調子に乗ったせいでインフルに?

――今年は1月頃から、芸人さんの間でインフルエンザが大流行していました。武道館ライブに際して、何かそういう想定はあったんですか?

タレントは客前に出るので予防のしようがないし、仕方ないですよね。『ゴッドタン』スタッフでも、僕がずっと編集所で一緒にいたADがインフルエンザにかかったので、万が一僕もなった場合はこのブロックはこの人がやる、というようなことは決めていました。チーフADがかかった場合はどうするかとか、いくつかパターンを考えて。

――制作サイドは、危機管理体制がつくられていたんですね。でもまさか出演者がかかるとは……。

澤部は親も武道館に来てたから、かわいそうでしたよ。親まで呼んでたの、あいつだけだったんですよ。普通呼ばないでしょう、武道館出るって言ったって10分間くらいなんだから。でも澤部は本当に音楽好きだから、武道館なんて夢のようだと思ってはしゃいで呼んでたんですよね。そうやって調子に乗ったせいでインフルエンザになったんじゃないか?って話になりました(笑)。しかも、夜中にインフルエンザとわかったから、たぶん親に連絡し忘れてたんでしょうね。お父さんとお母さんが、息子が出てこないから演出だと思ったら本当に出てこないで終わった、ってびっくりしたらしいですよ。

――その後『ゴッドタン』本編で、ライブをドタキャンした澤部さんと、それに怒ってる岩井さんを仲直りさせる「ハライチの仲直りフレンドパーク」(5月20日放送)がありました。

お笑いのいいところは、起きたことが全部笑いにできるところなんですよね。澤部が出られなくなったときも、「これは1本企画つくる材料が増えたな」と思いました。

――「仲直りフレンドパーク」は、番組スタッフの男性が澤部さんに水を吹きかけるくだりがすごく面白かったです。

あれは現場で思いついたんですよ。一番イヤなことってなんだろう? と思った時に、おっさんに水吹きかけられたら嫌だな、と。あのおじさんは田村というディレクターで、僕も含めた『ゴッドタン』スタッフの中で一番の年長者なんですよ。ベテランだから、普段は副調整室でスイッチング(画面の切り換え)をやってるんです。でもおっさんが水を吹いたほうが面白いからってことで、そのためだけに若手と持ち場を交代して。スイッチングが不安定になるリスクを抱えてまで、おっさんをスタジオに入れるという(笑)。

そもそも「マジ歌」の作り方とは?

――佐久間さんは以前にインタビューで、「マジ歌はそのときの音楽シーンのあるあるネタ」という話をされていましたよね。それでいうとハライチの「俺たちのミス」は、何の“あるある”なんですか?

あれは2.5次元ミュージカルを意識して作ってます。2.5次元ミュージカルって、いいところもあるし、気恥ずかしい部分もあるじゃないですか。それを芸人がやらされたら、いろいろ相まって面白いかな、というのが始まりですね。

――そもそも「マジ歌」の曲作りって、どういう流れで行われてるんしょうか。

人によるんですよ。最初から最後まで全部自分でやる劇団ひとり、僕と話すけど基本的には自分でアイディアが出るまで待つロバート秋山、延々鼻歌を歌い続けるのを僕が聞く地獄のような時間がある森三中・黒沢とか。初登場の人の場合はまず僕が「ハライチでこういうのどう?」と持っていって、「いいですね」となったら曲のベースと構成を決めて、2回くらい話し合った上で作曲家に仮組みの曲を上げてもらいます。ハライチならそれを岩井に投げて歌詞を書いてもらって、何度かやり取りする、という流れですね。

――あらためて、武道館という場所での開催はいかがでしたか?

正直、最初からまったく心配してなかったです。武道館は、あのサイズのハコにしてはステージと客席の距離が近いので、ある程度大丈夫だろうと思ってました。15年の国際フォーラムのときに、広い会場の場合は肉眼で見えないボケをやっても仕方ないとわかった。お笑い的にはもうちょっと細かくやりたいところでも、会場の後ろの席の人が理解できないから割り切って作る、ということをそこで学びました。先日松尾スズキさんと対談したんですが、そのときに松尾さんもハコの作り次第で演劇の内容を考えると言っていたので、やっぱりそういうものなんだなと思いました。

――本当に、テレビじゃなくてライブの作り方で考えるんですね。

「マジ歌ライブ」では毎回、演劇の構成とバラエティの台本とセットリストの中間みたいなものを僕が作るんですよ。それをたたき台にして、みんなで話し合う。その上で各所で「予算で無理」とか「こんな新技術があるから使ってみよう」とかやりながら、つくっています。結果、テレビ番組を作る上ではまったく必要ない知識が溜まってきました。

――武道館ライブを手掛けたことのあるテレビプロデューサーって、なかなかいないのでは?

ほんとに、中学の頃に「武道館っていいなぁ、でも俺歌下手だから無理だな」とか思ってた夢を、こんな形で叶えるとは(笑)。なんでもやってみるもんですね。何でたどり着くかはわからないですから。

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(C)2017テレビ東京

■著者プロフィール
斎藤岬
1986年生まれ。編集者、ライター。月刊誌「サイゾー」編集部を経て、フリーランスに。編集を担当した書籍に「別冊サイゾー 『想像以上のマネーとパワーと愛と夢で幸福になる、拳突き上げて声高らかに叫べHiGH&LOWへの愛と情熱、そしてHIROさんの本気(マジ)を本気で考察する本』」『DEATH MATCH EXTREME BOOK 戦々狂兇』(共にサイゾー刊)など。