――2作品とも、およそ6分という上映タイムですが、これは何か意図的なものがあったのでしょうか?

最初はどちらも「3分くらいで」と言われていたんです。しかし、絵コンテを作っているとこれは3分にはおさまらないぞ、と。まあ長かったら編集で縮めればいいかな、くらいの気持ちで撮っていました。それで気持ちよく編集してもらったら、偶然2本とも6分程度の尺になったということなんです。依頼を受けた当時はVRの上映時間のトレンドが3分だったそうなんですが、最近ではだんだん長くなってきて、今このタイミングで完成したタイムで6分というのは、いい着地点だったようです。

――時間が長くなっても大丈夫なようでしたら、ゆくゆくはVRによる長編「ウルトラマン」映画なども実現するかもしれませんね。

世界には40分ものVR映像があるらしいですし、今後そういうもの(長編VR)もやってみたいですね。

――『ウルトラファイトVR』では、1970年の『ウルトラファイト』でナレーターを務められた元TBSアナウンサーの山田二郎さんが久々に名調子を聞かせてくれたのもうれしかったです。山田さんの印象はいかがでしたか。

山田さんはすごく活発な方でした。もちろん、当時から50年近く経っているのでご高齢なんですが、収録が始まったらもう、あの感じで……。しかも、最初にこちらからはキャラクターの名前と技の名前のみ伝えただけで、あとのナレーションは全部山田さんのアドリブなんですよ。なるべく当時と同じ状況でやっていただきました(笑)。

――ゼロとエレキングが1対1で勝負する『ゼロVR』と違って、ウルトラセブン、ゼロ、ガッツ、イカルスと4体のキャラクターが入り乱れる『ファイトVR』では、山田さんのナレーションがあるおかげで今、どのキャラクターに注目すればよいかがはっきりわかるんですね。

それはありますね。今はこっちを見てほしい、と視線を誘導する意味でも、ナレーションは重要なんです。山田さんのナレーションは、実は7テイクくらい録っていて、おいしい部分をチョイスして使っています。ぶっつけ本番のように聞こえるよう努めていますが、言葉を厳選して、場合によっては前後を入れ替えたりもしています。

――ガッツとイカルスがゼロを痛めつけているところに、反対側からセブンが駆けつけるくだりなんて最高ですね。

あそこはナレーションもいいですが、映像でもガッツとイカルスがわざとらしく後ろを振り向いたりして(笑)。我ながら視線誘導がうまくいったと思えるところです。

――両作品とも、最初に観たときはキャラクターの姿を追ってしまうのですが、2度目、3度目になるとキャラクターの反対側にいる人間たちや、足元のガレキなどにも目が行ってしまいます。どこを見渡しても映像があるという快感がすごくて、ついつい何度も見返すことになりそうです。

「映像を見る」ではなく「その場に居る」という脳みその使い方になると思います。どこを見ても大丈夫なように作っていますので、ぜひ何度でもご覧になってほしいですね。たとえば、この作品のミニチュアはカメラの手前に置いてもいいように、レンガがはがれて鉄骨がむき出しになっているなど、より精密に作ってあるんです。

撮影現場でも僕が「このミニチュア、よくできているから手前に置いておこう」という具合にやっています。ですので、メインであるゼロとエレキングの戦いを見つめるだけでなく、手前の精密なミニチュアをひたすら愛でる、といった楽しみ方もありますね(笑)。

――田口監督が次にVR作品を演出するなら、どんな映像を撮りたいですか?

VRは基本オープンでしか撮れないので、自然光以外の照明は使えない。そんな中で、夜に怪獣が出てくる映像なんて見てみたいですね。照明をどうするかの問題に加え、GoProの感度の問題が出てきますから簡単にはいきませんが、今後機材の性能が良くなっていく可能性もありますからね。

――これからVRで動かしてみたいキャラクターなどはありますか?

『レッドマン』をやりたいんですよ。今回の『ファイトVR』でも、レッドマンにオマージュをささげた部分がいくつかありますので、ぜひご覧になって確かめてください(笑)。あとは『ウルトラセブン』での、ウルトラ警備隊メカ(ウルトラホーク1~3号)の発進シークエンスを撮ってみたいですね。ミニチュアセットを360度作って取り囲むので、VRには最適ですし。でも実際にはバジェット的に大変かも……。また、VRならではの映像として、科学特捜隊本部の体験ツアーなんてのもいいかもしれませんね。アラシ隊員が本部の中を案内してくれるとか、そういうのがあったらとても楽しいと思います。

『ウルトラマンゼロVR 大都会の戦慄 エレキング対ゼロ』『ウルトラファイトVR 親子タッグ!激闘の荒野に花束を』(製作:円谷プロダクション、ポニーキャニオン、eje)は、全国の「VR THEATER」およびウルトラマン関連イベントで体験することができる。視聴料金は各作品600円。

■プロフィール
田口清隆
1980年、北海道室蘭市生まれ。自主映画『大怪獣映画 G』が認められ、2009年NHK『テレ遊び!パフォー』の番組内企画『長髪大怪獣ゲハラ』で商業監督デビュー。この両作品で『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2009』ファンタランド大賞・市民賞を受賞。2015年にTVシリーズ『ウルトラマンX』のメイン監督をつとめて好評を博し、続く2016年のTVシリーズ『ウルトラマンオーブ』でもメイン監督として続投した


秋田英夫
主に特撮ヒーロー作品や怪獣映画を扱う雑誌などで執筆。これまで『宇宙刑事大全』『宇宙刑事年代記』『メタルヒーロー最強戦士列伝』『ウルトラマン画報』『大人のウルトラマンシリーズ大図鑑』『ゴジラの常識』『仮面ライダー昭和最強伝説』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『ゴーグルV・ダイナマン・バイオマン大全』『鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー大百科』をはじめとする書籍・ムック・雑誌などに、関係者インタビューおよび作品研究記事を多数掲載

(C)円谷プロ (C)ウルトラマンゼロVR 製作委員会