SKYACTIV-Xについての報告は以上だが、実は試作車はシャシーも新設計となっており、こちらもエンジンと同じぐらい印象的だった。

上級クラスのクルマを思わせるシャシーの出来栄え

エンジンと違って新技術はないものの、人間の歩行の際の骨盤、上体、頭部の動きを研究することで、運転中も骨盤をしっかり立てた上で、路面からのショックを連続的かつ滑らかにいなすことが重要という結論に達した。

シャシーの進化も印象的だ(画像提供:マツダ)

そのためにボディでは、左右のセンターピラーと天井、床を結んだ環状構造だけでなく、前後ドアの開口部も環状構造として骨格を強化。タイヤはサイドウォール部分をしなやかに作ることでスプリング効果を高め、シートは剛性を高めるとともに座面や背もたれの構造も見直した。

おかげで乗り心地は細かい上下動がほとんどなくなり、しっとりしたフィーリングで、2クラスぐらい上の高級車を思わせた。シートもペッタリした現行型の着座感とは大違い。長距離走行も快適そうだ。

試作車の「アクセラ」は、リアサスペンションを現行型のマルチリンク式から簡潔なトーションビーム式に置き換えてあった。スペックだけで優劣を判断すべきではない、大切なのはものづくりの技であることを教えられた。

<新エンジンとシャシーを動画で(提供:マツダ)>

電動化時代にも大事なエンジンの進化

世界の自動車業界では電動化の流れが加速している。しかし、この電動化という言葉は注意が必要で、エンジンとモーターを併用したハイブリッド車も含まれる。IEA(国際エネルギー機関)が2015年に出した予測データによると、2035年になっても自動車の84%はエンジンを積んでいるとしている。

どんなに高度なハイブリッド車でも、エンジンを回した瞬間にガソリンを浪費するようではエコではない。つまり、電動化が進んでもエンジンの進化は重要なのだ。SKYACTIV-Xは、今の自動車にとって何が大事かをしっかり分かっている自動車屋の仕事だと思った。