――肉体的な成長と共に、『ジード』に出演する前とした後とでは、精神的にも成長が見られたのではないですか。

濱田:うーん、自分ではどれだけ成長したのかって、言葉にして言いにくいですけれど、自分が「ヒーロー」になったとしっかり実感したことでしょうかね。『ジード』の撮影が終わった後、全国各地のイベントにリクとして出演して、子どもたちと直接触れあう機会が多かったんです。そのとき、子どもたちが僕を見つめるキラキラした目を見て、「ああ、ちょっと前まで自分もこんな目をしてウルトラヒーローを見つめていたんだなあ」って(笑)。

坂本:ほんと、つい最近までね(笑)。

濱田:僕の幼いころは『ウルトラマンマックス』(2005年)や『ウルトラマンメビウス』(2006年)を応援していましたね。それがこうして、ウルトラマンジードとして子どもたちの前に出られることで、僕も今までの先輩ヒーローたちと同じ存在になることができたんだなって思うと、とてもうれしく思います。

坂本:龍臣くんの成長は、それはもう撮影を重ねるごとに、みるみるうちに育っていったという印象ですよ。芸歴が長いですから、最初から俳優としてのオーラがあるんですけれど、だんだんとヒーローを演じることの自覚が出てきたといいますか。最初は緊張気味だった変身ポーズにしても、次第に誰よりもカッコいい表情を決めるようになったり、セリフも力強く言えるようになったり、そういう意味でも劇中のリクと一緒に成長してくれました。『ジード』の後でもドラマでご一緒していますが、『ジード』の1年間で培った龍臣くんの成長は、監督としてではなく、人間としてうれしい刺激になりました。僕自身も龍臣くんからエネルギーをもらいましたね。

「ヒーローになるまで」から「ゴールの向こう」の人生へ

――今回の映画ならではの、ストーリー面での見どころは何でしょうか。

濱田:今まで、どんな苦境に立たされても決してあきらめず、常にポジティブでいたリクが、初めての挫折を経験する。そこが映画での一番インパクトあるシーンだと思います。落ち込んだリクを見て、子どもたちが「どうなるんだろう?」と心配したり「リク、頑張れ!」と応援したり、リクに感情移入してほしいと思っています。

坂本:テレビシリーズが「少年がヒーローになるまでの物語」だったので、映画はそこから進めて「ヒーローになったあと、どんな問題をかかえるか」を描きたかったんです。人は誰でもやりたいことの先にゴールがありますよね。子どもなら大人になるのがゴール、運動選手ならオリンピックで金メダルと取るとか……。

しかし、目標を達成したあとはどうなるのか。ゴールの向こうにもまだまだ人生があり、いろいろな問題にぶつかって挫折するときも必ずあるでしょう。その挫折に直面したとき、どうやって立ち直るか、それが映画のテーマになっています。小さな子どもたちはこれから体験することとして、一緒に映画を見る親御さんには過去に体験したこととして、みんなでリクの次なる成長を応援していただけたら、という思いを込めています。