クルマと飛行機にフォーカス
自動車産業は世界的には成長産業であり、2020年には生産台数が1億台の大台に乗ると吉永氏は解説する。業界の常識では新興国向けのコンパクトカーが伸びるとも添えた。対するスバルのシェアは世界で1%。そこで個性をいかそう、強みをいかそうと思ったという。つまり、業界の常識はスバルの常識ではないと判断したのだ。
続いて吉永氏は、スバルの戦略として、選択と集中、差別化、付加価値を挙げた。選択と集中の中では、事業の集中、車の中での集中、技術の集中を進めたことを紹介した。
「社長になった日の夕方に、塵芥収集車(清掃車)事業と風力発電事業を止めると決断しました。今年の9月には汎用エンジンなどを担当する産業機器事業からも撤退し、自動車と飛行機に集中することにしました。従業員はすべて自動車部門で吸収しました。飛行機を残したのは、先端産業であり今後の日本のためにも続けるべきと考えたからです」
クルマでは軽自動車の開発生産から撤退し、ダイハツ工業からの供給に切り替えたことを挙げた。スバルのクルマ作りは軽自動車から始まったので反対する声もあったが、価格が勝負を決する戦いは得意ではないと冷静に判断した。その資源をいかして「XV」や「BRZ」、「レヴォーグ」を新たに生み出し、「インプレッサ」のモデルチェンジサイクルを短くもした。
「技術の集中では、お客様がスバルを買う理由は何か、我々が何を提供できるかを考えました。環境でトップになるのはスバルの企業規模では難しい。飛行機会社でもあるので、安全をアピールすることにしました。20年間研究を続けてきたアイサイトで勝負しようと決め、『ぶつからないクルマ?』という言葉とともにアピールしました」
アイサイトに刺激を受けるように、他の自動車会社も安全技術を磨き上げてきている。機能だけを取り出せばアイサイトより良いものもある。しかし価格は高い。スバルは10万円で完全に止まれるものを目指すと吉永氏は語った。また無人運転は現状では考えず、運転支援システムを極めるほうが先であるとも述べていた。