JALは2月28日、JAL本社にて「2017~2020年度 JALグループ中期経営計画ローリングプラン2018」(ローリングプラン2018)を発表した。2017年4月に発表した「2017-2020年度 JALグループ中期経営計画」(中期経営計画2017)を見える化し、その先の2027年度末までの目標として、世界主要500都市へ乗り入れ、国際線旅客 海外販売額比率50%、売上2兆円、営業利益2,500億円、時価総額3兆円の実現を掲げている。

  • (右から)現社長の植木義晴氏、新社長の赤坂祐二氏(常務執行役員)

    (右から)現社長の植木義晴氏、新社長の赤坂祐二氏(常務執行役員)

20年度の営業利益は1,800億円

JALは2020年度売上高は1兆6,000億円、営業利益は1,800億円を計画。さらにその先にある2027年度末までの目標として、売上高2兆円、営業利益2,500億円、時価総額3兆円を掲げている。この狙いについて代表取締役社長の植木義晴氏は、「株主の身になってみれば、数字を出すのはIRの基本。10年を積み上げられるような数字はどこにもないが、この辺りの数字は狙っていきたい。1年でも早くできればいい」とコメントした。

2018~2020年度の設備投資として、総額6,600億円を計上。その内、4,400億円を成長投資、2,200億円を更新投資とし、航空機に4,500億円、地上・IT等に2,100億円を当てる。なお、この総額6,600億円とは別に、飛躍的な成長を目指すための投資として特別成長投資枠を500億円設けており、この500億円は企業価値を向上させるための資金として、航空・非航空を問わず、幅広い分野に対する投資を検討していくとしている。

  • 2018~2020年度の設備投資として、総額6,600億円に加え、特別成長投資枠を500億円を設置

    2018~2020年度の設備投資として、総額6,600億円に加え、特別成長投資枠を500億円を設置

  • 中期期間の売上・利益目標

    中期期間の売上・利益目標

アライアンスを越えた提携も強化

2018年度以降の戦略の前に、2017年度のJALの取り組みを振り返ると、2017年度は「世界のJAL」×「一歩先を行く価値」=「常に成長」 をキーワードとするJAL Visionの実現に向け、オーストラリアの第2の都市・メルボルン線(成田=メルボルン線)とハワイ島の玄関口であるコナ線(成田=コナ線)を開設した。

また、世界のエアラインパートナーとの提携拡充(アエロフロート・ロシア航空、ハワイアン航空、ビスタラ、ベトジェット)、世界水準の旅客基幹システムの刷新などに取り組んできた。「一歩先を行く価値」の創造としては、国内線Wi-Fiの無料化、フィンテック会社の設立、超音速機BOOMへの出資・参画なども実行している。

  • ローリングプラン2018の位置づけ

    ローリングプラン2018の位置づけ

2018年度以降は、「一歩先を行く価値」を創るための挑戦を加速するため、イノベーションを生み出す基盤として、人財とテクノロジーを融合させる取り組みを促進し、フルサービスキャリア事業を磨き上げ、事業領域を拡げることに引き続き取り組み、「常に成長」を実現していく。

JALは2018年2月現在、自社便で90都市、世界のパートナー企業を通じて253都市に乗り入れ、コードシェア等の提携を含めると343都市に就航している。これを2027年度末までに世界主要都市500都市へと拡大させる。この500都市という数字は、日本からの渡航者のニーズを鑑みた時に、そのニーズをカバーするのが500都市だったというところからきている。

この500都市を満たすためにはパートナーに頼るところは大きいとしており、パートナーはoneworldメンバーに限らず、利益を共有できる共同事業パートナーや、その他のコードシェアパートナーとのグローバルネットワークの拡充させていく。各パートナーと連携することで、海外マーケットでのプレゼンスの向上も目指している。

具体的には、2018年度にアジア・リゾート路線等の国際線増便とチャーター便を設定。2019年度は北米西海岸の新規地点に就航し、北米=アジアネットワークを強化する。さらに 2020年度には、首都圏発着枠拡大を機に国際線を拡充させる。北米=アジア路線に関してはビジネスユーザーを意識し、フルフラットシートの標準化とともに、滞在目的にもなりうる充実したラウンジも戦略のひとつとして考えている。

国内線に関しては、世界自然遺産登録を目指す奄美群島と沖縄間において2018年度に新路線を開設し、エコツーリズムのニーズが高い訪日外国人をターゲットとして展開していく。

  • 機材に関し、FY17末は合計227機だが、FY18末には合計228機、FY20末には合計230機を計画

    機材に関し、FY17末は合計227機だが、FY18末には合計228機、FY20末には合計230機を計画

国内線に機内衛星テレビや電源設置

商品・サービスの向上としては、2018年度から全席本革・機内Wi-Fi・座席間隔拡大を備えた「JAL SKY NEXT」を対象に、機内衛星テレビを導入。2019年度からは先進的な機内設備を備えたA350を国内線に導入し、さらにA350や787などを対象として、国内線座席への個人画面と電源を備える。

イノベーションという観点で、2018年度からアプリを通じて利用者個人への遅延・欠航時のタイムリーな情報案内とスムーズな手続きを実現し、2019年度から個人のニーズにあった旅行案内やクーポンをタイムリーにモバイル端末等を通じて提供する。さらに、空港で実施しているIoTや生体認証技術に呼応するかたちで、JALが対応する空港手続きにおいても高精度な位置情報の活用により、何度もパスポートの提示を求められる現状を、ストレスフリーなサービスに切り替える。

  • イノベーションにより実現する将来の姿

    イノベーションにより実現する将来の姿

なお、ANAが2月1日に発表した「2018-2022年度ANAグループ中期経営戦略」では、 バニラエア・Peachの連携強化と中距離路線へ進出を掲げ、LCCを通じてANAグループにおける空白領域を中心に就航都市を増やし、収益拡大につなげることを戦略のひとつとしている。その一方でJALのLCC事業では、春秋航空日本の安全品質向上の支援、パートナーとしてジェットスター・ジャパンとの取り組みは現状を踏襲するという内容に留めている。

  • 航空運送・航空周辺・新領域と、事業領域を拡げる

    航空運送・航空周辺・新領域と、事業領域を拡げる

「安全」に関しては、"現地・現物・現人"の3現主義に基づく安全教育を徹底し、最先端のデータベース、新たな分析手法を活用し、目標達成に向け再発防止を徹底する。「顧客満足」に関しては、顧客ロイヤルティを数値化するNPS(Net Promoter Score)を指標とし、2017年度期初を基準として、2017年度は国内線+1.4ポイント、国際線+2.1ポイント改善し、2020年度までの目標として「国内線+5.3ポイント、国際線+4.5ポイント」(2017年度期初対比)を新たに設定した。「財務」に関しては、2017年度は目標である「営業利益率10%以上、投資利益率(ROIC)9%以上」を上回る、営業利益率12.2%、ROIC9.5%が見込まれている。