ドイツ三大メーカーは“電動化”に積極姿勢

ショーではドイツ三大メーカーがいずれもEV導入や電動化の目標を発表した。

・メルセデス:2019年から「EQ」市販化、2022年までに全モデルを電動化 (smart:2020年までに北米と欧州で発売する車両を全てEV化)

・VW:2025年までに新規EVモデル投入、2030年までに全300モデルを電動化

・BMW:2025年までに25のモデルを電動化、そのうち12モデルがEV

この背景には、メルケル首相の“脱エンジン宣言”などの政治的駆け引きや、ディーゼル問題に対する世論などがあるわけだが、各社に共通しているのは電動化(電動パワートレーンの採用)がメインであるということ。EV導入についても語ってはいるが、それは一部に過ぎない。言い換えれば、少なくとも2030年までは内燃機関を搭載した車両を発売する予定があるということだ。どんどんEVを普及させようということではない。

アウディは自動運転レベル3の「A8」(市販中)、レベル4「ELAINE」(写真左)、レベル5「AICON」(写真右)の3つの自動運転車を披露。「ELAINE」は展示ブース内を実際に走行するデモンストレーションを行った。カンファレンスの冒頭はロボットによる自動演奏のライブを披露しており、終始一貫してAutomatedなプレゼンテーションであった(画像提供:AUDI AG)

パワートレインにとどまらない電化の流れ

しかし、電化(電装化、電動化、電脳化)は確実に進む。少し前までは「こんな電装品があったら便利」「これが電動化できれば効率的」といった具合に単品ばら売りだったが、個々の技術の発展と電脳化の進展により、新たな価値の創造が可能になった。それは運転支援や自動走行のシステムとして結実しつつある。この先、電化の流れが止まる理由はもはや見当たらない。

数年前までコンセプトモデルの価値は「1キロ走行あたりCO2排出量〇グラム」という数字で語られてきた。現在も、電化を語る際にCO2排出量削減や環境対応といった文言は出てくるし、EU域内で販売する乗用車の平均CO2排出量は2021年までに1キロあたり95グラム以下にしなければならないという規制もある。しかし、会場ではCO2削減を自慢する表示が格段に減った。むしろ、車体に「CO2〇g/km」のステッカーを張っていたVWが旧型モデルに見えたくらいだ。

著者略歴

清水和夫(しみず・かずお)
1954年、東京都生まれ。武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、国内外の耐久レースで活躍する一方、モータージャーナリストとして活動を始める。自動車の運動理論や安全性能を専門とするが、環境問題、都市交通問題についても精通。著書は日本放送出版協会『クルマ安全学のすすめ』『ITSの思想』『燃料電池とは何か』、ダイヤモンド社『ディーゼルこそが地球を救う』など多数。内閣府SIP自動走行推進委員の構成員でもある