――これから中高年に差し掛かる身としては、近い将来に発症してしまったときの対処法を知っておきたいです。検査や治療法はどのように行われるのでしょうか。

骨の変形やずれなどはX線像でも確認できますが、椎間板や靭帯について正確なことはX線像では確認できません。そのため、MRIを撮影し、靭帯や椎間板の状態と脊柱管内の脊髄の狭窄があるかどうかを確認します。また、脊柱管内に造影剤を注入し、さまざまな角度から撮影する脊柱管造影検査も行う場合があります。

治療方法は「神経を回復させるための薬剤の内服や点滴」「日常生活での症状を軽減するための生活指導」「コルセットなどの装具」「リハビリテーション」などが選択肢として挙げられます。

疼痛が強かったり排尿障害をきたしたりするなど、日常生活に支障が出るような場合は手術を行います。狭くなっている脊柱管を広げ、圧迫されている神経を除圧することが手術の目的です。

脊柱管を広げるには、骨の一部を削り、黄色靭帯を可及的に取り除いて脊柱管を広げる方法と、椎弓に切れ目を入れて環状になっている部分自体を広げる方法があります。広げた状態を維持するために骨移植をするケースもあります。また、腰椎すべり症などの脊椎の不安定性のある場合では、固定する手術も必要になってきます。

――病気の予防に「遅すぎる」ということはないと思うので、脊柱管狭窄症にならないようにするための予防策を教えていただけますでしょうか。

腰への負担が脊柱管狭窄症を増悪させる要因ではありますが、実際のところは、長年の小さな腰への負担の積み重ねが関与してきます。また、腰への負担だけが原因というわけではなく、生まれ持っての骨の形状や体質も影響してきます。

そのため、何か特別な予防策はありませんが、腰に負担のかかるようなことは続けないのが賢明ですね。それと、体重が多いほど日常生活における腰への負担は大きくなるので、体重を適正に保ったり、腰椎を支える周囲の筋肉を鍛えて骨や椎間板にかかる負担を減らしたりするのも、効果的ではないでしょうか。

※写真と本文は関係ありません

取材協力: 長谷川充子(ハセガワ・ミチコ)

整形外科専門医。日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医。日本整形外科学会認定スポーツ医
大学病院の整形外科、総合病院の整形外科医長を経て、現在は整形外科クリニックに勤務し、整形外科の診療をしている。 En女医会所属。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。