怒涛の展開を経て、舞台を奄美大島へと移したNHK大河ドラマ『西郷どん』(毎週日曜 NHK総合20:00~20:45 BSプレミアム18:00~18:45)の第18話。悲しみと怒りで生ける屍と化した西郷吉之助(鈴木亮平)に追い打ちをかけたのは、同志で盟友でもあった橋本左内(風間俊介)の非業の死だった。

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    『西郷どん』第18話の場面写真

幕府に追い詰められた西郷が、月照(尾上菊之助)と共に冬の錦江湾に身投げするという衝撃的な展開を迎えた第17話。3日3晩生死の境をさまよった西郷は、奇跡的に命を取りとめるも、「自分だけが生き残ってしまった」という残酷な運命を受け入れられずにいた。 大老・井伊直弼(佐野史郎)による安政の大獄で、26歳という若さで斬首された左内。西郷は藩命により「菊池源吾」という名で奄美大島へ島流しにされていたため、左内の死は手紙で知らされ、慟哭する。

橋本左内とは、大坂の適塾で緒方洪庵から蘭方医学を学んだ福井藩士。頭脳明晰で、後に藩主・松平慶永(春嶽)の側近となった。左内は小柄で華奢な男で、西郷の第一印象も「婦人のようなひ弱な男」だったが、“山椒は小粒でもぴりりと辛い”を地でいく左内の有能さを西郷はすぐに見抜いた。その後2人は、一橋慶喜(松田翔太)将軍擁立を目指す同志として、熱い絆で結ばれていく。

風間俊介といえば、生田斗真と同世代で、一時期は同じ4人のユニットFour Tops(風間、生田、山下智久、長谷川純)に所属していたこともある。彼が俳優として頭角を現したのは、『3年B組金八先生』第5シリーズの兼末健次郎役で、少年の心の歪みや闇を見事に体現した彼を見て「この人は今後、とんでもない俳優になりそう」と思った視聴者も多かったはず。

その後も緩急ある役どころで順風満帆にキャリアを積み、NHK朝の連続テレビ小説『純と愛』ではタイトルロールを演じたが、意外にも大河ドラマ出演は本作が初となった。生田ともども、カラーは違えど、ジャニーズの演技派俳優として、どの作品でもきっちり“圧倒的な存在感”というクサビを打ち込んできた風間。

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もちろん、今回もしかりで、左内が斬首される時に見せた、最上級の怒りと悲しみ、諦めが相まった表情は、見る者の心をかき乱した。志半ばで命を断ち切られる左内の無念さは、西郷自身にも伝わったに違いない。左内から「あとを頼みます」と未来を託された西郷は、ようやく生き地獄から抜け出し、生へとベクトルを移そうとする。

余談だが、大きな図体の西郷と、小柄な左内のバディぶりは、まさに『モンスターズ・インク』のサリーとマイクのような微笑ましい凸凹感があり、視聴者にも好評を博していた。また、松田翔太演じる“ヒー様”こと一橋慶喜(のちの徳川慶喜)を交えた3ショットの和気あいあいとしたやりとりを、もう見られないのかと思うと実に寂しい。

とはいえ、今回から、待望のニューヒロインとして、島の娘・とぅま(二階堂ふみ)が登場。沖縄の那覇市出身の二階堂だけに、島んちゅ(島人)役は絶妙なキャスティング。とぅまは、悲しみに打ちひしがれた西郷を死の淵から引きずり上げる重要な役どころだ。

鈴木亮平いわく「二階堂ふみさん演じるとぅまの勇ましさと愛情深さがとっても魅力的で、吉之助ととぅまの関係が急激に変化していきます」とのことで、今後、2人がどんなふうに愛を紡いでいくのか、大いに期待が高まる!

■著者プロフィール
山崎伸子
フリーライター、時々編集者、毎日呑兵衛。エリア情報誌、映画雑誌、映画サイトの編集者を経てフリーに。映画やドラマのインタビューやコラムを中心に執筆。好きな映画と座右の銘は『ライフ・イズ・ビューティフル』、好きな俳優はブラッド・ピット。好きな監督は、クリストファー・ノーラン、ウディ・アレン、岩井俊二、宮崎駿、黒沢清、中村義洋。ドラマは朝ドラと大河をマスト視聴。

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