共通化で得られるメリット

DMPの中島社長は、ヒアとは「地図の作り方、加工の仕方」について、共通化も視野に入れた協議の開始で合意したという。この部分を共通化すると、どのようなメリットが享受できるのか。中島社長が挙げた例は以下の通りだ。

1.例えば、米国の地図づくりはヒアが先行しているが、DMPとヒアが地図づくりの基本部分を共通化できれば、同国の地図づくりをDMPが改めて行うような二度手間を避けて、ヒアからデータの提供を受けるようなケースも考えられる

2.実際に自動運転車が走る世の中が到来した時、並んで走る2台のクルマが、違う作り方の地図情報をもとに自動運転を行っていると、一方のクルマでは車両位置の検知に1.5mの誤差が生じており、もう一方では誤差がほとんどない、といったケースが発生するかもしれない。こうした、「信用できないクルマが隣を走る」ような可能性を、地図づくりの共通化によって排除できる

ヒアとの調印文書を紹介する中島社長

協調と競争、うまい線引きは可能か

自動運転についてよく耳にするのが、どこまでが「協調領域」で、どこからが「競争領域」かという話だ。DMPとヒアの連携は、ダイナミックマップを作る複数の企業グループが、その「作り方」では協調し、「売り方」で競争するという将来像を示唆するが、その通りに進むかどうかについては疑問も残る。おそらく海外勢はDMPよりも大規模な地図データをすでに保有しているだろうし、地図の作り方について既存の方法を改めたり、修正したりするのも大変だろうからだ。地図づくりでは世界的な協調が広がるのか、それとも覇権を巡る戦いは避けられないのか。まずはDMPとヒアの協議の行方に注目したい。