現在放送中の「スーパー戦隊」最新作『宇宙戦隊キュウレンジャー』は、発表当初から初期レギュラーメンバーとしてはシリーズ最多となる「9人戦隊」であることが大きな話題を集めた。しかし現在さらに人数は増え、『獣電戦隊キョウリュウジャー』を超え歴代最多の12人戦隊として物語が展開されている。

毛利亘宏(もうり のぶひろ) 劇作家、演出家。劇団「少年社中」の主宰として数々の舞台の演出・脚本を手掛ける。特撮作品では『仮面ライダーオーズ/OOO』『仮面ライダー鎧武/ガイム』など仮面ライダーシリーズ作品、『特命戦隊ゴーバスターズ』『手裏剣戦隊ニンニンジャー』などスーパー戦隊シリーズ作品に参加。現在放送中の『宇宙戦隊キュウレンジャー』ではメインで脚本を担当している

"歴代最多"であることはニュースとして取り上げられながら、そして企画意図については多少なりとも説明されながらも、それがどのようにして描かれていったのかについてはほとんど明かされていなかった。本作の脚本をメインで担当しているのは、劇団「少年社中」の主宰として数々の舞台の演出・脚本を手掛ける毛利亘宏氏。特撮作品では、『仮面ライダーオーズ/OOO』『仮面ライダー鎧武/ガイム』や、「スーパー戦隊」では『特命戦隊ゴーバスターズ』『手裏剣戦隊ニンニンジャー』に携わっている。

今回、2018年1月に舞台『ピカレスク◆セブン』の公演を控えた毛利氏にインタビューする機会を得た。『ピカレスク◆セブン』は7人の"極悪人"が活躍する、まさに『キュウレンジャー』の真逆をいく設定で描かれるダークヒーローたちの物語。果たして、『キュウレンジャー』を歴代最多ヒーローとして成立させているのにはどのような脚本上の工夫があるのか、そして舞台演出との共通点はあるのか、毛利氏を直撃した。後半では、毛利氏から見たキャストの姿や、本作を成立させている意外なキャラクターが明かされた。

――『キュウレンジャー』では、キャストの方たちのイベントの盛り上がりやチームワークのよさを非常に感じます。

仲がいいのは例年なのですが、今年はなんかギラギラしてますよね。人数が多いのがいいほうに転がっているというか……。例えば、レギュラーとはいえ登場時間が短い回も当然あるんですよね。その中で、セリフのない中でどれだけ画面に残っていられるか。画面の中でいい芝居をしてやるぞ!という気持ちがすごく伝わってくる。むちゃくちゃみんな頑張ってるなって。あまりなれ合いになっていないし、「とにかくいい仕事をするんだ」という雰囲気がすごくあるなと。

――確かに、インタビューをさせていただいたキャストの方もいらっしゃるのですが、すごい熱量を感じました。

そうですね。僕は現場には行かないのですが、スーツアクターさんや声優さんを含めてしのぎを削り合っているというところがあります。スタートの時に出演キャスト全員を集めて監督から「今回は気合を入れて作るんだ」と説明がありました。僕自身も一番最初の打ち合わせで、「スーパー戦隊」は40年以上続いているけど来年も続くと思うなよ的な、気が引き締まる瞬間があったりしたんです。今年頑張らないと、この歴史を止めることになるという危機感が最初からすごくあったんですね。

前作の『動物戦隊ジュウオウジャー』が40周年記念作品ですごく盛り上がったのもあったので……。どうしても記念作の次の作品はなかなか勢いが続かないこともありますから、今作はその記念作の勢いを続けていく作品にしようという思いがありました。だからこそ9人という普段と違うことをやろうとした。実際それで本当にうまくいくかどうかみんなよくわかっていませんでしたが、でもとりあえずやってみようと。結果として、みんなが熱量をもって臨んだことで乗り切っているというか、"ラッキーがちゃんとついてきている"という感じはしています(笑)。

――実際にドラマやキャラクターの思わぬ盛り上がりを受けて、ストーリーや役に反映されたことはありましたか?

