小此木さん:お答えしましょう。
あードキドキする! せっかくなんで、緊張しながら待ってる姿を。
小此木さん:セーフです。
えっ!? セーフなんですか!? 本当に!?
小此木さん:(いや、そんなに驚かれても)意外でしたか?
てっきり絶対にアウトだと思ってやってきたので、まさかあっさりセーフ判定が出るとは思っていませんでした……。「アウト」って言われてから、「なんでですか!?」って食い下がりつつ理由を明らかにしていく記事になる予定だったので……ゴニョゴニョ。
小此木さん:世の中でそういった風潮があるのは存じ上げています。しかし、我々東日本おしぼり協同組合としての見解は、おしぼりで顔をふいてもマナー的にまったく問題ないです。
やったー! これで堂々と顔がふける! 何しろおしぼり協同組合のお墨付きですからね。これから何か言われたらこの記事を見せることにします。
それでは公式OKを貰った顔ふき。
でも、なんでセーフなんですか? 逆に何をしたらアウトなんでしょう?
おしぼりの歴史とは
小此木さん:おしぼりでやってはいけないことはいろいろあるのですが、せっかくなので、そもそもおしぼりとは何かということをご説明しましょう。
お願いします!
小此木さん:おしぼりの歴史は非常に古くて、ルーツは古事記などが書かれた時代まで遡ると言われています。普及し始めたのは江戸時代のこと。旅籠(宿屋)が旅人のために水を張った桶と手ぬぐいを用意し、旅人がその手ぬぐいを水に浸してしぼり、汚れた手足をぬぐったのが語源となります。
なるほど、手ぬぐいをしぼったから「おしぼり」なんですね!
小此木さん:その後、戦時中の混乱でおしぼりの習慣が消えかけますが、戦後の復興と共に飲食店が増えたことで再び普及し始めました。当時は飲食店が自家製でおしぼりを用意していたのですが、洗って干して……と大変ですよね。そこで出てきたのが私たちのようなおしぼりレンタル事業者です。
あっ、飲食店のおしぼりってレンタルなんですね!
小此木さん:そうなんですよ。使い捨ての紙製おしぼりなどは別ですが、しっかりしたタオル地のおしぼりはほとんどがレンタルです。ですから、飲食店はお客様が使ったおしぼりを返却しているんですね。返却されたおしぼりは、私たちのような事業者が厚生労働省が設定した厳格な衛生基準をクリアした、特別な設備で洗浄して、再び飲食店様に再利用いただいています。
そうだったんですね。
小此木さん:このことを踏まえると、おしぼりでやってはいけないことがわかると思います。
おしぼりでやってはNGなこととは
ふむふむ……じゃあ例えば……。
食事をこぼしてしまったときに、こうやっておしぼりでテーブルをふくのは……?
小此木さん:アウトです。
えー! ダメなんだ!
小此木さん:ソースやしょうゆなどの汚れは非常に落ちにくいので、おしぼりでふいてしまうと返却した後に洗浄してももう使えなくなる可能性があるんです。まぁ無意識に使われる方が多いので仕方ない面もあるのですが……
そっか、なるほど! おしぼり自体の再利用が難しくなってしまうからダメなんですね。だから顔をふくのはいいんだ。
小此木さん:そうですね、食事の前に手や顔をふいていただいてもおしぼりはそれほど汚れませんし、おしぼりのルーツが宿屋から旅人へのサービスだったことを考えると、手以外をふいていただいてもまったく問題ないのです。
よくわかりました! でも近所にある行きつけの定食屋だと、お客さんが帰った後に店員さんが使用済みのおしぼりでガシガシとテーブルをふいているんですけど……。
小此木さん:そういったおしぼりのレンタル事情をご存知ないのかもしれません。本当はあまり良くないのですが……私たちの情報発信がまだまだ足りていないということですね。
あくまで謙虚な理事長。しかしあの店は店員さんの意識が問題ではないだろうか……。
ちなみにおしぼりにも高級品とかあるんですか?
小此木さん:ありますよ。おしぼりのランクは匁(もんめ)という重さの規格で決まっていて、重いほど高級です。高級なレストランやホテルなどで出てくるおしぼりはすごく分厚くてしっかりしたものが多いでしょう。ああいったおしぼりは高級品ですね。
ああ、たしかにお店によって違いますね! そっか、高級感の演出としてもおしぼりが使われているんですね。
小此木さん:ちなみに一番の高級おしぼりは今治タオルを使ったおしぼりです。
たしかに高そう! だけどふかふかして気持ちよさそう……!
他にやってはいけないことはありますか?
小此木さん:ビンやコップなどのガラス破片をふいたり、鍋や油汚れをふいたりするのもよくないですね。それから調理で魚や肉をおさえるのもNGです。理由は先ほどと同じですね。
落ちにくい汚れ、ですね。
小此木さん:それから、そもそもの話なのですが、捨てるのはダメですね。
そりゃそうだ! 借り物だし!
小此木さん:おしぼりは日本ならではの文化で、そのままOSHIBORIとして海外でも注目されつつあります。皆さんもぜひおしぼりに親しんでいただきたいですね。
小此木さん、本日はいろいろとお話を聞かせていただきありがとうございました! これからおしぼりでガンガン顔をふいていきたいと思います! あと写真も遊んでごめんなさい。