俳優の市原隼人が主演するテレビ朝日系ドラマ『明日の君がもっと好き』(毎週土曜23:05~)は、恋愛に冷めた男女が"運命の出逢い"に翻ろうされて"想定外の恋"に落ちていくヒューマンラブストーリー。脚本は井沢満氏が担当し、その井沢氏とドラマ『外科医有森冴子』シリーズ(日本テレビ系)でタッグを組んだ女優・三田佳子も出演している。

三田が演じる里川静子は、市原演じる松尾亮が好意を寄せる茜(伊藤歩)とその妹・梓(志田未来)の祖母という役どころ。そんな三田と井沢氏に、『明日の君がもっと好き』はもちろん、プライベートでの秘話などについても聞いた。

役作りにすごく悩んだ

――今回、三田さんが演じられているのは、普段良い祖母の姿を見せているが、自宅介護している夫・清に熱いお茶をかけたり、マフラーで首を絞めたりというダークな一面も併せ持つ役柄ですね。

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(左から)三田佳子、井沢満氏=テレビ朝日提供

三田:いい年してるのに挑戦ばっかりです。今回、役作りにすごい悩みました。もう少し情緒が前に出ると思いましたが、最初から熱いものをかけたり、首を絞めたと、すごいことになっちゃって(笑)。

井沢:エキセントリックな、キャラクターを作りづらい設定でしたので、お気の毒でした。ただ、三田さんとは息も合っているので、こちらは甘えもあるわけですよ。役作りで悩まれていたとき、「すべてを見通すフクロウのような存在」と説明しましたら、納得していただきました。

三田:あまりバタバタしていないで、夜の静寂の中ですべてをじっと見ているというイメージで、ああ、そういう感じかと。ただ、演じていると、だんだん自分が怖い顔になってきて、なんだか嫌だな嫌だなと思い続けて最終回まで行ったんですけど(笑)、ぶれると役作りが変わってしまいますからね。

井沢:ト書きには書いてないんですけど、メールで上海雑技団の変面の顔でやって、三田佳子オンステージで顔を瞬間的にその都度変えて、というすごい無理な要求をしました。『私という他人』(TBS系・74年)で演じていた、二重人格で人格が変わる瞬間の表情がとにかく強烈で、それをまた見たくて書いたんです、実は。

三田:そうはいかないのに、書かれるから(苦笑)。でもこれができなきゃ役者がすたるし、逃げちゃだめだと思って頑張りましたね。

井沢:それで女優さんって不思議だなと思うのが、だいたい陽気な方で普通の方なんですが、画面を見たら修羅がよぎるんです。どこから引っ張り出してくるんだろうと。

三田:それがあるんですよ(笑)。もちろんお茶をかけたりはしないですけどね。どこか役者というのは常軌から飛んでるところがあるから、こんなに長くやってこれたんだと思います。原始の巫女さんといいますか、神がかって乗り移った人が、現在の役者になっているんじゃないかしら、そう思うときがあるんです。

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    『明日の君がもっと好き』(テレビ朝日系、毎週土曜23:05~)
    3月3日に放送される第6話では、茜(伊藤歩)と遥飛(白洲迅)が抱き合う姿を目撃した亮(市原隼人=写真)が、嫉妬と恋慕がないまぜになった人生で初めて味わう情念に苦しむことに。一方、香(森川葵)は思いを断ち切れず梓(志田未来)に会いに行くが、梓からの思いがけない言葉に、香は絶望の淵へと落ちていく。

ツッコミがくるのもありがたい

――ドラマでは毎回、さまざまな反応がSNS上で寄せられています。これらの反応について、どのような感想を抱いていますか?

井沢:今回のドラマでは、普通よりもテンションをかなり上げて書いてます。大体ツッコミが来るところは予見できますし、ツッコミ自体がテレビの賑わいです。ずいぶん筋違いなツッコミもあるにはありますが、それもうれしいですよね。無視されるのが一番怖いです。ですので、Twitterで呟いてくれるのが一番うれしいです。昔に書いた『同窓会』(日本テレビ系・93年)という作品でも、世間でかなり騒がれたんですけど、20年以上が経過し、やっと扇情的な部分を抜きに評価してくださる方も出てくるようになりました。今回の作品もきっとそうだと、出演者の方が言ってくれましたね。

――確かに『同窓会』は同性愛をテーマにしていたこともあり、当時大きな反応がありましたよね。このドラマの主題歌は、当時はまだブレイク前だったMr.Childrenの『CROSS ROAD』でした。

三田:あの歌もね、切り口がいいですよね。

――ヴォーカルの桜井和寿さんは、井沢さんが書かれた『同窓会』第1話の脚本を見て、作詞をしたそうです。この曲がバンド初のミリオンセラーとなり、結果的にその後、国民的バンドになりました。

井沢:私は”ゲン”がいいの! 主題歌で組むと必ず出世するんですよ。

――お2人がタッグを組まれるのは、90年と92年に連続ドラマ化され、00年にもスペシャルが放送された『外科医有森冴子』以来ですね。お2人のやりとりをお聞きしてると、長年からの強い信頼関係で結ばれていると感じます。

三田:『外科医 有森冴子』については、私も出演しましたが『ドクターX』(テレビ朝日系)での女医さんブームの先駆者といいますか、何十年も前に近代的な女医さんをつくってやってきた関係がありますよね。

井沢:今回のお茶をかけたりするという役は、三田さん以外はあんまりやってくださらないですから(笑)。ただ断れない仕掛けもあって、静子という役名にしたのは、三田さんと初めて組んだ『家族あわせ』(NHK)での役名なんですよ。これ書いたら逃げないと思って(笑)。

三田:「あの作品でやった静子だよ」と聞いたときは、グッときましたね。