仮編集したものを見て、今こんな感じの芝居をしているんだいうのを見てフィードバックすることはあります。逆説的になるんですけど、僕が書きすぎなくてもちゃんとやってくれるので、キャラクターが生きてるんですよね。だからもっと大胆に僕はやりたいことをやろうという思いが後半にいくに従ってどんどん強くなってきていました。

――先日スティンガー/サソリオレンジ役の岸洋佑さんにインタビューさせていただいたのですが、役への思い入れの強さが伝わってきました。

岸くんとは、夏のスコルピオ編が終わるところで役割的にはメインの話じゃなくなってくるけど、それでも頑張ってねという話はしていたんです。でも気が付いてみたら、やはりあの一件を経て成長したスティンガーの存在がキュウレンジャーに及ぼしている影響はすごくある。セリフがないところの芝居の一つ一つをとっても、もう本当に変わっているんですよね。

これは山崎大輝くん(ナーガレイ/ヘビツカイシルバー)もそうで、ダークナーガになって、帰ってきてからの芝居は全然変わっていて、役者一人一人の成長があるんです。回を重ねていく中で役者が成長していくというのは、まあ「スーパー戦隊」をめぐる話ではそういうふうによく言われますけど、今回はすごく"生きてる"というか、すごく愛情をもってやってくれてるなというのがあります。

――人数が多い『キュウレンジャー』で、描くのが楽しいキャラをあえて選ぶとすれば?

これね……言ったら全部楽しいですね。もちろんガル/オオカミブルーとか当然好きなんですけど(笑)。フラットにどのキャラクターも、それぞれにファンがついてくれて、みなさんに愛されていただいていて非常にうれしいです。

――バランス/テンビンゴールドも非常にいいキャラクターですよね。

バランスとナーガのコンビがウケるとは思わなかった……というと語弊があるんですけど、どっちかというとちょっとイロモノじゃないですか。で、作った時はもちろんメインどころで「スーパー戦隊」らしいラッキーとかスティンガーにお客さんがつくと思っていたんですけど、意外にもあのカップルが(笑)。チャンプ/オウシブラックは、彼は彼でドラマを抱えて機能しましたし、ガルは最近のブルーの傾向である"ちょっと変"なところが踏襲されていますよね。

――ガルは出端とだいぶ印象が変わりました。

そうそう。最近のブルーはだいたいそうなんですよね。最初クールで出てくるけどだんだんバレていくっていう(笑)。

――過去に戻る回でもネタ的に使われていましたね。このあたりの展開を含めて、ストーリーの展開がすごく速い印象があったのですが、これは意識されていたのでしょうか。

してます。してますというか、逆にいうと『ジュウオウジャー』を見ていて、「人物描写が丁寧に書けるなあ、いいなあ」と思いながら見ていたのですが、自分ではなかなか丁寧に描く方にはいけなくて。もともとの趣向がスピードバンバンすっ飛ばして詰め込むのが好きなので、すごく自分に合った勢いの「スーパー戦隊」だなと思っています。今ちょうど最終話付近を書いてるのですが、ここからはどんどん進んでいきます。

――これからどんどんまた強い敵が出てきたらどうなっちゃうんだって思います。

そうですね。敵の強さの表現の仕方って、CGで表現する部分と、その敵がどれだけ悪いかという部分。あるいは心理的にコイツと戦えないというドラマで見せるやり方がありますが、今回はそういったドラマを重視して描いていきたいなと思っています。ラストに向かって、終わらせるのが切ないな終わらせたくないなと、一方でそう思いつつ、もう十分書いた!という思いもありますね。

――ラッキーはドラマが作りやすいというお話がありましたが、ほかにキーになったキャラ・設定はあったのでしょうか?

