる姿が話題を呼んでいる。

第1話から第4話までは、宮本が仕事に奮闘する姿とともに、一目惚れした女性・甲田美沙子(華村あすか)にぶつかっていった。そして第5話からは先輩である神保和夫(松山ケンイチ)からの引き継ぎを進めるうちに、ライバル会社の営業職・益戸景(浅香航大)と、クライアントに対して熾烈な提案競争を繰り広げる。第8話では、ついにバリカンを手に坊主頭になってしまう……と、今後も目が離せない同作について、主演の池松にインタビューした。

  • 池松壮亮

    池松壮亮 撮影:宮田浩史

気持ちだけでは作れない役

――『宮本から君へ』は、もともと原作が好きで読んでいたということでしたがどういうところに惹かれたんですか?

人に勧められて読んだんですけど、どういうところに惹かれたんでしょうね……。なんだか、これは自分の話なんじゃないか、と思ったんです。きっと、そういう方が結構いらっしゃると思うんですけど、僕も同じで、「これは自分のためにあるんじゃないか」と思いました。

数年に一回そういう映画や小説、音楽に出会うのですが、『宮本』もそうでした。すごく叱咤激励されたし、これまで自分が信じてきたものを「間違ってなかった」と言ってもらえたような気もしたし、自分ができないことをこの物語が証明してくれるんじゃないかと感じました。

――キャラクターとしては、自分は宮本浩ほどの美しい人ではないとおっしゃってましたが、自分の話なんじゃないかと思われたのは、理想の姿というようなことでしょうか?

理想や、憧れです。宮本はヒーローですし、「自分も本当はこうありたかった」という象徴のような存在ですね。

――そんな作品をドラマ化することに対しては、どのような思いがありましたか?

生半可な気持ちではやれないですし、職業俳優として技術や経験値で塗り固めたりもできないし、外側だけ作って血が通ってくれるような役でもなかったので、本当に自分自身が試されてるような気分でした。

――演じてみたいとは、思われていたんですか?

とてもじゃないけど思えなくて。ただ、誰かがやるんだったら絶対自分がやりたいと思っていました。

一目惚れはしないタイプ

――話の軸もだんだん変わっていく作品ですが、その変化はどのように演じられたのでしょうか。

実は、宮本自身はあまり変わっていなくて、毎回負けて立ち上がるということって、を繰り返しているだけなんです。いわゆる”成長物語"にしてしまうと、ダメだなとは思っていました。最初から何かを証明しようと吠え続けていて、今の時代でいうとあまりにも乱暴なやり方で、持っているものは心と愛嬌と誠実さだけ。毎回戦って、案の定負けて、でももう一回立ち上がってまた負けて、自分が実際に出会ってきた人物も役柄も含めて、誰よりも勇気がある人だなと思いながら演じていました。

――前半だとヒロインの華村あすかさんが池松さんたちに対して「自然な演技がすごい」とお話されていたんですが、華村さんとのやりとりで印象的なことなどあれば教えてください。

去年スカウトされて山形から出てこられきたばかりでお芝居経験もなかったですし、身一つで誰よりも一生懸命な姿に、自分自身も奮い立たせられました。あれだけまっすぐに見つめられたり、まっすぐ言葉を吐いている姿を見ると、宮本としても自分としてもハッとするものがあって、本当に感謝しています。

――ちなみに、劇中の宮本のように、池松さんも一目惚れをしたりは……。

僕はないです(笑)。割と、時間をかけて好きになっていく方ですね。