赤ちゃんを望む夫婦にとって、出産はうれしい出来事です。しかし、生活費や育児のための経済的な負担が増えるため、産休の取得により給料がもらえなくなることを不安に思う女性も少なくないでしょう。
そこで、この記事では、産休を取得した女性がもらえる出産手当金について、条件や金額、申請方法などを詳しくご紹介していきます。
産休とは
産休とは、「産前・産後休業」のことです。労働基準法で定められているため、出産するすべての女性労働者が利用できます。
産前休業は、本人が希望することで産前6週間(多胎妊娠は14週間)から仕事を休むことができます。一方、産後休業は女性の身体の回復が目的なため、産後8週間の休業が義務となっています(ただし、本人が希望すれば、産後6週間以後は就業できることがあります)。
産休の手当として支給される「出産手当金」とは
出産手当金とは、産休を取得したことで給料がもらえないときに、健康保険から支給される給付金です。出産予定日前6週間(多胎妊娠は14週前)と、出産予定日から実際の出産日までの日数、および出産日の翌日から8週間について、休業前の平均給料の約3分の2に相当する金額が受け取れます。
産休の手当をもらうための条件は?
出産手当金の支給条件には、それまでの勤続期間は定められていません。勤務先の健康保険に自分で加入している人であれば、正社員のほか、契約社員やパート、アルバイトでも手当を受け取ることができます。
出産手当金の支給条件
・出産のために休業した健康保険の加入者
・妊娠4カ月(85日)以上で出産する女性
・事業主から給料が支払われない、または支払われる給料が少ない場合
私はいくらもらえる? 産休の手当の計算方法
出産手当金の支給額は、休業1日につき平均給料(日額)の約3分の2に相当する金額となっています。 総額は「支給日数×1日当たりの支給金額」を計算することで分かります。
ただし、出産日やそのときの平均給料など、出産する女性の状況によって支給日数や支給金額は変わってきます。自分の場合はいくらもらえるのか、下記を参考に計算してみましょう。
産休の手当が支給される日数は?
支給日数は、出産予定日ではなく出産した日を基準に計算します。ですから、正確な支給日数は出産後に分かります。
下記図の通り、出産予定日に出産した場合は、産前6週間(42日)と産後8週間(56日)の合計98日間出産手当金がもらえます。
それに対して、出産予定日よりも早く生まれた場合、手当をもらえる日は前倒しされます。産休の直前まで出勤していると、出産手当金の支給日数は、予定日より早く生まれた日数分短くなります。
そして、出産予定日よりも後に出産した場合には、出産予定日から実際に出産した日までの期間も支給対象となるため、支給日数が長くなります。
産休の手当の1日当たりの支給金額は?
出産手当金の金額は、支給開始日(最初に出産手当金が支給される日)以前の給料の金額によって決まります。
支給開始日以前に今の健康保険に所属して12カ月以上働いていた場合は、1日当たりの支給金額は【直近12カ月間の各月の標準報酬月額を平均した金額】÷30(日)×2/3の計算式で算出できます。
「標準報酬月額」とは、給料の月額を区切りのよい幅で区分したもので、臨時に受け取る見舞金や、年3回以下の賞与は金額に含まれていません。
つまり、例えば標準報酬月額を平均した金額が28万円の方で、支給日数が98日だった場合は、出産手当金金の総額が約61万円となります。
1日当たりの支給金額: 28万円÷30日×2/3=6,220円
出産手当金の総額: 6,220円×98(日)=60万9,560円
一方、今の健康保険に所属して働いている期間が休業前に12カ月未満である場合は、支給開始日が属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均金額、または、健康保険の全加入者の標準報酬月額を平均した金額のいずれか低い方の数字を使って計算されます。
産休中に有給休暇を使用しても、手当はもらえる?
産休期間中に有給休暇を使用する場合や、事業主から給料が支払われる場合には、出産手当金はもらえないのが一般的です。ただし、支払われる給料が出産手当金の金額よりも少ない場合には、出産手当金と給料との差額を受け取ることができます。
出産手当金は給料の約3分の2の金額なので、有給休暇を使用して給料を満額受け取ったほうが、手に入る金額は多くなる可能性が高いでしょう。ただ、産後に職場復帰した際に有給休暇があると心強いものです。有給休暇の有効期限(2年)にも注意しつつ、使用するかどうかを検討してみましょう。
産休中に仕事を辞めても、手当はもらえる?
産休中に退職した場合でも、引き続き出産手当金を受け取ることができる可能性があります。産休後も出産手当金を受け取るためには、下記の条件を2つとも満たしている必要があります。
(1)退職日までに健康保険の加入期間が継続して1年以上ある
(2)退職日に出産手当金の支給を受けている、もしくは、受ける条件を満たしている
※出産前42日目(多胎妊娠の場合は98日目)に健康保険に加入していて、かつ、退職日は出勤していないことが必要
出産を機に退職する場合には、会社とよく相談して退職日や最終出勤日を決め、出産手当金を受け取れるようにできると良いですね。
会社との連携がポイント! 産休の手当の申請方法
出産手当金を受け取るためには「出産手当金支給申請書」に必要事項を記入して、所属している健康保険に提出する必要があります。申請書には、分娩を担当した医師や助産師が記入する欄と、給料を支払っている事業主が記入する欄もあります。
出産手当金は、複数回に分けて申請することも可能ですが、申請する度に事業主や医師などの証明が必要となるため、産後56日が経ってから一度にまとめて申請する方が多いようです。
申請書をスムーズに提出できるよう、産休に入る前に会社とよく相談し、申請するタイミングや申請書の具体的な提出方法などを決めておくと良いでしょう。
産休の手当はいつ振り込まれるの?
出産手当金は、申請した書類に不備がなければ、申請後、2週間から2カ月ほどで指定した銀行口座に振り込まれるのが一般的です。
ただし下記の図のように、出産手当金は産後休暇が終わった段階で一度にまとめて申請する方が多いので、実際に手当が受け取れるのは、産休が始まってから約4~5カ月後というケースが一般的です。
このことを考えると、産後に慌てることがないよう、産休中の生活費は前もって確保しておくと安心ですね。
産休の手当、申請を忘れたらどうなる?
出産手当金の申請期限は、産休を取得した日の翌日から2年以内となっています。 出産後は慌ただしくて申請するのを忘れていたという方も、期限内であれば受け取れますので安心してください。
申請期限を過ぎてしまった場合、出産手当金の支給日数は毎日1日分ずつ減っていきます。出産手当金の申請書には医師や事業主の証明欄もありますので、産後の入院中や赤ちゃんの定期健診、出産を会社に報告するタイミングなどと合わせて、効率よく手続きを進めていきましょう。
※写真と本文は関係ありません
※表は著者が作成