遂に最終回へのカウントダウンが始まったNHK連続テレビ小説『わろてんか』(毎週月~金曜8:00~8:15ほか)。昨年10月から放送がスタートした本作で、葵わかな演じるてんは、今や女興行師として堂々とした貫禄を見せている。このたび脚本家の吉田智子と、後藤高久プロデューサーを迎え、これまでの物語を振り返ってもらいつつ、最終週の見どころについても語ってもらった。

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    葵わかな演じるヒロインのてん

『わろてんか』は、明治から昭和初期の大阪を舞台に、主人公・藤岡てんが夫・藤吉(松坂桃李)と共に寄席の商売を始め、大奮闘していくという人情喜劇。モデルとなったのは、吉本興業の創業者・吉本せいだ。ドラマはすでにクランクアップしている。

中盤以降の展開は、てんの息子・隼也が商売で大失敗して駆け落ちするなど、父・藤吉と同じ道を辿ったり、笑いと人生をつなぐ本作のテーマが改めて浮き彫りにされるエピソード満載の吉田メソッドの脚本が冴えを見せる中、果たして最終回ではどんな景色を見せてくれるのだろうか?

現実世界でも"家族"になったキャスト・スタッフ

――19歳ながら、見事に座長を務めた主演の葵わかなさん。クランクアップは感無量だったようですね。

吉田:あれだけのメンバーがそろっている中で、凛としてヒロインをやり遂げてくれたわかなちゃんはすごいです。もちろん周りの役者陣が最初から最後まで彼女を見守って支えてくれたおかげもあるでしょう。

後藤:撮影の最後は2日間かけて、レギュラー出演者の方々が順次クランクアップしていったんですが、わかなちゃんは一人終わるごとに涙を浮かべていました。でも、他のみなさんもそうで、(風太役の)濱田岳くんなんかも相当に泣いてましたし、後半からの参加だった(川上四郎役の)松尾諭くんは本当に号泣していました。

なんでそんなに泣くんだろうと思ったんですけど、やっぱりこれまで役の上でてんを支えてきた風太、おトキ(徳永えり)などの周りの人たちは、現実においても日々の撮影や生活の中でわかなちゃんを支えていたからなんじゃないかと。

松坂桃李くんもそうで、ヒロインの夫としての役柄と同時に、役者・葵わかなが悩んでいる時は相談にのったり、役の上でも役者仲間としても彼女を支えていたと思います。だから、わかなちゃんも彼らの思いに応えてどんどん成長していった。ドラマでは「北村笑店は家族だ」というセリフがいっぱい出てきますが、まさしく『わろてんか』の出演者やスタッフみんなが家族だったなと。

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てんと共に成長を遂げた葵わかな

――藤吉役は、最初から子役ではなく松坂さんが演じていましたね。

吉田:最初に10代の藤吉役をティーンエージャーの役者でいくのか、松坂さん本人がやるのかという話し合いをしたんです。青年時代から松坂さんに演じてもらうことで、てんにとって藤吉がかけがえのない存在だと強く印象づいたと思うので、最終的には成功だったと思います。

――てんは年齢を経ていくと共に、だんだん風格を増していきます。そのグラデーションも葵さんは見事に演じていましたね。

後藤:25~26週のてんは50代なんですが、試写を観た局内の人たちが、「彼女の50代の芝居をもっと見たい」と言ったんです。もちろん、肌がしわしわになるわけじゃないんですが、立ち居振る舞いや言葉の出し方などが見事に当時の50代になっていました。それはわかなちゃんが誠実に役と向き合ってきたからできたことで、「ものすごい演技を見たな」という印象でした。でも、よくよく考えたら、彼女はまだ19歳なんですよね。

吉田:有名な女優さんがヒロインを演じる場合もありますが、今回のように純粋にオーディションを突破したわかなちゃんが、どんなふうに成長を遂げていくのかは、脚本を書く側から見てもすごく楽しみでした。25週、最終週は本当にその演技に引き込まれ、成長ぶりに胸が熱くなりました。

後藤:てんは藤吉亡き後、女興行師となり、もう1歩先に踏み出す覚悟を決めたんですが、そこまでは藤吉役の松坂くんがいろいろと気を遣ってくれた部分があったと思います。その後、藤吉は幽霊として出てきますが、毎日じゃない。だから北村笑店のみんなが藤吉に代わっててんをさらに支えようと団結していき、“わろてんか組”みたいなものができ上がっていった気がします。

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