筆者の周りの大阪出身者は、みんなこぞって「551の豚まんは大阪の誇りや」という。ある友だちなどは、「ソウルフード過ぎて、たまにむっしょーに食べたなる」と表現していたが、九州育ち東京在住の筆者は、なかなかそのおいしさを堪能する機会がない。なんせ、販売エリアは関西圏のみ。しかし、エリア限定を貫き通しているのには深い理由があるようだ。

551の豚まん。通信販売では2個税込340円~販売

もともとはカレーライスを販売

551の正式名称は「551蓬莱」(以下、551)。昭和20(1945)年に創業者の羅 邦強(ら ほうきょう)氏を始めとする4人の台湾出身者が、大阪なんばで創業した「蓬莱食堂」をルーツとする店で、当時はカレーライスを提供していたという。ちょうど終戦直後で食べ物に苦労している人が多かったため、売り上げは上々だったが、月日とともに人気に陰りが出始め、新たな看板商品となるものはないかと思案するようになる。

そうして誕生したのが、神戸の南京町で売られていた「豚饅頭」に着想を得た豚まんである。無論、豚饅頭をそのままコピーするのではなく、日本人の口に合うよう味付けに工夫を凝らした上で、具は潔く豚肉とタマネギのみを使用。1個でおなかが満たされるようサイズにもこだわった結果、昭和21(1946)年に食堂メニューとして販売するや、たちまち人気に火が付いた。

一つひとつ丁寧に

手包みが生み出すほっとする味

付属のカラシも自社構造で製造

さらに翌年の昭和22(1947)年には店頭での実演販売が始まり、できたてアツアツをお土産として持ち帰る人も急増。当時は今のように紙製のパッケージではなく、木折に入れて販売していたという。ちなみに、テイクアウト品にカラシがついているのはこの頃からだが、もともとは店内で食べた客が卓上に常備していた練りカラシを豚まんにつけていたことから、持ち帰り用のカラシ小袋を添付することになったのだという。

昭和30年代の店舗の様子

当時は木折に入れて販売していた

昭和の時代の本店での一コマ

「551のカラシは現在も自社工場で毎日製造しています。保存料などは一切不使用なので、カラシの賞味期限も豚まんとほぼ同じで冷蔵庫で3~4日です」と明かす同社広報の杉井さんによると、冷蔵庫のポケットに551のカラシ小袋が入っているのは「大阪人(関西人)あるある」なのだとか。

では、豚まん自体にはどんなおいしさの秘密があるかというと、第一に、誕生以来ずっと変わらず一つひとつ手包みしていることだ。原料となる豚肉やタマネギは、1日平均量豚肉=約3t、玉ねぎ=約4tを毎日業者から仕入れ、生地や具は店舗ごとに売れ行きや来客数を見ながら次の便の数量を決めながら、日に平均3~4回店舗に納品しているという。

「551を育ててくれたお客さまを大事にしたい」

そうした努力の積み重ねによって、食べる人に作りたて・できたてのおいしさを届け続けている551。味や鮮度にこだわるからこそ、「常温で本日中」「冷蔵庫保存で製造日から3日」と消費期限が短いだけでなく、品質が落ちる冷凍豚まんも販売しないため、販売エリアが限定されているのだ。

「豚まんの生地にイースト菌を使っているので、工場から150分圏内でないと最適の発酵状態にできませんし、じゃあ関東や東海にも工場を作ればいいかというと、そこはやはり、70年以上にわたって551を育ててくださった大阪および関西のお客さまを大事にしたいのです」と杉井さん。

できたてアツアツが一番おいしい!

551の豚まんがいかに多くの関西人に愛されているかに関しては、タクシー乗車時や散髪時に何気ない会話から杉井さんの勤め先を知った相手が、「うちの子がおたくの豚まんが好きでねぇ」「難波に出たらいつも本店で買うんですよ」と、「わたしの551体験」を笑顔で熱く語ってくれることからも感じ取ることができるんだとか。

読み方は「ゴーゴーイチ」

「551の豚まんはコテコテの庶民的な食べものですが、関西のみなさんにとって『あったらうれしい』『笑顔になれる』存在であり続けられたらいいなぁと思っています」。そう語る杉井さんから最後に読者にメッセージ。「関東方面では551を"ココイチ"、"ゴゴイチ"と読まれる方が多いと聞いたことがあるんですが、正式には"ゴーゴーイチ"ですので、今後はそう呼んでいただけるとありがたいです」。

"ココイチ"でも"ゴゴイチ"でもなく、"ゴーゴーイチ"

ちなみに、関西圏以外の人で今すぐにでも551の豚まんを食べたい人は、同社通信販売を利用するのが◎! オンラインショップの他、FAXや電話でも注文できるので、ぜひサイトをチェックしてみては? もちろん、出張や旅行で大阪方面を訪れることがあるなら、現地でアツアツをいただくことを強くオススメしたい。