JR西日本は27日、同社所有のN700系で12月11日に運転された「のぞみ34号」の重大インシデントについて、異常を感じたにもかかわらず運転を継続したことに対する現時点の認識を明らかにした。

  • 東海道・山陽新幹線「のぞみ」に使用されるN700系(写真は2015年撮影)

通常ダイヤの「のぞみ34号」は博多駅13時33分発・東京駅18時33分着で運転。12月11日の同列車は走行中に異臭と床下からの異音が確認され、名古屋駅で床下点検を行ったところ、13号車第2台車(東京方)で油漏れが認められたことから前途運休に。その後、台車枠の亀裂や継手の変色も確認された。小倉駅発車後に「焦げたような臭いがする」と申告があり、岡山駅から添乗した車両保守担当社員が13~14号車間で「うなり音」を確認するなど異常を感じたにもかかわらず、名古屋駅まで運転が継続されていた。

JR西日本は今回の事象に対する「極めて重大な課題」として、「車両保守担当社員と指令員の間で車両の状況についての認識のズレがあり、運行停止に関する判断基準も曖昧であった」「異音などが発生しているにもかかわらず、運転に支障がないと判断し、JR東海に指令間協議を申し出ずに運行を引き継いだ」「車両保守担当社員と指令員は運行停止に関する判断を相互に依存する状況であった」と説明。このような状況を会社として把握できていなかったことも重大な課題と認識している。

車両保守担当社員は13号車の台車周辺から発生する異音を「通常と異なるものであり、可能な場所で早めに床下点検をする必要がある」と考え、運用指令員(車両や乗務員の運用を管理する指令員)との会話中にも「音が激しい」「床下を点検したいんだけど」と伝えていた。運用指令員から「走行に支障があるのか」と聞かれた際は「そこまではいかないと思う、見ていないので現象がわからない」と返答している。

その会話中、運用指令員は運用指令長から現状の報告を求められ、「ちょっと待ってください」と伝えた上で受話器を離した。車両保守担当社員は「安全をとって新大阪で床下をやろうか」と伝えていたが、運用指令員はこの発言を聞けていない。一方、車両保守担当社員は運用指令員の「ちょっと待ってください」を「新大阪駅で床下点検の準備をするため」の発言と認識していた。このやり取りを通じて、運用指令員は「走行には支障がないが、車両の専門家が見ても分からない音がしている」、車両保守担当社員は「運用指令員に対して床下点検実施の要請ができている」との認識になっていた。

運用指令長は「運転に支障があれば駅間でも停車させよう」と考えたが、運用指令員に現状を確認したところ「床下から音はしているものの運転に支障はない」との報告だったこともあり、運転に支障があるとの判断には至らなかった。「のぞみ34号」の車掌長は、異音やにおい、モヤなどに関して「列車を停止させてまで確認するようなものではないことから、危険な状況ではない」「状況を注視しているところに車両保守担当社員が乗車してきたことから、車両保守担当社員が確認してくれる」との認識だったという。

JR西日本は今回の事象に関して、高い安全レベルを維持するためのシステムではカバーしきれない「人の関与の残る部分で発生した事象でした」などと説明。同社が認識する「極めて重大な課題」へ対策を講じるとともに、人の判断に頼る部分を極力減らすため「最新の技術を取り込んだハード対策の早期導入」を検討し、「ルールや仕組みの見直し」「安全の確保に向けた新幹線組織の体制強化」にも取り組むとしている。さらに「運輸安全委員会などのご意見をふまえ、今後とも必要な対応を行ってまいります」とのこと。