パソコンが家庭に普及し始めた頃、デイトレで稼ぐ個人投資家が増えたりしましたが、あまり知識もないまま株に手を出して、後悔した人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、銘柄を選ぶ際にチェックしておきたい「ROE」という指標についてご紹介します。
■ROEの意味とは
ROE(Return On Equityの略)とは、企業の収益力を示す指標の一つで、「自己資本利益率」または「株主資本利益率」と言われるものです。これによって、会社が株主から預かっている資本をいかに効率的に運用し、どれだけの収益を上げているのかが分かります。つまり、ROEが高いほど収益力が高いことになります。
■ROEの算出方法と目安
ROE(%)の計算式は、「1株あたりの利益(EPS)÷1株あたりの株主資本(BPS)×100」となります。ROEが高いほど株主から預かっている資本を効率良く運用し、利益を上げていることになり、高い経営能力を持った企業と言えます。逆に、ROEが低い企業については、その経営能力が疑わしいと判断されてしまいます。
ここで、下記2社の例からROEの意味を確認してみましょう。
A社 純利益2,000万円÷株主資本2億円×100=ROE 10%
B社 純利益2,000万円÷株主資本1億円×100=ROE 20%
いずれも純利益200万円を上げていますが、B社の方が少ない株式資本をもとにしていることから、B社の方が効率的に運用している企業であることが分かります。目安としては、10%以上であれば優秀と言え、高成長企業の場合には20%を超えることも多いようです。米国を中心にROEを重視した投資が主流となっていることから、日本企業でもROEを高める動きが見られるようになりました。
■ROEの落とし穴に注意
ROEは、優良企業を判断する基準の一つではありますが、ただ単にROEが高いという理由だけで投資するのは危険です。正しく判断するためには、分母となる資本の内訳を知ることが重要となってきます。具体的な例をあげて説明しましょう。
- C社(2017年)ROE 5%
純利益5,000万円、純資産10億円(内訳:総資産50億円-負債40億円)
この場合のROEは5%です。翌年さらに30億円を借り入れ事業を拡大し、純利益を2倍にしたとします。
- C社(2018年)ROE 10%
純利益1億円、純資産10億円(内訳:総資産80億円-負債70億円)
すると、ROEが10%に上がりました。一見、優良企業のように見えますが、70億円も借金しているにもかかわらず、純利益が1億円しか出ていないことになります。このように、単にROEの数値に頼っていては見誤る恐れがありますので、注意が必要です。
また、多額の設備投資を必要とする製造業などは、借入金も多くなることからROEが低くなりがちですが、設備投資を抑えることができるネット関連企業などは高くなる傾向があります。銘柄を選ぶ際は、その年のROEだけで判断するのではなく、ここ数年~数十年のROEの推移を見ること、さらに、その他の財務指標などもあわせて判断するようにしましょう。
今回は「ROE」についてご紹介しました。銘柄を選ぶ際の指標は、他にもたくさんあります。投資にリスクはつきものですが、さまざまな尺度から総合的に判断することで回避できるものもあります。真の優良銘柄を見極めるためにも、一つずつ知識を積み上げていきましょう。