――さて、いよいよ12月9日よりビルドとエグゼイド、そしてレジェンドライダーたちが豪華共演を果たす映画『平成ジェネレーションズFINAL』が公開されますので、こちらのお話をうかがいたいと思います。脚本にはお2人のお名前が連名で記載されているのですが、かつての「MOVIE大戦」シリーズのように『ビルド』パート、『エグゼイド』パートと分かれている作りではないですよね。どのようにして合作作業が行われたのでしょうか。

武藤:内容的に、わりとガッツリ共作しているんです。最初に「こういう映画をやろう」と話し合った際、僕がみんなの意見をまとめてまずアウトラインとなるべきストーリー案を起こしました。その際に、日本がスカイウォールという壁で3つに分断されている『ビルド』と、スカイウォールが存在しない『エグゼイド』およびレジェンドライダーの世界観の違いをどうするかを考えました。

これまでの仮面ライダー共演映画で、時空を超えて別の世界同士のライダーが集う、というアイデアはわりかし使われていたのですが、パラレルワールドそのものを物語の主軸にすえて物語を作る、というのは無かったと思いまして。戦兎が天才物理学者という設定もありますし、パラレルワールドを映画の中できちんと説明して、互いに行き来が出来ない世界同士が融合する=破滅につながるという危機を設定し、これを阻止するためにどうするか、というストーリーを考えたんです。その後、高橋さんが第1稿、第2稿を上げられて。

高橋:『ビルド』に関しては詳しくわからないところがありますから、そこはざっくりと書いて、あとは武藤さんにお任せしました。僕は主に『エグゼイド』とレジェンドライダーのパートを書いています。

――ビルドとエグゼイドは、2017年8月5日に公開された『劇場版 仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディング』のクロージング(エンディングタイトル後)の短いシークエンスで遭遇していますが、そこでは両者の関係が「共に戦う者同士」とは思えないような、ちょっとモヤモヤする出会い方をしましたよね。あの件について、今度の映画で何かはっきりしたことがわかったりしますか?

武藤:はっきりと、あのシーンについての決着がつきますよ。あれによって、いろいろな出来事が動いていく部分があります。

――正直、あのとき初登場したビルドのやったことって、あまり正義のヒーローっぽくないような印象がありました。あそこで映画が終わってしまうのは、かなりの冒険だったんじゃないでしょうか。

高橋:僕としては、『エグゼイド』の物語(トゥルー・エンディング)をただ気持ちよく書いただけだったので、その後のことは……(笑)。今までの映画だと、新ライダーが映画の途中に出てきて、それがお披露目になったりしたでしょう。最初はそんな案もあったんですけれど、すでにお決まりの感じになっていたり、どうしてもストーリーの中で「異物感」が生じたりしますからね。そこで今回は、大森プロデューサーが続けて『ビルド』も担当されるということもあり、「夏映画」から「冬映画」にお話をつなげるというアイデアに、意図的に挑戦してみようという経緯がありました。

武藤:エグゼイドから成分を奪ってしまうなんて、と、夏の映画ではビルドの印象が完全に悪い方向に行きかねなかったな(笑)。でも、今回の映画では、ちゃんとあのときのビルドがなぜあんな態度であんな行動をしたか、という謎をはっきり解明していますので、ビルドを今なお怪しんでいる人こそ、映画をご覧になってほしいんですよ。

高橋:そうですよね(笑)。

武藤:まだ、みなさんどこかでひっかかっているんじゃないかと思うんですよ。あいつって本当にエグゼイドの味方になるのか?とか。

高橋:ときどき見かける意見の中で、あの映画のクロージングは『エグゼイド』の脚本家が『ビルド』をディスって、わざとあんな描写にしたんだ、とかいうのがあるんですよ。はっきり申し上げておきますが、それはとんだとばっちりです(笑)。そういう意見も含め、いろんな意味で話題になればいいなと思いました。今回の『平成ジェネレーションズFINAL』を観てくだされば、きっとビルドに感じていたモヤモヤも晴れるはずです。

武藤:でも長いですよね。夏の映画から4か月もモヤモヤさせてしまうなんて(笑)。

――全国の子どもたちはすっかりビルドのファンになっていると思いますが、夏の映画でのビルドの謎めいた行動を引きずって、ちょっとモヤモヤ感のある大人のファンの人たちが見ると、なるほど!と思えるような展開が待っているというわけですね。そして、レジェンドライダーである『オーズ』『フォーゼ』『鎧武』『ゴースト』については、それぞれのシリーズの「その後」の姿として登場するとうかがっています。ライダーの中には、テレビや映画で変身能力を失った人たちもいますが、そこの部分も高橋さんがきちんと納得いく展開を考えられたのですか。

高橋:そうですね。『オーズ』だと、相棒のアンクがなぜ復活したのか、その理由がちゃんと語られます。テレビシリーズの最終回を受け、消滅してしまったアンクと再会した映司が、彼にどんな言葉をかけるのか?とか、『MOVIE大戦アルティメイタム』の劇中でフォーゼドライバーを失ってしまった弦太朗が、今回どうやって変身するのか?とか、いろいろと時間軸による仕掛けがあります。ライダーによっては、「その後」だったり、そうじゃなかったり、いろいろ違いますので、それらの部分にも注意して観てほしいですね。レジェンドライダーについては、過去作をじっくりと勉強させていただきました。あとは、それぞれの作品を担当された"レジェンドプロデューサー"の方たちにも各ライダーに対する強い思い入れがありますので、キャラクターに対しての貴重な意見を参考にさせていただいています。

――平成ライダーファンの武藤さんからも、レジェンドライダーについて何かこだわりのアイデアがあったりしましたか?

武藤:ないです! 僕のほうはもう『ビルド』パートでいっぱいいっぱいでしたからね。テレビと同時進行でしたし(笑)。

――『エグゼイド』テレビシリーズ終了記念のトークイベントで高橋さんは、冬の映画『平成ジェネレーションズ』や最初の1クールあたりがフルマラソン(42.195km)に例えると「10km地点」に相当し、あのころが一番キツかったとおっしゃっていましたね。しかしこの難関を見事に乗り切って、テレビシリーズ全話執筆という、ここ最近における東映特撮作品ではなかなかできない偉業を達成されました。現在『仮面ライダービルド』をお一人で書かれている武藤さんに、1年間の長丁場を乗り切る秘訣などを話されたりしましたか?

高橋:いえいえ、それに関しては僕から何か言うことではありません。武藤さんは素晴らしい作家さんですし、僕は純粋に『ビルド』の展開を一視聴者として楽しんでいます。僕の場合、1クールあたりで本当に苦しくて、大森さんと「他の作家さん(の参加)、どうします?」と相談していたこともありました。でも大森さんから「1クール分は書いてみますか」と勧めてもらい、やっていくうちにだんだんランナーズハイみたいになってきて、終盤まで来たら「ここまでやったらもう(ほかの作家さんに参入してもらうのも)いやだな」と思うくらいになりました。

武藤:僕も全話完走を目指して、出来る限り頑張ります。