「既存」という言葉を、あなたはどう読みますか?「きそん」と読む人もいれば、「きぞん」と言う人もいるでしょう。いったい、どちらが正しい読み方なのか。今回は、「既存」の正しい読み方と使い方についてご紹介いたします。

■「既存」の意味

「既存」の意味は、読んで字のごとく「既に存在していること」を表します。似たような意味を持つ言葉に「現存」という言葉がありますが、こちらは「現在もある(残っている)こと」という意味合いが強く、古くから存在するものを対象として使われるようです。

■「既存」の正しい読み方

「既存」の正しい読み方としては、「きそん」が正解です。「きぞん」という読み方を耳にすることもありますが、これは本来誤りです。

とは言え、パソコンで「きぞん」と入力すれば「既存」と変換されるのですから、自分が間違って読んでいることに気付くのは難しいでしょう。では、なぜ間違っているのにもかかわらず変換されるのか。調べてみたところ、パソコンでは、そう読む人が一定数以上存在するならば変換できるように設定されているようです。また、間違って入力された単語や、新しいワードを学習し自動で登録する学習機能というものもあるので、「パソコンで変換されたのだから正しい」とは限らないので注意が必要です。

■発音のプロも認めた「~ぞん」

「そう読む人が一定数以上存在するならば、受け入れている」のは、パソコンだけではありません。辞書にも、「『きぞん』ともいう」と明記されているのです。また、発音のプロでもあるNHK放送文化研究所も、2014年の放送用語委員会にて「きぞん」を受け入れ、「きそん」と「きぞん」を同等に扱うこととしました。これは、世論調査の結果から「きぞん」の読みが一般化していること、「きぞん」の読みもあることを示している国語辞典が多いことなどを考慮しての決定のようです。他にも「依存(いそん・いぞん)」「共存(きょうそん・きょうぞん)」「現存(げんそん・げんぞん)」「残存(ざんそん・ざんぞん)」といった言葉も議論され、いずれも、今までは「~そん」を優先して読んでいたものが、逆転し「~ぞん」を優先することになりました。ちなみに、「既存」については「きそん」「きぞん」に優先順位はなく、あくまでも同等扱いのようです。

毎年、新語・流行語が生まれ、昨年10年ぶりに改訂された「広辞苑」には、約1万語の新語が収録されたとのこと。このように、言葉というものは時代の流れによって変化したり、新たに作られるものだということが分かります。特に、スマホの普及により、個人が多くの言葉を自由に発信できるようになった現代においては、その傾向が顕著であるように感じます。今年もどんな言葉が生まれるのか、楽しみです。

■「既存」の例文、正しい使い方は?

  • 「既存の施設を活用する」

2016~2017年にかけて、このフレーズを何度も耳にしたものです。東京オリンピックの各会場について「既存の施設を活用するか、新設するか」で、小池都知事とIOC・JOCとの間で意見が食い違い、幾度となく議論を重ねていました。

  • 「既存のルールを徹底させる」
  • 「既存店の売り上げが好調」

他にも例文はありますが、いずれも「既にある○○」という意味で使われています。「既存」という言葉は、日常会話ではあまり使うことはないでしょう。会社の書類や公文書、書籍などで目にしたりすることが多いのではないでしょうか。会議などで誰かがそれを読み上げる時、「きそん」と読むか「きぞん」と読むか、耳を傾けてみると面白いかもしれません。