いよいよ公開となる『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(12月15日公開)はズバリ! 年末年始映画の話題を独占する本当の、大マジの衝撃作だった。容易には先が読めない展開に、予想をはるか超えたアイデアの数々で、観る者を大翻弄! 2時間30分以上が秒で終わったのではないかと錯覚するほどSW映画として秀逸で、SFアクションとしても爽快! そしてなにより、オールドファンだけに目線が向いていない感も新しかった。

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    デイジー・リドリー演じるヒロインのレイ

前作フォースの覚醒の際は、新たなファン層取り込みと最後まで言いながら、中身はオールドファンありがとうのサプライズ。昨年の『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』では、スピンオフと言いながら、クライマックスでダース・ベイダー卿の大暴れとレイア姫の登板で本線との連続性をアピールするなど、なんだかんだ言って往年のファンのほうを向いていた。が、それだけに終始しない展開が、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の大きな魅力だった。

ネタバレは避けたいのでストーリーの丁寧な説明は控えるが、前作フォースの覚醒の後の物語で、ファースト・オーダーの容赦ない攻撃が増すなか、レイア姫を中心としたレジスタンスが立ち向かい、それと同時に主人公のレイが伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーの元を訪れ、銀河に平和を取り戻そうとする物語だ。

おなじみの『スター・ウォーズ』の枠組み残した展開で進行するものの、これが一筋縄ではまったくいかない。この夏、「D23 Expo」で初めて解禁となったメイキング映像で、フィン役のジョン・ボイエガが「すべては逆の方向に行く」と言っていたが、その言葉の真の意図はともかくとして、練りに練られたストーリーに誰もが驚くに違いない。しかも、その衝撃の展開の数々は、いきなり冒頭のシーンでやって来る。突然の予想外の展開に「え?」となるほど強烈だった。

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この脚本を手がけた人物は、監督も兼任したライアン・ジョンソン。『LOOPER/ルーパー』などを手がけた新鋭で、まさかあの『BRICK ブリック』を撮った同一人物が、これだけのスペース・オペラを撮るまでに出世するとは、映画ファンも驚いたに違いない。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は新たなファン層も取り込み、旧来のファンも納得させる必要があったが、そこでの大成功を受けて、今回の脚本には自由度を大いに感じる。J.J.エイブラムスの作った礎を元に、サーガのさらなる可能性を模索して、調整して、試して、勝負を賭けた。

たとえば"笑い"が多い点も、今作の特徴だ。もともと同シリーズには、C-3POやR2-D2などちょっとしたお笑い担当がいて、基本は戦争の映画をマイルドにする役目を担っていたが、最新作では、その担当も回数も明らかに増している。本作を紹介する際に、いろいろな表現が踊るだろうが、史上もっとも小ネタが多いSWと言ってもいいはず。そして笑いが多いということは、芯はシリアスであるということ。これが戦争映画であるということを改めて思った次第だ。ライトセーバーバトル、宇宙船の移動の瞬間、空間のデザインなど、随所に映像的なアレンジが見て取れた点も新鮮だった。やはり、現代版SWの第2作目ということで、実に新たなビジュアルが多いので、隅々まで見逃せない。

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また、オールドファンの最大の感心事は、マーク・ハミルの登場だ。先日筆者がインタビューした際にも「『フォースの覚醒』の話を受けた時に、ハリソンとキャリーとまた一緒に大暴れできると思ったけれど、僕は共演シーンが一切なくてね(笑)。最後にひとりだけのシーンで、しかもフードをかぶって振り向くだけでセリフもない。そういうことは若干、あったけれども(笑)、またみんなと会えてうれしかったよ」と言っていたが、この言葉から推測して裏を返すと、今回は活躍するということになるだろう。

新たなファン層には、アダム・ドライバー演じるカイロ・レンに注目。2年前、キャスリーン・ケネディをインタビューした際、「今後はカイロ・レンのキャラクターに変化が」と言っていたが、今作を経て新時代の『スター・ウォーズ』を象徴するようなキャラクターになっていくかもしれない。彼の目だけで語るストイックな神演技も、ますます凄まじくなっていて圧巻だ。

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ただ、前述のようにある意味三部作の真ん中ということで、自由度が高いということは間違いなく、『スター・ウォーズ』の本当の勝負はこれからだ。次の監督はJ.J.が再登板するが、J.J.自身も映画で自身の経験に基づくようなオリジナル脚本で勝負した経験は少なく、かつてジョージ・ルーカスが自分のことを作品に込めたように、今度はJ.J.が『スター・ウォーズ』をシメなくてはいけない。ファンや会社に望まれる映画だけでなく、攻めの姿勢で次回作エピソード9を作ってほしいとも思うが、一方でフォースの覚醒のような"安全なところ"でいいとも思うので、筆者のようなファンとは勝手なものである。

しかし、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は、そこまで思い至らす、誰かと話題を共有したくなるほどの映画であるということだ。これが戦争映画であることを改めて意識したと前述したが、映画の最後にウォルト・ディズニー・スタジオという文字が出た時、そうかディズニー映画だった、と思ってしまうほどの衝撃も待っていることもまた真実だ。早くも次回作への期待をはせながら、新たなる『スター・ウォーズ』の世界を目撃してほしい。

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