京王電鉄は19日、新型車両5000系の撮影会(報道公開)を実施した。同社初というクロスシート・ロングシートの両方に転換できる座席を搭載した10両固定編成の車両で、9月29日に京王線内で通常列車として先行デビュー。2018年春から有料の座席指定列車として、平日・土休日夜間に新宿~京王八王子・橋本間で運行される予定となっている。
新型車両5000系は「名車と謳われた初代5000系」(1963年デビュー)の「DNAを引き継ぎ、更なる進化を遂げた車両」とされている。撮影会で公開された編成は、1号車から「5781」「5281」「5231」「5581」「5181」「5131」「5531」「5081」「5031」「5731」の10両編成。車体前面の扉を開けての撮影も行われた。現時点で運行予定は未定だが、都営新宿線への乗入れにも対応しているとのことだった。
車両の製造は総合車両製作所が手がけ、ステンレス板をレーザー溶接でつなぎ合わせた「sustina(サスティナ)」構体を採用した。これにより、従来のステンレス車両で見られた「つぎはぎ感」を解消し、なめらかに美しく仕上げるとともに車体の強度も向上している。先頭部のみFRP製で、従来の車両と比べて全長を500mm延長し、傾斜化するとともに正面のカラーリングに黒を用い、スマートな列車を表現している。
前照灯はLED化され、行先表示器もフルカラーLEDに。スカート(排障装置)は丸みを帯びた立体的な形状で、コーポレートカラー「京王レッド」の鮮やかなカラーリングを施した。車体側面上部に「京王レッド」、窓下の帯に「京王ブルー」を採用している。
車内はドア間の座席をクロスシート・ロングシート転換座席(座席幅460mm)、連結部付近の座席を3人掛け固定座席(座席幅505mm)としており、高尾山の木々の深いブラウンと「繊維の街・八王子」の絹糸がモチーフのデザインに。各座席にヘッドレストと肘掛け、電源コンセントも設置された。通常列車での運行時はロングシート、座席指定列車での運行時はクロスシートに転換され、電源コンセントは座席指定列車時のみ使用できる。
車いす・ベビーカースペースは全車両に設けられ、気軽に腰かけられるように腰当も設置された。床面に落ち着きのある木目調、袖仕切り板や妻引戸には大型ガラスを採用し、開放的かつ高級感のある車内空間を演出している。車両ビジョンはドア上だけでなく天井部にも設置され、視認性が向上。調光機能付きLED間接照明の採用により、通常列車での運行時は昼白色、座席指定列車での運行時は落ち着いた暖色系とするなど、シーンに合わせた演出も可能となった。快適性向上を目的とした「nanoe(ナノイー)」搭載の空気清浄機、訪日外国人向けの無料公衆無線LANも全車両に設置する。
その他、犯罪への防止対策として全車両に防犯カメラ(1両につき4台)を設置し、ドア挟みによる怪我や事故を防止するための電気式側引戸システムも導入。京王電鉄では初採用という車上蓄電池システム(車上蓄電池は5号車の床下に設置)や新型VVVFインバータ制御装置の導入により、さらなる省エネ推進も図った。
新型車両5000系は10両固定編成を5編成、計50両を導入する計画となっており、9月29日からロングシートで通常列車として先行デビューした後、2018年春の座席指定列車の運行開始までに5編成そろう予定だという。有料の座席指定列車は夜間の帰宅時間帯における着席ニーズに対応し、新宿発京王八王子行・新宿発橋本行を設定。今年4~5月に愛称投票が実施されており、来年1月に愛称が決定、発表される予定となっている。