耳垢は医療機関で取り除いてもらうのがよい

毎日の生活を送っているうちにいつの間にかたまっている不思議な存在・耳垢。私たちの多くは、子どもの頃に親に耳垢を取り除いてもらい、成人してからは自分の手で耳の掃除をしているのではないだろうか。たまっていた耳垢がごっそりと取れたときに何とも言えない気持ちよさを感じた経験を持つ人もいるだろう。

ところでこの耳垢、そもそもどのようにできており、どのような存在意義があるのだろうか。「垢」というだけに「不要物」や「ごみ」といったネガティブなイメージをなんとなく抱いてしまうが、もしや私たちの体になくてはならないものなのだろうか。

今回は知っていそうで意外と知らない耳垢について、耳鼻咽喉科専門医の三塚沙希医師にうかがってみた。

――そもそも耳垢とは何なのでしょうか。そして、その存在に何か意味はあるのでしょうか。

外耳道(がいじどう)に存在する耳垢腺(じこうせん)や皮脂腺、汗腺などの分泌物と皮膚から脱落した細胞、さらにゴミが混ざったものが耳垢です。

耳垢腺からの分泌物は適度な粘性を持っているため、耳垢は外耳道から侵入してくるゴミを吸着して外耳道の外に運びだすという役割を担っています。さらに耳垢腺からの分泌物は外耳道を湿潤に保ち、外耳道の皮膚を守ってくれています。

また、耳垢は酸性であり、リゾチームというたんぱく質分解酵素と免疫抗体IgAを含んでいて細菌の繁殖を抑える作用を持っています。

――外耳道を清潔に保つために耳垢が大活躍しているとは知りませんでした。耳垢の粘性がゴミを吸着する役割を担っているとのことですが、耳垢は乾燥したタイプと湿ったタイプがあると思うのですが、その違いは何に由来するのでしょうか。

耳垢は湿ったタイプの「湿性耳垢」と乾燥したタイプの「乾性耳垢」に大きく分けられます。前者は「アメ耳」などとも呼ばれ、後者は「こな耳」などと呼ばれます。この2つの違いは遺伝によるもので、例えばヨーロッパでは湿性耳垢の人が大半を占める一方、私たち日本人は乾性耳垢がほとんどと言われています。湿性耳垢は劣性遺伝で遺伝しており、ご両親やご家族からの引き継がれている性質と言えますね。左右で耳垢の種類が違う方もいますが、これもすべて遺伝形式で決まってきます。

――耳垢のタイプの違いは生活習慣などによる後天性のものだと思っていたのですが、完全な先天性だったのですね。「遺伝」と聞いて特定疾病への罹患リスクを想起してしまったのですが、耳垢が関係している病気は何かあるのでしょうか。

耳垢が関係している病気には、耳垢が大量にたまり外耳道を埋めつくしてしまう耳垢栓塞(じこうせんそく)や、耳垢を無理やり取ろうとして外耳道を傷つけて炎症を起こしてしまう外耳道炎などがあります。

耳垢栓塞の症状としては「耳の閉塞感」「耳鳴り」「難聴」などがありますが、自覚症状が現れないケースもあります。外耳道炎は「耳の痛み」「かゆみ」「耳だれ」などの症状が現れますが、炎症が治まればこれらの症状も消えます。どちらの疾患も耳鼻咽喉科での治療が必要になるため、早期の受診をお勧めします。

――ある一定量の耳垢は耳を清潔に保つために必要だけれども、たまりすぎは病気を招くということですね。それでは、耳垢がたまりすぎないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。また、家庭で簡単かつ安全にできる耳垢の掃除方法を教えてもらえますでしょうか。

基本的には自宅での耳垢掃除はお勧めしません。耳掃除を自宅でやるとトラブルが起こるケースがあるため、耳鼻咽喉科で除去してもらいましょう。特に湿性耳垢は耳垢が溜まりやすい傾向があるため、こまめに耳鼻咽喉科を訪問するとよいでしょう。

※写真と本文は関係ありません


取材協力: 三塚沙希(ミツカ・サキ)

日本大学医学部卒業。
慶応義塾大学耳鼻咽喉科教室入局の後、東京都済生会中央病院・国立成育医療研究センター・山王病院に出向。2017年3月、白金台にエムズクリニック白金を開院。
En女医会所属。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。