▼5位 学園ドラマのイメージを塗り替えた秀作『先に生まれただけの僕』(日本テレビ系)

蒼井優

蒼井優

職業エンタメの第一人者・福田靖と、ドキュメントタッチの映像でテーマを掘り下げる水田伸生の脚本・演出が高次元で融合。民間企業というフィルターを通して見る学校と、サラリーマンの目から見た教師や生徒の描写がナチュラルで、そこから見える問題にリアリティを生んでいた。

奨学金返納、デジタル万引き、アクティブラーニングの是非、受験不要教科の勉強など各話のテーマも、そつなく現代にアップデート。さらに、それらの結末は単純な円満解決のような予定調和を避ける、現役高校生の生態を描写するために学園ドラマにはつきものの“スター生徒”を投入しないなど、随所に真摯な姿勢を感じた。

「先生か生徒が主人公」の学園ドラマとは一線を画し、風間杜夫や高嶋政伸らのユニークなキャラで息抜きシーンを入れるなどのバランス感覚もあり、これ以上ない仕上がりに見えたが、視聴率は伸びず……。大人にも高校生にも見てほしい作品だけに、この厳しい結果が、今後のドラマ制作に影響しないか気がかりだ。

▼4位 「実現不可能」を実現させるテレ東の真骨頂『バイプレーヤーズ』(テレビ東京系)

大杉漣

大杉漣

これぞ「奇跡の共演」。他局なら「実現不可能」と言われ、会議にも出せないほどの企画を見事に実現させたのは、テレビ東京の勢いだろうか。「スケジュール的には、主演6人をそろえるよりも難しいのではないか」と思われる超売れっ子バイプレーヤーを集めただけで勝ちと言える。

実際、主役を食うほどのバイプレーヤーが6人もそろったのだから、映像に力が宿るのは必然。彼らは「本人役」「業界の裏側を見せる」という難題がぶつけられたが、予想通り愛嬌たっぷりに演じることでクリアしてしまった。

そもそも遠藤憲一、大杉漣、田口トモロヲ、寺島進、松重豊、光石研という名バイプレーヤーたちが「世間が見るオレ」をどう演じるのか、役作りだけでも興味津々。視聴者に終始「演じているのか? それとも素なのか?」と考えさせる脚本・演出は巧みだった。

さらに各話のゲストも、例外なく楽しそうな姿を披露。絶対的なテーマがないため、終盤のカタルシスこそないが、「いかに特別な作品であるか」を感じさせる遊び心が散りばめられていた。

▼3位 コンプラと自主規制に真っ向から挑戦した『僕たちがやりました』(フジテレビ系)

窪田正孝

窪田正孝

今年の民放ドラマで最も称えたいのが当作。初回から叩かれることを承知で、「バイオレンス、イジメ、エロを前面に出したあげく、学校の爆発事故という救いのないラスト」を見せて驚かせた。

その後も浮き沈みの激しい逃亡劇で視聴者を飽きさせず、物語は連ドラらしく二転三転。身勝手で強欲だった高校生たちが、中盤以降は罪と向き合いはじめる姿も丁寧に描かれ、4者4様だったドラマオリジナルの結末もメッセージ性十分で見応えがあった。

かつて登竜門となっていたような学園ドラマが望めない今、窪田正孝、間宮祥太朗、葉山奨之、永野芽郁、川栄李奈ら、「今後の業界を担う若手俳優たちを中心に据えて夏期のドラマを作った」という価値も高い。

今年カンテレは火曜21時の放送枠で、『嘘の戦争』『CRISIS』『僕たちがやりました』『明日の約束』と攻めに攻めた作品を連発。「ハードな世界観の作品でも笑いを盛り込む」「コンプライアンスに配慮し、表現を自主規制する」など、逃げ場を用意するのがセオリーとなる中、トガった作風を一年間貫き通した。視聴率としては低迷したものもあったが、視聴者の熱狂度は4本すべて高かったのは間違いなく、来年も同様の姿勢を期待したい。

▼2位 逆境に強い森下佳子が大河ドラマの可能性を広げた『おんな城主 直虎』(NHK)

柴咲コウ

柴咲コウ

放送終了から10日が過ぎた今もネット上に絶賛の声があがっているが、立役者は何と言っても脚本家・森下佳子だろう。大筋の人間ドラマから細部のディテールまで、一切抜かりなし。柴咲コウはもちろん、高橋一生、柳楽優弥、菅田将暉ら多くの俳優に力強さを植えつけるような森下の脚本が冴え渡った。

