「自分は大丈夫」だと思っていても、知らず知らずのうちにストレスが蓄積されていけば当然、心身に悪影響が出てくる。ただ、そのような事態を回避するため、私たちの体はさまざまな"サイン"を出して危険をいち早く知らせてくれる。

具体的には「不眠」「疲労感」「倦怠感」「頭痛」「体の痛み」「肩こり」「動悸」「めまい」「抑うつ気分」「不安緊張」などが出現するケースが多い。ただ、ストレスの出方は人それぞれで、吐き気や嘔吐、めまい、耳閉塞感などの身体表現性障害が出現する場合もある。

ストレス単体では病気にならないが……

これらの"サイン"に気づけなかったり、わかっていながらも対処ができなかったりした場合、うつ病や不安障害といった形で心の病を発病してしまうかもしれない。

「精神疾患は、脳内の神経伝達物質の乱れや遺伝素因、環境要因などさまざまな要因が重なったことが発症に関連していると言われます。まだその原因がはっきりわかっていないものがほとんどですが、発症には必ずストレス要因となる事柄があり、それをきっかけに発症したり、具合が悪くなったり、病状が不安定になったりする場合がほとんどです」

ストレスを含む複合的な要因が絡み合い、発病につながる。上記に記したストレス蓄積時の兆候に限らず、原因が思い当たらない心身の不調が続くようならば、ストレスを疑ってみるのもいいかもしれない。

コップ半分の水をどう感じるのか

あなたは水が半分入っているコップを見て、「半分も水が残っている」と思う人だろうか。それとも、「半分しか残っていない」と感じる人だろうか。短絡的に見れば、前者の考え方は「ポジティブ思考」、後者の場合は「ネガティブ思考」ととらえることができる。ある事象に対する感じ方や物事のとらえ方は個々人によって異なり、その人の思考や育ってきた環境に起因する部分も少なくない。

本当に自分にとって不快なストレス要因からは距離を置くことを最優先とすべきだろう。だが、そこまででもない場合は、そのストレス要因に対する認識を変えてみるのも対策の一つ。自分の認識や思考をいきなり変えることは難しいが、徐々にでも変えていければ、今はストレスと感じていることがとても些末なものになる可能性もある。

蓄積したストレスの発散を対症療法とするならば、そもそもストレスを感じないようにするのは原因療法にあたる。ストレスで病気にならないためにも、「認識を変える」という行動の重要性をしっかりと覚えておいてほしい。

※写真と本文は関係ありません

取材協力: 髙木希奈(タカギ・キナ)

精神保健指定医、日本精神神経学会認定専門医、日本精神神経学会認定指導医、日本医師会認定産業医。長野県出身。聖マリアンナ医科大学卒業。現在は、精神科単科の病院で精神科救急を中心に急性期治療にあたっている。また、産業医として企業にも勤務している。著書に『あなたの周りの身近な狂気』(セブン&アイ出版)、『間取りの恋愛心理学』(三五館)、『精神科女医が本気で考えた 心と体を満足させるセックス』(徳間書店)、電子書籍『女医が教える飽きないエッチ』(App Store、Kindle)など。趣味は、海外旅行とスキューバダイビング。オフィシャルブログはこちら。