南カリフォルニア大学とコモン・センス・メディア(米・子どもの権利擁護NPO)は9月21日、近年のモバイル機器の使用時間増加により、日本と米国の10代の子どもたちとその親が、どのような影響を受けているのかについての調査結果を発表。モバイル機器の使用によって、親子関係が阻害されていると感じる親の比率は、アメリカより日本の方が多く、23%にのぼった。

調査を行った南カリフォルニア大学 アネンバーグ・コミュニケーション・ジャーナリズム学部 学部長のウィロー・ベイ氏

調査は2017年4月、携帯電話を所有し、それを少なくとも週1回使用する中学生または高校生の子どもが少なくとも1人いる日本の親を対象に、インターネット上で行われたもの。13~18歳の子ども(600人)とその親(600人)あわせて1,200名から回答を得た。今回の発表では、アメリカで行われた「Common Sense Census : plugged-in Parents of Tweens and Teens」と「Technology Addition」と題された2016年のコモン・センス・メディアの調査報告書の結果を元に、日米の違いを比較した。

まず日本における調査を行った南カリフォルニア大学 アネンバーグ・コミュニケーション・ジャーナリズム学部 学部長のウィロー・ベイ氏は「メディアやテクノロジーから子どもの生活を守っていく必要がある。テクノロジーが人間関係にどのように影響するか掘り下げていかないといけない。そして、親に対してさまざまな情報を発信していきたい」とこれらの調査の意義について語った。

続いて、アメリカでの調査を行ったコモン・センス・メディア代表のジェームス・ステイヤー氏が、日米の違いについて解説した。

アメリカでの調査を行ったコモン・センス・メディア代表のジェームス・ステイヤー氏

まず、モバイル機器の依存度については、日米ともほぼ同様の結果となった。2人に1人の10代の子どもが(日本: 45%、アメリカ: 50%)「自分はモバイル機器に依存している」と感じており、過半数の親(日本: 61%、アメリカ: 59%)も「自分の子どもがモバイル機器に依存している」と回答。親自身が「自分がモバイル機器に依存している」と感じている割合は、アメリカより日本の方が高かった。

2人に1人の10代の子どもが(日本: 45%、アメリカ: 50%)「自分はモバイル機器に依存している」と回答

この点について「半数以上の親について、子どもがモバイル機器に依存していると感じている。この数はかなり大きな数字」とジェームス氏。「この結果を見過ごすべきではなく、5年、10年先には、こういった問題にますます直面することになる」と警鐘をならした。

一方、日米の違いが出たのは「モバイル機器に気をとられる原因」についての調査結果だった。「テキストメッセージやSNSメッセージなどの通知に、即座に返信する必要性がある」と感じる子どもは、日本では48%なのに対し、アメリカでは72%とかなり高かった。

「テキストメッセージやSNSメッセージなどの通知に、即座に返信する必要性がある」と感じる子どもは、日本では48%なのに対し、アメリカでは72%

またモバイル機器の使用に関して、毎日言い争いをすると答えた親も、日本では19%なのに対して、アメリカでは36%。モバイル機器使用によって親子関係が阻害されていると感じる親の比率は、アメリカが15%だったのに対し、日本が23%と高かった。

毎日言い争いをするアメリカの親の割合は日本の約2倍

日本の親の方が「親子関係が阻害されている」と感じる比率が高かった

ジェームス氏はアメリカの状況について「子どもたちからすると"すぐに返信しなければならない"という強迫観念があるようだ」と見解を述べ、その上で、「日本においても、アメリカにおいても、何らかのルールを作ることで、強迫観念を無くしていく必要がある」と指摘した。

日米の違いの背景については特定されていないものの、「文化の違いが要因」と分析しているとのこと。「アメリカでは、子どもが親に対して『スマホを置いて僕の方を向いて』とストレートに言うなど、オープンな対話が進んでいる」とジェームス氏。そもそもの親子関係やリテラシーの違いも、結果に影響しているようだ。

日本における調査では、52%の子どもが「モバイル機器を利用することで新しいスキルを習得でき、21世紀に発展する仕事に備えることができる」と答えているのに対し、そのように考える親は25%にとどまった。

親より子どもの方がポジティブな回答が多かった

適切に利用することができれば、多様な可能性を秘めているモバイル機器。まずは今の使い方が自分たちの日常生活にどのような影響を与えているか、各家庭で考えてみてもいいかもしれない。