コントに最新技術を導入

――コントの中で、例えば憲武さんが飛び蹴りをかました時に、当たったところがピカッて光る映像効果が印象的だったのですが、ああいう演出は『みなさん』が最初ですか?

そうです。あれはスキャニメイトっていう技術なんですけど、当たるところにピカッと光らせて音をつけると、子供がすごく喜んでるというのを聞いて多めにやってましたね。それも最初ですけど、『ゴースト』という映画で人がすり抜ける映像がすごいなと思ったので、技術さんや編集マン、カメラマン、作家を呼んで研究して、テレビで初めて、貴明がすり抜ける映像に成功しました。他にも、『ターミネーター2』のパロディや、マイケル・ジャクソンとかMCハマーのプロモーションビデオのパロディも、当時最新のテレビの技術を使っていましたね。

――アメリカの最先端の映像をパロディしようとして、最新の技術を投入していったんですね。

映画にできてテレビでできないはずがないと思って、そこはトップランナーでいたかったんですよね。だから、今はCGがあって本当に楽だなと思いますよ。この前、『北の国から』のコントが最後だからって貴明に頼まれて撮ったんですけど、熱いやかんをおでこにつけてワーワー騒ぐっていう時に、短時間で湯気をつけたりできますからね。

――港さんがコントを撮るのは、相当久しぶりだったんじゃないですか?

現場を離れた後に、本家の『北の国から』が『遺言』で終わるので、こっちもやっておかなきゃダメだろうということで撮ったのが最後だから16年ぶり。「他に誰かできるだろう」って言っても「できるわけないじゃないですか」って言われたんで。遠藤察男の台本で、宮沢りえちゃん、満里奈、伊藤英明くんも来てくれて、いつも通りドライやって本番で、2時間半巻きました(笑)。僕のモットーは分かりやすく、面白く、かっこよく、早くという4つなので、それは16年たっても変わらないです。作品なので引き受けた以上は編集もやってSE(音響効果)も付けて。憲武には「社長監督」って言われましたけどね(笑)

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    「ちょっと北の国から'88冬」=DVD-BOX『とんねるずのみなさんのおかげでBOX』(3月21日発売)より

日テレの美術スタッフが激怒

――30年以上の『みなさん』の歴史で、印象深い事件やエピソードはありますか? 石田さんは「木梨憲武さんを偲んで」を挙げてくれましたが。

あれはね(笑)。抗議電話が鳴り止まなくて、受けただけで800件だったかな。憲武の寂しそうな写真ないかってマネージャに聞いたら、「ありました」って言って持ってきたのが運転免許証の写真。モノクロでそれを引き延ばしたら「感じ出てるね」って(笑)

そんなのもありましたけど、個人的に面白かったのは、Mr.マリックさんのパロディ「Mr.ノリック」ですね。『Mr.マリック超魔術』を日テレさんが『木曜スペシャル』で19~21時で年に4回ぐらい特番でやって、25%くらいとるほどの人気番組だったんですよ。それで憲武が「やってみたい」って言って。カツラかぶってやってみると器用だから、コインの瞬間移動とか、結構なマジックはできるんですよ。それで、日テレのマリック特番が終わった後に視聴者層的にうちに流れてくるだろうと考えて、その時に全く同じセットでノリックが登場するという、1つの番組が続いてる感じでやりたかったんです。

でも、日テレさんのセットなんて分かるわけないじゃないですか。すると、われわれと仲のいい女性タレントさんが本家のマリックさんの特番にゲストで呼ばれたので、セットをカメラで撮ってきてとお願いしたんです。「絶対バレるなよ!」って言って(笑)。それで、うちの方には、あたかも日テレの番組が終わって、そこから『みなさん』に飛び込んでくる感じで、同じ衣装で来てもらってね。それがすごい面白くて、うちがマリックさんの特番より1%くらいとったのかな。あとで聞いたら、日テレさんの美術さんがものすごい怒ってたって(笑)。まぁ、申し訳ないことしたけど、相乗効果になればいいなということもあるので、大成功で面白かったですね。

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    「MR.ノリック 驚異の超魔術」=DVD-BOX『とんねるずのみなさんのおかげでBOX』(3月21日発売)より

――してやった感がありますね(笑)

あとは、いろんな人に出てもらいましたけど、90年くらいに、牧瀬里穂、宮沢りえ、観月ありさが「3M」と呼ばれて一世風靡してたとき、ある回でそれぞれ主役のコーナーと、MCハマーも加えて「4M」と言って放送したのも、業界中に「すごい力ですね」と言われて、視聴率も当然20%後半行きましたね。3Mをそろえるのは1回やってみたいなと思ってて、それもうまく行ったなと思いました。

――とんねるずのお2人で、それぞれ感心するところはどんな部分ですか?

貴明は優れたプロデューサー的な感覚を持っていて、スタッフにいいお弁当を出そうとか、現場を奮い立たせることはすごく率先してやりますし、どういうことをやろうかという大きな方針の話は一緒によくしてましたね。憲武は、水に転げ落ちたりとか、本当に見事ですし、メイクも自分たちでやって、お婆さんになっただけで役になりきって面白くて、存在感と言うんですかね、どんどん磨きがかかりましたね。それと"ものまね"。さきほど最新技術の話をしましたが、憲武が1人でものまねを1時間やった回があって、あれは当時発明されたモーションコントロールカメラというのを使って、1枚の画面で憲武の郷ひろみと西城秀樹が一緒に歌ってるというのが実現できたんですよ。

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