(5)新キャスト、オリジナルキャラクターの違和感のなさ

――一方で、新キャストや、清原果耶さんが演じたオリジナルキャラクター・伊織も魅力的でした。映画のオリジナルキャラクターって、結構浮いてしまうことも多いと思うんですが、すごくしっくりきていたので驚きました。

浮いてなかったでしょう? 「オリキャラを作りたい」という目的で作り始めると絶対にダメだと思うんですが、今回は伊織を出さなければならない必然性があるんですよ。映画のクライマックスを描くため、近江神宮での団体戦は原作と違う展開になったので、変更を成立させるためには、もう1人キャラクターが必要になったんです。つまり、千早を追い込む選手が必要になった。

千早を追い込むくらいだから、相当強い選手でなければ成立しません。原作に出ている4人のキャラクターを組み合わせているんですが、その強さを映画の中の限られたシーンで示すためには、詩暢と対峙させる必然性も出てきました。そうなると、広瀬すずと松岡茉優の前に座っても、彼女たちのオーラに負けることなく、「こいつ、強い」と思わせる人がいなければ、成立しません。そのオーディションで清原果耶に出会ったんです。見た瞬間「この子ならいける」と思いました。目力が違いました。また広瀬・松岡とも違う美人だし、下からの突き上げを見せるために年齢差も出したかったので、ぴったりでした。

――冒頭でもう、びっくりしました。クイーン戦なの!? と。

冒頭で「誰これ」となったら終わりなんです。すごく難しい役でしたし、賢くて自分の役どころがわかっているからこそ、本人もプレッシャーは感じていたと思います。

――優希さん、佐野さんもすごくしっくりきていましたが、皆さんオーディションなんですね。

正直、キャスティングでもいいかも知れないと悩みましたが、仲間たちはみんなオーディションで上がってきているからこそ、同じ経験を踏ませてあげないと、真の仲間になれないんじゃないかと思いました。同じプロセスを踏んできたからこそ、互いにわかる感じってあると思うんです。

(6)試写室で大人たちが号泣する

――これも試写室の話ですが、もう各所ですすり泣きが起こっていまして、この作品のどこが、それだけ人を泣かせるのだと思いますか?

まずは『ちはやふる』が好きな方々に対して、ちゃんと楽しんでいただけるものを作りたいという思いが節々に現れているのだと思います。さらに、役者も「これが最後だ」という熱い気持ちでやっているから、役を超越した熱が存在している。2年間、キャストもスタッフも誰も彼もが手を抜かずに生きてきて、そして、『前作を絶対に超えてやるんだ!』という強い願いが間違いなく映像に生かされているのだと思います。

そして、この作品はちゃんと監督・スタッフがテーマを決めて作っていたことも大きい。前作の『上の句』『下の句』を徹底的に研究して、良かったところ、悪かったところを全部抽出してハイブリッドにしたのが『結び』です。さらにHuluなどで配信中のスピンオフ『ちはやふる -繋ぐ-』も全部繋がっているので、ぜひ観て欲しいです。

■北島直明
日本テレビ 事業局映画事業部。2004年の入社後、営業局を経て、入社8年目より現職。映画プロデューサーとして『藁の楯』『ちはやふる』『オオカミ少女と黒王子』『22年目の告白 —私が殺人犯です—』など、数々の作品を手掛ける。公開待機作に『ママレード・ボーイ』(18)、『50回目のファーストキス』(18)がある。現在は、ハリウッドで『藁の楯』のリメイク製作を手掛けている。

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