クレジットカードやデビットカードのような仕組みの場合、支払いの相手先が小売店舗やオンラインストアなどが対象となるが、P2P送金サービスにおける支払いでは個人も対象となる。そのため、物品やサービスの購入だけでなく、公共料金や家賃の支払いまで、さまざまな用途で活用が進んでいる。

だが今日のP2P送金は、携帯電話やスマートフォンの普及で多くの人が1人1台以上のデバイスを所持するようになったことで、より身近な場面での活用が可能になった。例えば、対人でのお金の貸し借りや、親が子供に小遣いを与えたり、あるいはレストランや共同購入の場面で割り勘を行ったりと、これまで現金で行われていた金銭の授受がスマートフォンの操作だけでやりとりできるようになったのだ。

米国でこのトレンドを牽引しているのは「Venmo (ベンモー)」だといわれる。P2P送金市場全体を俯瞰(ふかん)した信頼できる最新データはないものの、親会社であるPayPalが出しているVenmoの四半期あたりの取り扱い金額の推移を見ると、市場の拡大の様子が大まかにわかるようになっている。

米国で人気のP2P送金アプリ「Venmo」。SNS機能を金銭のやりとりに拡大した点が特徴

Business Insiderが集計したデータを参照すると、2017年第1四半期のVenmoの取扱高は68億ドルで、前年同期の32億ドルの2倍以上だ。ほぼ倍々ペースで成長していると考えていいだろう。Venmoは手数料無料で銀行口座(デビットカード)を登録さえすれば誰でも利用できるモバイルアプリであり、各種支払いや相手への送金、割り勘などが簡単に行える。

最大の特徴は「ソーシャルストリーム」と呼ばれるSNS機能を提供している点で、フレンド登録した利用者の金銭のやりとり状況がタイムラインで確認できる。金額等の詳細は出ないものの、割り勘等の状況からパーティ開催を発見したり、あるいは頻繁な交友関係が把握できたりと、コミュニケーションツールとして機能している。そのため、主な利用層が若者中心となっている。