モスバーガーが日本人のソウルフードに?

黒船として日本進出を果たし、存在感を濃くしつつあるシェイクシャックやカールスジュニアといったバーガーチェーン。そして、勢いを取り戻しつつある日本マクドナルド。ハンバーガー業界では、生き残りをかけた戦いが日々、繰り広げられている。

1970年代に産声をあげたモスは、今や世代を超えるファンを獲得するまで日本に浸透している。いわば、新たなソウルフードに最も近い距離にいるハンバーガーショップなのではないだろうか。

モスバーガーは日本の新たなソウルフードに最も近い存在かもしれない

ハンバーガーショップだけが相手ではない

消費者はハンバーガー業態の中だけで消費先を選択しているのではない。今日は500円、明日はちょっとぜいたくに1000円という風に、食事の場所については常に模索している。コンビニをはじめ選択肢が山ほどあるなかで、消費者は何を基準に訪れる店を選択しているのだろうか。行き先が未定であればスマホでクーポンがゲットできる店舗に足を運ぶケースもあるだろうし、コンビニの“中食”あるいは丼物の業態に足が向くかもしれない。

店舗が提供する価格帯と価値が明確であること。おそらく、これが消費者から選ばれる秘訣だ。クーポンがあるから行くのではなく、食べたいものがそこにあるから行くというのが、消費者の本音だろう。安くてもおいしくなければ、足を運ぶことはなくなる。安いから売れるという時代が過ぎ去った今、消費者の求める価値を備えていることこそが、消費者の選択肢に残る資格となる。

モスバーガーは、どんな時代においても自身の価値を磨き続け、顧客だけではなく生産者や関係者といったパートナーに正面から向き合っている。商いの基本を常に忘れない企業の1つという印象を受けた。ブレない姿勢だけでなく、期待を裏切らない商品を提供し続けていることが、消費者の支持を得ている原因といえよう。

全方位の顧客に支持されることは、ビジネスとしては重要な要素であるが、逆に訴求する対象を狭めることにより、自身の強みを維持・発揮できることも、ビジネスを進める上での戦略の1つだ。モスフードサービスは、自らの強みと弱みを理解しているから、競合ひしめく業界で独特な立ち位置を維持できているのだと感じた。