1970年代に放送され、好評を博した伝説の特撮テレビシリーズ『シルバー仮面』『スーパーロボット レッドバロン』の2作品を、日本最高水準の映像技術を駆使して現代によみがえらせた映画作品、その名も『BRAVE STORM/ブレイブストーム』が、11月10日より全国ロードショー公開される。

左から大東駿介、渡部秀 撮影:大塚素久(SYASYA)

物語は西暦2050年という未来の地球から始まる。恐るべき侵略者キルギス星人が作り出した巨大ロボット・ブラックバロンによって地球の環境が激変し、人類は全滅寸前にまで追いつめられていた。わずかに残された人類である春日五兄妹は、キルギス星人が地球への侵略を開始した2015年へのタイムスリップを計画。兄・光一、姉・ひとみと別れた光二、光三、はるかの3人は過去に飛び、ロボット工学者の紅健一郎博士に接触。博士の協力を得て、巨大ロボット・レッドバロンの製造に着手した。

キルギス星人との戦いに備え、光二には強化スーツ「シルバー」、はるかにはサイキック能力、光三には人間に化けた宇宙人を見破るスペクトルグラスが与えられた。そしてレッドバロンの操縦者には、博士の強い要望でボクサーである弟・紅健(くれない・けん)が選ばれる。突然の出来事にとまどい、激しく反発する健だったが、やがて地球の危機を救うべくレッドバロンのコックピットに座る運命を受け入れる。

しかし、すでにキルギス星人の侵略は密かに進んでおり、ブラックバロンが市街地へと出現した。今ここに、人類の存亡をかけた壮絶な戦いが始まろうとしていた……。

ここでオリジナル版2作品について、簡単ながら解説をしてみよう。宣弘社・TBS制作の『シルバー仮面』は、1971年11月から翌1972年5月に全26話を放映した連続テレビ映画である。1971年といえば、ピープロダクション・フジテレビの『宇宙猿人ゴリ』(後に『宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン』『スペクトルマン』に改題)、円谷プロ・TBSの『帰ってきたウルトラマン』、東映・毎日放送の『仮面ライダー』といった、現在も語り継がれる名作特撮テレビ作品が相次いで放映を開始した年。これらの実写作品の大ヒットにより、いわゆる「第二次・怪獣ブーム」が巻き起こった。

『帰ってきたウルトラマン』は当時流行していた「スポ根(スポーツ根性)ドラマ」の影響もあって、夢を育むSFドラマの要素に加えて熱い「人間ドラマ」に力を入れた作品だった。これは、TBSプロデューサー・橋本洋二氏の「ドラマとは『人間』が描かれなくてはいけない」「作品にはテーマがなければいけない」という確固たる信念が反映された結果である。そんな橋本氏が『帰ってきたウルトラマン』に続き、TBSで企画した新しい特撮作品、それこそが『シルバー仮面』だった。

『シルバー仮面』DVDジャケット

『シルバー仮面』では、TBSで放映されていた海外ドラマ『逃亡者』(1964~1967年)をヒントに「ヒーローから"巨大化"の要素をなくす」「周囲から追われるヒーローを通じて、人間の内面を鋭く描写する」といったアイデアを採用。ウルトラマン的な正攻法のヒーロー像ではなく、暗く影のある主人公チーム(春日兄妹)の苦悩をドラマの中心に置くスタイルが採られた。春日兄妹は、今は亡き父・春日博士が開発した「光子ロケット」の秘密を宇宙人の魔手から懸命に守っているが、周囲の人々からは「お前たちがいるから宇宙人が攻めてくる」と言われ、疎まれることが多い。それでも兄妹は地球を愛し、人類を宇宙の敵から守るため、孤独な戦いの道を歩み続けるのだ。

シリアスな人間ドラマに重きを置いた本作では、ヒーローであるシルバー仮面(兄弟の次男・光二が変身する)の立ち位置も独特である。人間に化けて暗躍していた宇宙人が正体を現すと、シルバー仮面が活躍するのだが、買い物客が行きかう商店街でキマイラ星人と取っ組み合いを行ったり(第7話)、墓地に立てられた卒塔婆を抜いてドミノ星人を打ち据えたり(第9話)と、超人的な能力を持つスーパーヒーローでありながら、そのアクションは非常に地味で、ある意味リアリズムを重視した泥臭いアクションが志向されていた。シルバー仮面ではなく、光一やひとみの撃つ銃(白光銃、赤光銃)で宇宙人を倒した回もいくつかあった。