事故だけでなくクルマ自体も減らす自動運転

ここにはATC(アドバンスド・テクノロジー・センター)と呼ばれる自動運転部門が置かれており、2016年に研究施設がオープンした。ATCでは自動運転のメリットについて、交通事故を減らすとともに、シェアリングとの組み合わせで自動車自体の台数を大幅に減らし、都市空間に余裕をもたらすことを挙げた。

取材当時はピッツバーグ、サンフランシスコ、フェニックス、カナダ・トロントの4都市で200台以上が走り、2016年1月からの2年間の累計走行距離は320万キロと、ひとりの人間が一生で走る距離の数倍をこなしていた。

  • ウーバーの自動運転トラック

    トラックの自動運転にも取り組むウーバー(画像提供:Uber Technologies Inc.)

今回は2人のオペレーターが乗るボルボの自動運転車で15分ほど市内を走った。外観は屋根上のセンサーで自動運転車とひと目で分かるものの、運転マナーは自然で、制限速度を守り、赤信号では一時停止し、信号のない交差点は車列が途切れるまで待って通過した。

  • 自動運転を体験したときの車内の様子

    自動運転を体験したときの車内の様子

なので、2週間後に一報を聞いたときは驚いたが、事故が起こったことは事実である。ウーバーが今後、自動運転事業をどうするかは分からない。しかし、今のウーバーが少し前までのウーバーとは違うことは断言できる。

タクシー業界との関係にも影響? 変わるウーバー

同社では創業者のトラビス・カラニックが昨年、社内問題などが原因で辞任した。新たにCEOに就任したエクスペディア出身のダラ・コスロシャヒは、トップダウンからボトムアップへと企業風土を一新すると表明した。

変化はすでに現れている。例えばライドシェアは、世界各地でタクシー業界との軋轢を生み出したが、一部の国ではタクシーとの協業という新しいスタイルを構築。日本でも同様のスタイルでの参入を目指したいとしている。

自動運転の分野は、グーグルから独立したウェイモをはじめ競合が多い。企業の論理として、競争には勝たねばならない。しかし、事故が起これば今回のように人命を失うこともある。ウーバーはCEOの交代と今回の事故を契機に、ユーザーやオペレーターの気持ちを第一に考えた進化を目指していくのではないか。個人的にもそんな方向性を望みたい。