Netflixオリジナルアニメとして、『A.I.C.O. Incarnation』と『B: The Beginning』が独占配信されている。2つの作品は、日本を代表するアニメプロダクションであるProduction I.Gとボンズが手がけた作品。先日、Netflixと包括的業務提携を結んだことでも注目を集めた2社だが、そこにはアニメを取り巻く環境にどんな変化があるのか。Production I.G代表取締役社長・石川光久氏と、ボンズ代表の南雅彦氏に訊いた。

  • 左から南雅彦氏、石川光久氏

全世界で配信ビジネスを展開するNetflixとの提携について、石川氏は「今日本でアニメ製作のメインになっているのは製作委員会方式。これはDVDを買ってくれるお客さんを対象にしたビジネスで、そのためにオリジナル作品は深夜帯のテレビ放送などで認知してもらうという方法でした。でも、これから先もDVDなどのビデオグラムを中心にビジネスをやっていけるのかということに、製作委員会自体も疑問をもっているのではないかと思う」とコメント。

南氏も、「ここ10年くらいで映像ビジネスがどんどん変化しています。実は5年ほど前に、(年間の新作アニメの)本数が減るんじゃないかという話があったんです。でもそのタイミングで中国の資本が入ってきたことで、作品数は減ることはありませんでした。ですが、中国の資本による製作は 作品に対して条件や契約の問題が出てきたので、やはりまた減るんじゃないか見られていたんですね」と、表面的には見えづらかったアニメ業界のここ数年の大きな変化について言及。

業界としても、将来的なビジネスの展望について混乱していたと見る南氏は、「今回の提携は、Production I.Gさんやボンズといったオリジナル作品を軸にしたプロダクションが、安定して、しかも新しいものにチャレンジできる環境を探していたところでの提携でもあると思う」と語る。「これが広がっていくことで、いろんな会社がチャレンジしていき、見たことがないような作品が生まれるきっかけになれば。日本の中でしかビジネスを考えられなかったところの壁を壊すきっかけが見えてくるんじゃないかと思っています」と、その意義について触れた。

全世界への配信作品であることから、これまで以上に海外の視聴者に届くことになる。石川氏は海外の視聴者の印象について「一本の作品をすごく長く見てもらえるといいますか、寿命が(日本に比べて)長いですよね。作り込んだもののクリエイティブに対してすごく見る目が肥えている」と語る。

一方の南氏は、「(サンライズ時代に手がけた)『カウボーイ ビバップ』で初めて海外のイベントに行ったのですが、すごく海外のお客さんが喜んでくれました。イベント後に囲まれて『よかったよ!』と声をかけていただいてうれしかった」と思い出を語った。そして「『カウボーイ ビバップ』も、海外を意識したわけではなく、『国内の視聴者に向けて、新しくておもしろいものを!』という思いで作ったものなんです。それが今でもどんどん広がっている。その延長線上ではないですが、その広がりの先で、我々の作ったものを見てもらっているという感じがすごくあります」と振り返った。

さらに南氏は海外で長く日本の作品が愛されている一例として、「去年かな。アメリカから、10年以上前の『WOLF'S RAIN 』という作品をブルーレイにアップコン(アップコンバート)したいのでチェックしてほしいと連絡がきたんです。そんな前の作品に対して、アップコンするというお金のかかる作業をする……ということは、その作品をきれいな映像で見たいというファンがいらっしゃるということ。それはすごく幸せな気分になりました」と語っていた。

『B: The Beginning』(Netflixにて全世界独占配信中)

映画『キル・ビル』でアニメパート監督を務めた中澤一登が原作、監督、キャラクターデザイン、総作画監督を務め、「攻殻機動隊」シリーズや「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズなどのProduction I.Gと夢のタッグを組んだノンストップクライムアクション。群島国家「クレモナ」を舞台に、王立警察特殊犯罪捜査課(通称「RIS」)の伝説の捜査官:キース・フリック(CV:平田広明)が、犯行現場に必ず「B」の文字を刻み込む連続殺人犯【Killer B】を追う様を、海外ドラマさながらの壮大なスケールで描く。

『A.I.C.O. Incarnation』(Netflixにて全世界独占配信中)

『翠星のガルガンティア』『鋼の錬金術師嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』の村田和也監督×『交響詩篇エウレカセブン』、『僕のヒーローアカデミア』のボンズ制作のタッグで贈るオリジナル バイオSFアクション。人工生体の研究中に起きた大事故"バースト"により、最先端のバイオ・テクノロジーを扱っていた黒部峡谷一帯の研究都市は、人工生命体"マター"に侵蝕された。それから2年後。バーストで家族を失った女子高生・橘アイコ(CV:白石晴香)は、転校生・神崎雄哉(CV:小林裕介)から自分の肉体に隠された真実を告げられる。そして彼女は、護衛部隊の"ダイバー"たちとともに、バーストの中心地"プライマリーポイント"を目指す。

(C)Kazuto Nakazawa / Production I.G
(C)BONES/Project A.I.C.O.