つくづく森下は逆境に強い。当作は「昨年ヒットした『真田丸』の直後」「井伊直虎は無名」「近年、鬼門となっていた女性主人公」という三重苦の状況だったが、持ち前のストーリーテリングで見事にはねのけて見せた。過去を振り返ると、朝ドラの『ごちそうさん』も「社会現象となった『あまちゃん』の直後」「架空のヒロイン」「食をテーマに半年間」という三重苦を見事に突破。どちらも、人々が絆を育むまでのエピソードを巧みに創作し、感動を呼び込んだ。

今作は「ぬしの名は」(君の名は。)「嫌われ政次の一生」(嫌われ松子の一生)など名作をもじった副題も話題を集めたが、『ごちそうさん』でもサブタイトルを毎週食べ物のダジャレで作るなど、視聴者へのサービス精神が光る。

無名の人物でこれほどものを作り上げた功績は大きく、今後は史実にとらわれすぎない思い切った作品が見られるかもしれない。手詰まり感のあった大河ドラマに風穴を開けたという意味でも、限りなく1位タイに近い。

▼1位 マンネリ気味の朝ドラにスローな革新をもたらした『ひよっこ』(NHK)

有村架純

有村架純

近年、「戦前戦後の偉人一代記」と化し、マンネリ気味だった朝ドラが一変。「昭和中後期」「どの職業も目指さないヒロイン」「わずか4年間しか描いていない」など、朝ドラのセオリーをすべて無視しながら、右肩上がりに支持を集めていった。

父親の失踪という闇こそあったものの、それ以外は常に牧歌的なムード。貧しさと隣り合わせの農家暮らしも、向島電機の倒産も、恋人との別れも、それほど悲壮感はなく、女性たちが笑顔で支え合い、「普通にしっかり生きる」様子を淡々と描いていた。

展開も演技も総じてスロー。夢も成功も名誉もなし。まるで脚本を手がけた岡田惠和が「ゆっくりでいいじゃん」「夢や成功なんかなくても楽しく生きられるよ」とでも言っているようなファンタジー作なのかもしれない。

そんな世界観の中、有村架純をはじめ、大半のキャストが女優の輝きを消して市井の人々を好演。「全員のスピンオフが見たい」とまで思わせるキャラクターが描き分けられていた。

スカッと解決の勧善懲悪ドラマ、急展開のジェットコースタードラマ、ドロドロの愛憎ドラマなどのわかりやすさや刺激が好きな人はピンとこないだろうが、ぜひ数年後に見てほしいと思う。「あなたが日本人なら、今ハマらなくても、いつかハマる」可能性が高い作品ではないか。

ともあれ、「波乱万丈の成功物語」というスタイルを崩した意義は大きい。朝ドラでの革新という点では『あまちゃん』以来。それほど手放しでほめ称えたい作品だった。


その他の作品では、毒母の生態を生々しく描いた『お母さん、娘をやめていいですか?』(NHK)と『明日の約束』(フジテレビ系)、アクションと後味の悪さにこだわった『CRISIS』(フジテレビ系)、徹底的に演出家が遊びまくった『人は見た目が100パーセント』(フジテレビ系)、警察+動物+アイドルのハイブリッドな『警視庁いきもの係』(フジテレビ系)、職人とランナーという孤独な職種の絆を描いた『陸王』(TBS系)、バディモノとしては最高峰の質を誇る『刑事ゆがみ』(フジテレビ系)。

深夜帯では、ダークサイドに徹したサスペンス&ミステリー『100万円の女たち』(テレビ東京系)、異色の人情ファンタジー『増山超能力師事務所』(日本テレビ系)、ミュージカル演出に思い切り踏み込んだ『あいの結婚相談所』(テレビ朝日系)、小劇場の作家たちを健全に競わせた『下北沢ダイハード』(テレビ東京系)、復讐劇と週刊誌を見事につなげた『ブラックリベンジ』(日本テレビ系)など、強烈なカラーを持つ作品が多かった。

終わってみれば2017年のドラマ界も力作ぞろいで、ここで挙げた10作は好みの問題でしかない。未視聴のものは年末年始の休みを利用して、オンデマンドやDVDで視聴してみてはいかがだろうか。

最後に、ドラマ制作のみなさん、俳優のみなさん、今年も1年間おつかれさまでした。2018年も「多くの人々を楽しませる」「心から感動できる ドラマをよろしくお願いいたします。

■著者プロフィール
木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月間20本超のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2000人を超えるタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。