マネックス証券は11月9日、「日経平均3万円への道」と題して、今後の日本の経済見通しを報道関係者向けに説明した。同社は10月27日に日経平均株価が3万円台に上昇するとの見通しを発表しており、その根拠の解説が行われた。
松本社長が日経平均株価について考察
日経平均株価は現在、継続的な上昇基調にあり、10月には21年ぶりとなる22,000円超えを達成するなど順調だ。同社ではこれが短期的なものではなく、日本経済や国内株式市場が大きな転換点を迎えている、と判断。今後3万円まで上昇するとみている。
同社の松本大社長は、「地政学リスクや北朝鮮、人民元の問題はあるだろうが、着実に上がっていくという段階に環境が変わったと確信した」と強調。その背景として3つのポイントを挙げる。
1点目は先の衆議院選挙での与党の大勝の結果、「日銀総裁人事などに対して、黒田総裁の続投、リフレ派の継続的な就任に反対する勢力が小さくなった。今後日本で金融緩和がほぼ続くことが確認できた」(松本社長)ため、重要なファクターである金融緩和が継続するとの判断だ。
続けて、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などのポートフォリオで日本国債の持分が減って日本株が増えており、これからも増加が予定されている点を挙げて、その結果株主のガバナンスが強化され、株価を上げることが求められるようになるとしている。
従来、株価上昇を政策で誘導しようとすると「金持ち優遇ではないか」との批判があった、と松本社長。それに対して、株価が上がることは日本国民全体にとってプラスになるというコンセンサスができやすくなるというのが松本社長の予想で、この認識が広まれば、「日米の一番大きな違いだった」(同)という社会として株価上昇のコンセンサスの有無が解決される、とみている。
さらに、1987年のブラックマンデー以来、米国のダウ平均も時価総額も約12倍となったが、日本は時価総額が2倍になったものの、日経平均はほとんど変わっていない。インデックスの伸びが悪く、経済が新陳代謝して成長していくことを捉えられていない、と指摘する。昨今は、日経平均の企業でも強制退場という形でインデックスから外れ、日経平均の新陳代謝も進んでいくと予測する。
この3点の理由から、松本社長は「波はあるだろうが、日経平均株価は1年半程度のスパンで3万円を目指して上がっていくだろう」と予想する。
過去に比べても明るい見通し
こうした強気の見通しについて、同社はさらに「過去に比べても明るい見通し」を強調する。具体的にはまず低金利の継続で、日本企業の調達コストが低く、それに対して欧米の景気拡大によって正常化したことで、初めてのアービトラージ(裁定取引)の機会が訪れた、と同社のチーフ・アナリストである大槻奈那氏は指摘する。
資金需要も拡大しており、銀行の余剰資本が過去最高レベルで「10兆円ぐらいある」(大槻氏)。さらにレバレッジも考えることで100兆円に達し、現在の貸し出しの2割程度になるという。
企業側も、ほかの先進国は名目GDPに対して債務残高が大きく、「圧倒的に伸びしろがない」(同)。日本企業はこれが逆転しており、借入を行うことでレバレッジ効果があるため、「まだ期待できる」というのが大槻氏の判断だ。
消費者感情の動向も見逃せない点で、日米欧で消費者信頼感指数が上昇しており、これまで米消費者信頼感指数と日経平均株価の相関も高いことから、これが株式市場にプラスに働くとみる。