ショウ・ロンポー/リュウコマンダーですね。いままでにもコメディができる司令官はいましたけど、それはやはりみんなの精神的な支柱であり作戦的な支柱であるというものでした。今回は「情けない」という機能を東映の望月卓プロデューサーと考えたのがひとつ発明だったなと。司令官がしっかりしちゃうと、結局みんながそれに従うという構図ができてしまうんです。そうではなくて、自主性を重んじるじゃないですけど、「みんなすごいね」みたいなスタンスにして要所要所でみんなが困った時には助ける。

司令官が精神的な支柱にならないというのは、時代もそういう時代なんだってことだと思うんですよね。『スクールウォーズ』みたいに鬼教官がいて、「悔しいです!」みたいな熱い師弟関係でやる世界観はもう違和感がある。時代がちょっと変わってきているというのもあるので。最初、ショウ・ロンポーのイメージは高田純次って言っていました。でもかっこいいじゃないですか、いい加減な男というか、いい加減だけど芯が通っているというのは。

――ラストに向けて、ファンにメッセージをお願いします。

まだ言えることが限られちゃうのですが……あえて言えば毎週見てねっていう。12月くらいから見逃さず見ていったほうが話がつながっていきます。タテ軸強めでキャラクター達を追い込んでいく流れになっているので。10月放送回から、地球を離れて、年内の放送までは地球には戻ってこないことになっています。壮大なスペースオペラが繰り広げられます!

――それでは、あらためて舞台『ピカレスク◆セブン』についてお伺いできればと。

企画をはじめて6か月くらいで正義の味方をいっぱい書きすぎて悪役に惹かれはじめ、悪人版『七人の侍』を書きたいと思ったのが最初です。色んな意味で『キュウレンジャー』とは真逆になっていくんだろうなとは思っていて。ただキャラクターの作り方は同じ方向性で、結果見えざまが悪か正義というだけなのかなと。メインの七人に関しては『キュウレンジャー』並みに魅力的なキャラクターがごろごろ出てくる予定ですし、それ以外のキャラクターもこれでもか!という悪を描ければ……と思っています。

――キャスティングを拝見していて、ビジュアルもぴったりですよね。

ぶっちゃけキャスティングに関しては、今僕が一番やりたい方々を集めてもらいました。そして、プロデューサーと交渉して決まった人たちがいて、決まってから役を考えています。だからその人になにをやらせたいか、ここでなにをやってもらったらおもしろいかということを考えて役を作っています。「スーパー戦隊」であれば初稿があってそこからオーディションやってますから逆なんですけど。やっぱり自分の劇団だと一緒にやりたいと思っている役者に対して僕が一番やらせたい役を作れる。「君のこういうところが見たいんだよ」というところを脚本家としてまず引き出すという物語づくりができるんです。それは劇団をやっている醍醐味ですよね。本当に大好きな役者ばっかりですから。

少年社中20周年記念第一弾 少年社中×東映 舞台プロジェクト『ピカレスク◆セブン』

冥府より蘇った「東照大権現・イエヤス」によって世界は征服された。 立ち上がったのは…… 7人の"極悪人"! この物語の二人の主人公、"マクベス"と"トクガワイエミツ"! 二人を巡る物語は混沌の中、様々な世界を駆け巡り、やがて一つに重なっていく。 "悪"対"悪"の最終決戦(ラグナロク)の果てに誰が生き残るのか? 世界をその手に収めるのはいったい誰なのか? 誰も観たことがない"ダークヒーロー"がここに誕生する。


脚本・演出:毛利亘宏

出演:井俣太良、大竹えり、岩田有民、堀池直毅、加藤良子、廿浦裕介 長谷川太郎、杉山未央、山川ありそ、内山智絵、竹内尚文、川本裕之 鈴木勝吾、宮崎秋人 / 椎名鯛造 、佃井皆美、相馬圭祐、丸山敦史 唐橋充、松本寛也、細貝圭 / 大高洋夫

日程:東京会場:サンシャイン劇場 2018年1月6日(土)~1月15日(月) 15st 大阪会場:サンケイホールブリーゼ 2018年1月20日(土)・21日(日) 4st 愛知会場:岡崎市民会館あおいホール 2018年1月27日(土) 2st

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